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クリスマスに観るべき邦画『東京ゴッドファーザーズ』!

2015-12-25 20:22:36 | アメリカの夜(映画日記)
何度も同じことを言うようでなんですが、クリスマスというと毎年『素晴らしき哉、人生』を観ることにしていて、「なんで、邦画にはクリスマスに観たい作品がないんだろう?」なんて、偉そうなことを言ったり、苦肉の策で岡本喜八監督の『ブルークリスマス』をひとに薦めたりしていんですが、いやいや、わたしは恐るべき傑作を見逃していました。しかも、この映画を知ったきっかけがアメリカの映画批評サイトRotten Tomatoだってあたりも、自分が恥ずかしい。というわけで、今後は毎年この映画を観ようかな~。今は亡きアニメ監督今敏の傑作です。

知っている人は知っているアメリカの映画批評サイト、Rotten Tomatoが選んだ「2015クリスマス映画ベスト25」の第12位にこの作品が選ばれていて、話のタネにと思って観てみたら、大傑作でした。ちなみに、Rotten Tomatoのベスト10は以下の通り。

2015年版クリスマス映画ベスト25(10位まで抜粋)
1.『素晴らしき哉、人生!』(1946)
2.『三十四丁目の奇蹟』(1947)
3.『桃色(ピンク)の店』(1940)
4.『スイング・ホテル』(1942)
5.『第十七捕虜収容所』(1953)
6.『アパートの鍵貸します』(1960)
7.『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』(1993)
8.『タンジェリン(原題) / Tangerine』(2015)
9.『ダイ・ハード』(1988)
10.『アーサー・クリスマスの大冒険』(2011)

で、作品の方ですが、クリスマスの東京を舞台に、三人のホームレスがひとりの捨て子に出会う・・・という感じですかね。宣伝文句の「雪降る夜。一人の捨て子をめぐり、東京に<奇跡>が起こる。」というのが、イメージとしてはドンピシャかな。ジョン・フォードの西部劇『三人の名付け親』みたいだなと思ったら、本当に影響を受けてたんだそうですけど・・・。

で、まず、声優の選択が素晴らしかったと思うんですが、江守徹、梅垣義明、岡本綾の三人が見事にはまっているんですよね。ホームレスらしいホームレスのギンちゃんを江守徹、オカマのホームレス・ハナちゃんを梅垣義明、家出少女ミユキを岡本綾。前者ふたりはベテランだし当然だとはいえ、岡本綾の少し低い調子の高校生家出少女がよかったですね~。このひと、もっと声優やればよいのにと思いますよ。

そして、目を見張るのが、細かい書き込みの東京の街。実写映画におけるパンファーカスの効果をはるかに凌駕していると思いました。たまたま、『市民ケーン』に関する本を読んでいたところだったのですが、肉眼のクリアネスを超えた背景の細かさ、それ自体が多くを語っているというか、現代の東京の街で十分魅力的な映画の背景ができるじゃないかって、強く感じましたね~。パリみたいにどこをどう撮っても映画的に写る街じゃない、東京の見慣れた風景が細密に描かれることで映画的になる!これは方法意識の問題として凄いなと。これって、はっぴいえんどの「風街ろまん」のアルバムジャケットで描かれた東京の街の現代版みたいなことかな~。

また、、キューブリック監督『時計仕掛けのオレンジ』を参考にしたという、鈴木慶一&ムーンライダーズ演奏の第九もなかなか良い感じです。

そして、最後まで息をつかせぬ展開に、思いがけないラスト・・・。

ところで、同じ今監督の『千年女優』や『パプリカ』の好きなわたしがなぜこの作品をスルーしてきたんだろうと、あらためて考えてしまったんですが、「ホームレスの話で、声優が江守徹と梅垣義明で、タイトルが『東京ゴッドファーザーズ』です」って宣伝されても、確かにスルーしがちなイメージではあるな~、と。これが実写だったら、絶対観ない映画の企画ですしね~。

でも、特典映像で梅垣義明が語っていたことがすべてだと思うんだけど、「アニメが好きじゃなかった自分でも、これは凄いと思った」って、まさにその通りなんです。企画書にしたら地味な話が、観た者をこれほどまでに感動させるという<奇跡>。

ま、観てない人は人生損してます。日本が生んだ最高のクリスマス映画でしょう。しかし、この監督が46歳で早世って、あまりに惜しい。幸福感に満ちた作品です。強力推薦!

(過去の記事)
・何度でも言いましょう!クリスマスは『素晴らしき哉、人生』を観よ!
・『ブルークリスマス』 岡本喜八 監督
・『千年女優』 今敏 監督

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