切られお富!

歌舞伎から時事ネタまで、世知辛い世の中に毒を撒き散らす!

<追悼> 十代目坂東三津五郎

2015-05-30 00:00:00 | かぶき讃(トピックス)
遅ればせながらの追悼記事ですが、とにかく残念。家庭人としてはいろいろあったのかもしれないが、若くして名優であり、踊りの名人だったと思いますね。ご冥福をお祈りしたいと思います。


とにかく、コクのある舞台を見せてくれる人でした。吉右衛門もそうだけど、このひとがやると、つまらない芝居も深みがあるように感じられてくるから不思議。多趣味だったことが芸の後ろ支えになっていたんだろうと想像しますが、個人的には、トーク番組でのグルメぶりが印象に残ります(これは家系なんでしょうね。八代目の本は以前このブログでも紹介済み。なお、大阪のオモニというお好み焼き屋さんは、三津五郎のおかげで知りました。)。

(参考)『八代目坂東三津五郎の 食い放題』 八代目 坂東三津五郎 著

さて、肝心の芝居ですが、今となっては晩年の舞台になってしまった、「塩原多助一代記」(国立劇場)、「たぬき」(歌舞伎座納涼歌舞伎)、「髪結新三」の新三(歌舞伎座納涼歌舞伎)あたりが印象に残りますが、個人的には、なんといっても、南座顔見世での襲名披露公演「助六」が素晴らしかった!再演を望んでいたのですが、叶わない夢に終わってしまいましたね~(舞台写真持ってます!)。それと、月並みですが、勘三郎がお梶で付き合った「喜撰」が艶やかでした。あと、歌舞伎座でやった「道成寺」もよかったし、時蔵とやった「鳴神」も目の覚めるような舞台でした。あと、芝居としては好きじゃないけど、野田歌舞伎「鼠小僧」の奉行役も、三津五郎あっての勘三郎だな~と思える舞台でしたしね・・・。あと、「め組の喧嘩」も素晴らしい!

ただ、考えすぎちゃうとダメだって印象もあって、「髪結新三」の大家なんかは、「鰹は半分もらったよ」が、意味を込めすぎて、わたしには乗れなかった(わたしの大家のベストは富十郎なので。)。あと、本当のことをいうと、新三のときも、永代橋のところの名台詞は、もっとスカッとお願いしたかった不満は残ったんですけが・・・(おなじことは、橋之助のときにも感じた。)。

ちなみに、三津五郎の訃報が伝わった日(2月22日)、わたしはたまたま歌舞伎座の昼の部の観劇日で、息子の巳之助(一幕目の「吉例壽曽我」の朝比奈三郎役)が頑張ってるなあ~なんて思っていたら、訃報を受けた日の舞台だったんですよね。わたしはもちろん、観客もあの時間帯では三津五郎の訃報を知らなかったはずだけど、彼はもちろんわかっていた。あとで、ちょっとじ~んとくるものがありましたね。フジテレビの「ザ・ノンフィクション」では複雑な思いを吐露していた巳之助だけど、今後が楽しみです。

あと、この人で忘れてはならないのは、ちゃんと中身のある本を出していたこと。『あばれ熨斗』はたいしたことないんだけど、『歌舞伎の愉しみ』と『踊りの愉しみ』は役者の書いた本としては名著の部類だと思います。今度、岩波現代文庫に入るそうですが、なかなか今の役者では珍しいことでしょう。

ということで、あの爽やかな口跡とキレのある芝居が見られないかと思うと・・・。せめて、衛星劇場の追悼特集は二か月やってください!

坂東三津五郎 歌舞伎の愉しみ
クリエーター情報なし
岩波書店


坂東三津五郎 踊りの愉しみ
クリエーター情報なし
岩波書店


坂東三津五郎 粋な城めぐり 角川SSC新書 (角川SSC新書)
クリエーター情報なし
角川マガジンズ(角川グループパブリッシング)
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« <歌舞伎×ユニクロ>コラボ商... | トップ | チョン・キョンファのクロイ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

かぶき讃(トピックス)」カテゴリの最新記事