切られお富!

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WOWOW放送 六本木歌舞伎『座頭市』を観た。

2017-08-24 22:22:12 | かぶき讃(劇評)
やっと観ました。前回の六本木歌舞伎の印象があまりに悪かったんで、生の舞台は観に行かなかったんですが、それでも海老蔵&寺島しのぶの夢の共演が気になってはいたんですよね。というわけで、これから観る人のために、ネタバレしない程度に簡単な感想。

録画したレコーダーがまさかの故障で修理に出したっていうのが遅くなった理由なんですが、ま、その話は置いといて、「座頭市」。結論からいうと、悪くなかったです。脚本を書いたリリー・フランキーはけっこう勝新の座頭市を観てるんじゃないかと思いました。かくいうわたしも大映の座頭市ボックスは全部観てますが…。

前作の「地球投五郎宇宙荒事」は、海老蔵、獅童、加藤清史郎の三人の大健闘もむなしく、クドカン脚本と三池崇史の演出が最悪で、映画『ヤッターマン』の陳腐さを思い出しました。おまけに、場所柄なのか、きどった頭の悪そうな客層にも嫌気がさして悪い印象しかなかったんですが、今回は世話物だし、ほとんど素顔に近い海老蔵を生かそうというコンセプトと寺島しのぶの存在感がやはり別格。特に、寺島しのぶは花魁姿だと、あたりまえながら菊之助によく似てる。でも、梨園の優等生・菊之助にはない業とか情念が感じられて、逆にこういうところが今の菊之助の課題の一つだなあ~とさえ思いました(たとえば、最近の先代萩とか合邦。)。

今回の舞台、座頭市を見慣れている人には内容面での新規さはないのですが、海老蔵のリラックスした雰囲気や衣装のカッコよさ、寺島しのぶとのアドリブなんか見応えがあります。また、美術も歌舞伎の世話物ではあまりない二階建てを生かした芝居が続いてよかったですね。二階建ての大道具を生かした脚本って、長谷川伸くらいでしょうから。あと、右團次の敵役もこころなしか世話物らしいリアルさがあったような気がします(いつもは世話物でも荒事っぽい感じがする人なので。)あと、個人的な好みでいえば、今回の舞台の大道具は全般的に渋くてよかったですね。視覚的に充実した新作というのは意外とないものなんで。

ということで、大絶賛まではしないけど、海老蔵と寺島しのぶの豊かなセッションという意味で、生で観たかったな~とは思いました。

PS:画像は前回の六本木歌舞伎のモノです。

・前回の六本木歌舞伎の簡単な感想

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