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切られお富!

歌舞伎から時事ネタまで、世知辛い世の中に毒を撒き散らす!

1月 新橋演舞場 昼の部

2009-01-31 00:00:00 | かぶき讃(劇評)
先日の土曜日に観に行って参りました。まずは感想っ。

①二人三番叟

澤潟屋の演目ですから、もちろん一門で演じられたわけですが、文楽っぽさ(三番叟自体は能の「翁」からきているけど、この演目は文楽の三番叟からきている。)を濃厚に感じたのは、右近&猿弥が舞っているときくらいですかね~。

大阪文楽劇場で、開演前にやっている人形を思い出しましたけど。

②口上(にらみ)

一年風邪を引かないという市川團十郎家の「にらみ」。海老蔵の「にらみ」も何度か見ているような気がするけど、やっぱり、チカラある感じはしますね~。

まあ、わたし、風邪気味で見ていたんだすけれど・・・。

ところで、にらむ前に腰に刀を差すんだなってことに、今回初めて気づきました。(上手よりの席だったので、よくわかった。)

③義経千本櫻 すし屋

千本櫻といえば、去年、海老蔵の「渡海屋・大物浦」と「四の切」を観ているので、これで千本櫻の重要な三役を見たことになりますね。

以前、国立劇場で團十郎が三役を演じた通し上演を見たことがありましたが、海老蔵もいつか通しでやりたいんでしょうねぇ~。体力的には大変でしょうけど!

さて、舞台の方ですが、まずは海老蔵の「いがみの権太」役。

純粋に好みでいうと、飄逸な感じもある團十郎、小気味いい悪を演じる仁左衛門がわたしの好みで、海老蔵の権太は若い無頼漢の父親という雰囲気ですかね~。

仁左衛門的な小気味よさは感じなかったものの、悪そうな雰囲気は漂っていた。

仁左衛門って、わたしが唱える「仁左衛門=性善説」じゃないけど、基本的にこの人が演じると、たいてい「いいひと」っぽく見えるんですよね~。そこを、「河内山」のときもそうだったけど、テンポのよさで鋭い悪に見せるというような技が仁左衛門にはあるんじゃないですかね~。

そういう意味では、海老蔵の権太は「町の与太者のお兄さん」みたいな、最初からの悪の匂いが一応はある。でも、極悪って感じはしないんですけどね~。(「お兄さん」だから?)

で、肝心の「すし屋」に関しては、大変な大熱演。汗とつばが飛び散る精一杯の力演なんだという迫力は最後の死の場面で感じられました。

でも、去年まったくニンになかったのに吉右衛門が演じた権太の方が「味」はあったなあ~。考え抜かれた台詞の抑揚に義太夫狂言のエキスが詰まっていたような気が・・・。

というわけで、「青春してる、いがみの権太」というのが、わたしの海老蔵=権太の感想かな。30歳の役者の精一杯の熱演ということで、将来の円熟に期待します。

(なお、「すし屋」という芝居の「いがみの権太」という役の性格付けって、最後の死の場面をのぞけば、「木の実の段」の引っ込みや「すし屋の段」のすし桶を持っ見得など、花道で決まると思うんですよね~。そういう意味では、花道の海老蔵はきまっていました。おじさん役者の演じるこの役と違い、体も鍛えてるなあってわかるから。)

さて、脇役陣についていうと、笑三郎の権太女房小せんは上方の庶民的なお上さんの雰囲気が足りなかった印象。この役については片岡秀太郎がこってりとした傑作の芝居を見せてくれるのだけど、さすがにわたしの理想が高すぎるのかな?

ただ、庶民的で世辞長けた雰囲気がこの役に出てこないと、「木の実」の段の花道での引っ込み。権太が女房の着物をめくる際の色気が活きてこないと思うんですよね~。

「小金吾」役=段治郎は、権太に騙されたことをちょっと嘆きすぎ。他の場面はこのひとのニンに合っていて、カッコよかったけどねぇ~。

で、「すし屋」の段でいうと、門之助の弥助は維盛に戻ったときが気品と貫禄があってよく、春猿のお里は可愛さやよりもこしゃまっくれた感じが強い印象。(そういう意味では、春猿って南北物が似合いそうだと思うんですが、どうでしょう?)

獅童の梶原は、ベテラン役者がやる役だけにちょっと気の毒で、弥左衛門を左團次がやっているだけに、ちょっと貫禄不足は否めなかったかな~。(なにしろ、いってることとやってることが違うということが最後にばれる役ですから、台詞に含みがないと・・・。)

以上、若い力演の舞台ではあったけど、深い感銘まではいかなかったかな。まあ、仁左衛門の上方風「すし屋」なんかが感動的すぎるからというのもあるんですけどね・・・。

④お祭り

大作「すし屋」のあとの、軽いレビュー的な舞台で、気軽に楽しめました。今回の舞台のオールスター総出演という感じで、獅童の鳶姿なんかは鋭い感じのいい顔してましたね。花道から海老蔵が登場したり、出演者勢ぞろいで手拭いを投げたりと正月気分でよかったなあ。

来年は手拭いをゲットできそうな席で観劇したいところだけど・・・。
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