いや~すごい映画です、これは。皮肉でなく。
この映画は日伊合作(東宝)のオペラ映画で、唄はさすがに吹き替えですが、日伊の役者出演でローマのチネチッタ(イタリアにあるムッソリーニが作った国立撮影所)で撮影されたものです。
音楽評論家の宇野功芳氏の本の中で、宇野氏が封切り当時、朝の一番の回から夜まで見続けてしまったと告白!している映画で、映画オタクや一部の高齢映画関係者の間で稀に話題になる程度のカルト映画というのが一般の位置づけ。邦画オタクを自認してきたわたしも、さすがに食指が動かず、BSで放送したものビデオに録ったきり忘れていたのですが、最近ちょっとオペラがマイブームになりかけてる流れで、何の気なく観てしまった。
まず関心するのが、デビュー当時の八千草薫の可愛らしさ。オペラの蝶々さんというとケバいメイクに立派な体格の外人のイメージなのだが、日本人に違和感のない可愛い芸者ぶり。おまけにこの人やたらに口ぱくがうまい。(この頃から演技派だったってこと?)彼女の自然さのおかげで、むちゃくちゃ違和感のあるはずの、この映画の設定(何しろ日本語のセリフのあとに、オペラの曲になって、プレーゴ~なんて始まるんですから。)がなぜかすんなり見れてしまう。
それに加えてすごいのが、なんといっても蝶々さんの家の庭のセット。スタジオ内に作られた広大な庭のセットで、庭の中の滝もちゃんと水が流れている。蝶々さんの嫁入りの場面の芸者の行列の華麗さやクレーン撮影の流麗さは、MGMのミュージカル映画を観ているよう。言い忘れたがこの映画はカラーで、庭といい衣装といい素晴らしい色彩で、大変ゴージャスな感じ。
日本人の脇役も含め芝居もちゃんとしていて、時代考証的にも日本人にそれほど違和感はないはず。(「ラストサムライ」の考証なんか問題ではない!)イタリア人が監督になっているのに、これはよっぽど良い日本人スタッフが応援で付いているんだなと思った。
さて、映画が終わってエンドロールのクレジットを見てビックリ!。カメラはあのクロード・ルノワールで年代的には、ジャン・ルノワールの「黄金の馬車」や「河」というフランスカラー映画の大傑作と同時期の撮影。撮影助手がジュセッペ・ロトゥンノ(ヴィスコンティの映画なんかのカメラマン)、美術はこれまたヴィスコンティの「山猫」や「家族の肖像」をやったマリオ・ガルブリラ。凄い!めちゃくちゃ豪華スタッフ。
そして、最後の演出助手の名に、ヤスゾウ・マスムラの名が…。増村保造だったのか。確かに当時の日本人でイタリア語が話せる人と言えばこの人しかいなかった。道理て芝居がちゃんとしているはずだ。監督デビュー直前で、溝口健二の晩年の作品に付いてる頃なので、大映から東宝に出向していたのだろう。
たまたまとはいえ、ヨーロッパと日本の優秀なスタッフの一瞬の邂逅。これは断じてカルト映画などではない!演出はほとんど増村が仕切っていたに決まっているので、貴重な<日本映画>といっていいだろう。
土曜日から公開されているヴィスコンティの「山猫(完全版)」を観に行く人は、フィルムセンターに「蝶々夫人」のニュープリント上映を要求すべきでしょう。(単なるスノッブでないなら。)
なんだかとんだ拾い物で、当分興奮冷めやりません!
この映画は日伊合作(東宝)のオペラ映画で、唄はさすがに吹き替えですが、日伊の役者出演でローマのチネチッタ(イタリアにあるムッソリーニが作った国立撮影所)で撮影されたものです。
音楽評論家の宇野功芳氏の本の中で、宇野氏が封切り当時、朝の一番の回から夜まで見続けてしまったと告白!している映画で、映画オタクや一部の高齢映画関係者の間で稀に話題になる程度のカルト映画というのが一般の位置づけ。邦画オタクを自認してきたわたしも、さすがに食指が動かず、BSで放送したものビデオに録ったきり忘れていたのですが、最近ちょっとオペラがマイブームになりかけてる流れで、何の気なく観てしまった。
まず関心するのが、デビュー当時の八千草薫の可愛らしさ。オペラの蝶々さんというとケバいメイクに立派な体格の外人のイメージなのだが、日本人に違和感のない可愛い芸者ぶり。おまけにこの人やたらに口ぱくがうまい。(この頃から演技派だったってこと?)彼女の自然さのおかげで、むちゃくちゃ違和感のあるはずの、この映画の設定(何しろ日本語のセリフのあとに、オペラの曲になって、プレーゴ~なんて始まるんですから。)がなぜかすんなり見れてしまう。
それに加えてすごいのが、なんといっても蝶々さんの家の庭のセット。スタジオ内に作られた広大な庭のセットで、庭の中の滝もちゃんと水が流れている。蝶々さんの嫁入りの場面の芸者の行列の華麗さやクレーン撮影の流麗さは、MGMのミュージカル映画を観ているよう。言い忘れたがこの映画はカラーで、庭といい衣装といい素晴らしい色彩で、大変ゴージャスな感じ。
日本人の脇役も含め芝居もちゃんとしていて、時代考証的にも日本人にそれほど違和感はないはず。(「ラストサムライ」の考証なんか問題ではない!)イタリア人が監督になっているのに、これはよっぽど良い日本人スタッフが応援で付いているんだなと思った。
さて、映画が終わってエンドロールのクレジットを見てビックリ!。カメラはあのクロード・ルノワールで年代的には、ジャン・ルノワールの「黄金の馬車」や「河」というフランスカラー映画の大傑作と同時期の撮影。撮影助手がジュセッペ・ロトゥンノ(ヴィスコンティの映画なんかのカメラマン)、美術はこれまたヴィスコンティの「山猫」や「家族の肖像」をやったマリオ・ガルブリラ。凄い!めちゃくちゃ豪華スタッフ。
そして、最後の演出助手の名に、ヤスゾウ・マスムラの名が…。増村保造だったのか。確かに当時の日本人でイタリア語が話せる人と言えばこの人しかいなかった。道理て芝居がちゃんとしているはずだ。監督デビュー直前で、溝口健二の晩年の作品に付いてる頃なので、大映から東宝に出向していたのだろう。
たまたまとはいえ、ヨーロッパと日本の優秀なスタッフの一瞬の邂逅。これは断じてカルト映画などではない!演出はほとんど増村が仕切っていたに決まっているので、貴重な<日本映画>といっていいだろう。
土曜日から公開されているヴィスコンティの「山猫(完全版)」を観に行く人は、フィルムセンターに「蝶々夫人」のニュープリント上映を要求すべきでしょう。(単なるスノッブでないなら。)
なんだかとんだ拾い物で、当分興奮冷めやりません!
最近だと「阿修羅のごとく」の出演が評価は高いようですね。ただ、わたしは未見ですが…。
ファンの方にはゴメンナサイ。
夫の谷口千吉ってまだ生きてるんでしたっけ?
私の 少年から青年期に掛けての 忘れられぬ 大切な思い出です。
何とかして、此の映画をもう一度見て見たい。 出来れば
video,DVD等の形で欲しい。
何方か、此に関し、関連情報がありましたら 教えて下さい。
横浜在住 山藤
私の 少年から青年期に掛けての 忘れられぬ 大切な思い出です。
何とかして、此の映画をもう一度見て見たい。 出来れば
video,DVD等の形で欲しい。
何方か、此に関し、関連情報がありましたら 教えて下さい。
横浜在住 山藤
ローマで撮影中、別スタジオでローマの休日を
撮影してたので主演者たちもよく見かけたとか。
自慢するわけでなく淡々としていて彼女らしかった。
関西の人さんの八千草薫の話って、いい話ですね。教えて頂いてありがとうございます。日本の邦画界も昔のほうがグローバルだったって思います。最近の渡辺謙なんかの話しか知らない人にはピンと来ないんだろうけど…。
因みに八千草薫だと、川島雄三の『グラマ島の誘惑』っていう映画が、これまた飄々としていて面白かったですねぇ~、個人的には。
ところで、谷口千吉ってまだ元気なんですかね?
世界文化社のオペラ名作シリーズ第8巻で、八千草薫の映画『蝶々夫人』DVDとロリン・マゼール指揮/浅利慶太演出/林康子主演のミラノ・スカラ座公演DVDに解説本がセットになったものです。
http://www.amazon.co.jp/dp/4418080082/
http://www.7andy.jp/books/detail/-/accd/32183774
このDVDのシリーズってなかなか意外性があって、わたしも何枚か持っていたので、情報としては知っていましたが、意外な形で発売されることになったなあ~なんて思いました。
ただ、ライブ至上主義者が多いクラシック・ファン、オペラ・ファンにどんな風に受け取られるのかはちょっと気になるところですかね~。
声は、吹替えでしょうか。
以前、『徹子の部屋』に出た時、八千草は歌ったといっていましたが。
これは東宝ですが、実際は東和の川喜多長政がやったようです。
昨年はたくさんのコメントありがとうございます。
今更ながらのご返事でご容赦ください。
「蝶々夫人」と増村の留学時期が重なるというのは盲点でした。今は亡き藤井浩明さんにサインしてもらった『増村保造の世界』(もちろん大判)を見返しましたが、明快には書いてなかったです。
歌ですが、吹替だったと記憶しています。