切られお富!

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『にがい米』とシルバーナ・マンガーノ

2009-02-10 00:00:00 | アメリカの夜(映画日記)
わたしの大好きな女優にシルバーナ・マンガーノという人がいるのですが、わたしの好きな彼女はキャリア後半のルキノ・ヴィスコンティ作品の彼女なんですね。というわけで、彼女の若いときの出世作にして、イタリアン・ネオ・レアリズモの傑作『にがい米』。この映画は長らく未見だったのですが、見てみたらなかなかよいんですよ!というわけで、簡単に感想っ!

後年のシルバーナ・マンガーノといえば、イタリアの貴婦人みたいなイメージですが、この『にがい米』という映画の彼女は、はちきれんばかりの若さで滅茶苦茶グラマー!正直いって、最初は同一人物か疑ってしまうほど違うんですよね~。

ところが、後半の悪い男に騙され溺れていく過程に差し掛かると、後年の演技派の片鱗をうかがわせる芝居のうまさを発揮。(ところで、この「悪い男」が本当に悪いんだ、まったく!イタリアのジゴロって感じ?)

今でいうと、ちょっと違うかもしれないけど、沢尻エリカが結構芝居もうまかったみたいな、意外性なのかも知れませんね、当時としては!

特に最後の方なんて、他の役者を食っちゃってる感じだし、肉感的な女優なんていう映画冒頭のイメージは、映画の最後でなくなってしまいます。

ところで、この映画、監督もなかなか凝った撮影をする人みたいで、クレーンを使った大ロケ撮影で、仕出し(エキストラ)の使い方も結構うまい。わたしはヴィスコンティの『揺れる大地』なんかを思い出しましたね~。

ところで、この女優で思い出す一冊の本があって、それは『蜘蛛女のキス』で知られるエマニエル・プイグの『グレタ・ガルボの眼』という作品。

この本の中にシルバーナ・マンガーノについて割かれた章(「そう、女神みたいにきれいだった」)があって、これがまったく愛に満ちた内容になっています。

この本自体、様々な映画について書かれた映画狂向けの本で、出てくる映画はマイナーなんだけど、語り口が平易なので純粋に読み物としても楽しめますよ。

最後に、彼女のほかの出演作について書いておくと、彼女の転機となったといわれるオムニバス映画『華やかな魔女たち』は残念ながら未見。紀伊国屋書店さん、是非ともDVD出してくださいね!

ヴィスコンティ監督作品はどれもいいけど、偏愛しているのは『家族の肖像』の母親役と『ベニスに死す』のこれまた母親役。特に後者では、監督が自身の貴族の母親のイメージを重ねた演出になっているんだとか。

パゾリーニ監督作品の彼女はあんまり好きじゃないんだけど、これというのも、なんだか粉っぽい生生しさになっちゃうからなんですよね。たとえでいうと、大島渚の映画の小山明子みたいで。あえて選ぶなら『アポロンの地獄』ですか。

あとは、作品としてはもうひとつなんだけど、ミハルコフ監督の『黒い瞳』かな。この映画って、蓮実重彦がいうほど悪くないんだけど、マストロヤンニが魅力的で、彼女の魅力はもうひとつ出ていない。でも、見て損はありませんけどね~。

というわけで、たんなる、シルバーナ・マンガーノ賛歌みたいな記事だったなあ~。プイグの文章の最後みたいに・・・。

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