もともと日本は「勤勉」しか勝ち目がない。
よくよく日本という国を見つめてみると、国土は狭いし、資源は少ないし、世界の中心に位置しているわけでもない。この日本が世界に伍して競争して行くためには「勤勉」しかないと思う。こんな事を言うと時代に逆行していると非難されるかも知れないが、私の考えは30年前から変わらない。「勤勉」と言うと長時間の肉体労働ばかりを思い浮かべるかも知れないが、そんなことはない。どちらかと言うと「勤勉」であって欲しいのは頭脳労働である。この頭脳労働による勤勉が日本を救う道であると思う。
日本のお家芸は昔から加工貿易である。
原材料を輸入し、それに加工を加えて輸出する貿易形態である。日本が一躍経済大国にのし上がったのは、この加工貿易を効率的にやったおかげである。効率的とは、良質の原材料を安く輸入し、製造費用を安く抑え、付加価値の高い製品を製造し、信頼性を向上させ、安い値段で輸出することであろうか。旧来の設備と組織・体制を抱えつつ製造しなければならない先進国に対して、日本はゼロからの出発であり、最新の設備、最適の組織・体制で加工貿易に専念できたのである。
ところが、日本も追われる側になった。
日本をお手本にして加工貿易をお家芸とする国があちこちに出現し日本の持っていた市場が浸食されている。少なくとも人件費については日本はこれらの国と太刀打ちできなくなっている。こんな中で日本の勝ち目を考えてみると、ひたすら「頭脳労働」しかないと思われる。まずはいかに付加価値の高い製品を作り出すかであり、いかに効率的に製造するかであり、いかに信頼性を高めるか、いかに先端技術を維持するかである。いずれも頭脳労働以外の何者でもない。勤勉に頭脳労働するしか日本の生き残る道はないと思う。
今の日本が「頭脳労働」の環境にあるのであろうか?
私にはそんな印象は感じられない。そんな施策を推進する企業も国も見当たらない。出てくる言葉は「効率化・合理化」であり「コスト削減」である。この言葉はどちらかと言うと「頭脳労働」を排除している。「頭脳労働」そのものは物を製造しないし金儲けに直結しない。この部分を排除することは日本の将来を自ら潰しているのと同じではないかと思う。日本の勝ち目を自ら放棄している。そして現在の日本を支えているのは昔から技術をコツコツと積み上げてきた「職人」である。この「職人」は会社や国が育てた訳でもない。日本人の気質に負うところのいわゆる昔気質の伝統の「職人」である。
日本人は「頭脳労働」の気質を昔から持っている。
ひとつの課題を与えれば、それを見事にこなし、さらにそれを発展させ、昇華させて行く力を持っている。単純労働の繰り返しでは気が済まない職人気質を各人が持っていると思う。これが日本の勝ち目ではないかと思う。これまでもこの勝ち目でもって成功してきたのである。これから必要なのはこの「頭脳労働」を自然発生的な状態にするのでなく、後押しし推進して行く必要があるのではないかと思う。今の状態では「職人」の地位はあまりにも低いと思う。しっかりと体系化され、継承され、制度化される必要があるのではないかと思う。
日本人は働き過ぎだ、仕事中毒(ワーカホリック)だとか言われている。
しかし、日本人の勝ち目は「加工」しかない。この「加工」とは労働力以外の何者でもない。端的に言えば「労働」を売っているのである。そして近来では単純労働の「加工」だけでは他国に太刀打ちできなくなっている。これを差別化できるのは「頭脳労働」以外にない。日本人の勤勉な気質はそのままに、これを頭脳労働に指向してゆかなければならないと思う。そしてこの頭脳労働指向の延長線上に高度情報化社会が見えてくるし、その手段(道具)がコンピュータネットワークであると思う。外国の例を引いて日本人の勤勉を放棄させることは自ら勝ち目を放棄していることにもなる。
勤勉であることは何も悪いことではない。
諸外国でもリーダーの立場にあるいわゆるエリートは勤勉そのものである。勤勉でなければリーダーもエリートも勤まらない。日本人はどこを見て「勤勉=悪」という風潮を生み出したのだろう。勤勉を強制することはできないが、勤勉であることそのものは目標とし、推奨され、賞賛されるべき行いであると思う。そして勤勉の度合いは変わってもおしなべて日本人が勤勉であることは未来永劫不変の気質であると思うし、そうでなければならないと思う。
日本人の勤勉が諸外国から非難されたのは、
諸外国との市場競争に慣れていなかったためである。島国日本の本領を発揮し、「盲目ヘビ怖じず」の快進撃を敢行した反動でもある。この部分を改善すべきであって、「勤勉」を排除するのが最善策ではない。諸外国と共存しつつ、相互の立場を尊重しつつ自由平等の精神で市場競争を続けることは何も問題ない。そしてその競争における日本の勝ち目は「勤勉」であると思う。この頃、日本人からこの勤勉さが消えつつあるような兆候を目にするが、私は日本人の伝統的な気質を信じるし、早い時期に「勤勉=悪」という風潮は払拭し根絶して行かねばならないと思っている。
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