切られお富!

歌舞伎から時事ネタまで、世知辛い世の中に毒を撒き散らす!

愛ある2chの、吉村昭スレッド!

2006-09-03 15:52:41 | 超読書日記
作家吉村昭の死が実は尊厳死だったというニュースを聞いて思ったのは、「そういえばこの人の小説って読んだことなかったな」ということ。エッセイは読んだことがあったんだけど、小説は読んでなくて、今村昌平のカンヌ受賞映画「うなぎ」の原作者はこの人だったっけというレベルのわたしでした。そこで、話のタネに読んでみようと思って調べていたら、実に参考になる2chのスレッドに行き着いた!!

吉村昭さん「尊厳死」だった…妻が「お別れの会」で明かす (夕刊フジ) - goo ニュース

小説の匠(たくみ)吉村昭スレッド(2ch)

日頃、2chには否定的なわたしだけど、このスレって妙に愛があって感動しました。2chにはその業界の人でもなんでもないような嘘つきがいい加減なことを書いたり、どう考えても勉強不足あるいは社会性不足な連中のたわごとが中心なわけだけど、稀に真っ当なスレもあるもんなんですね。

わたしはここを参考にして、「帽子」という短編を読んでみたのだけど、これが実に巧い。帽子を買いに行く不思議な男の冒頭から、男と妻の関係、近づく妻の死期・・・。歴史小説家というくくりでしかみていなかったわたしは、正直驚きました。

また、尊厳死を選んだ吉村昭の感性と、この小説に表現されている死生観は、たまたまだけど重なるものもあって、いいタイミングで読んじゃったかなという感じ。

今度ばかりは、2chありがとうってところかな。

たぶん男性読者ばかりの作家なんでしょうが、リリカルな短編からも再読されるべき書き手なんでしょうね。

ところで、ベストセラー新書『もてない男』で知られる小谷野敦が、『評論家入門』という本の中で、読んでいて涙が出てきたと語っている『私の文学漂流』という作品があるんだけど、どうも絶版みたいですね。新潮文庫は追悼ということで、再発してもらいたいものです!

帽子

中央公論新社

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私の文学漂流

新潮社

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評論家入門―清貧でもいいから物書きになりたい人に

平凡社

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海馬

新潮社

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うなぎ

ジーダス

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PS:わたしは、この『うなぎ』という映画は日本で過小評価されていると考えていて、今村昌平がカメラマン姫田真佐久と作り上げてきた、それまでのリアリズム的手法から、寓話性、ストーリー性に回帰した一本だと思っている。こういう路線は『果てしなき欲望』以来のことじゃないかな?因みに、『果てしなき欲望』では渡辺美佐子が素晴らしいです!

(おまけ)
今村昌平監督死去
私のお薦め日活映画。

今村昌平 DVD Collection 果てしなき欲望

ジェネオン エンタテインメント

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