切られお富!

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試写会 『トンマッコルへようこそ』

2006-10-07 17:00:59 | アメリカの夜(映画日記)
昨日は、わけあって久しぶりに試写会に行ったんだけど、なかなか興味深い映画でしたね。タイトルは『トンマッコルへようこそ』。韓国映画なんですが、音楽は北野武や宮崎駿の映画でもお馴染みの久石譲。去年韓国で興行収入NO.1に輝いた作品だというので、どんな感じかと思ったのですが、エンターテイメント作ながら、なかなかこれは思想的にも深いなあという印象で、ネタバレにならない程度に感想です!

話は、朝鮮戦争中、韓国の山奥にある村に、南北の兵士と米軍兵士がたまたま一緒になり暮らすはめになるというもの。

ユートピア的で、戦争のことなどまったく知らない素朴な村トンマッコルと、左右の違いはあれ、「近代合理主義」に毒された兵士たちと米兵。

この作品が優れているのは、左右両方、そしてアメリカというものに対して冷めた視点を持っているということ。そして、作品の後半で兵士たちが村を守るためにとった行動を考えると、アジア的な第三の道を模索しようという視点すら感じられ、サイードの『オリエンタリズム』という本を思い出してしまった。

わたしが好感を持ったのは、こういうテーマを扱っていて、芸術映画にならず、エンターテイメント映画であるという点。はっきりいって、映画技術的にはアナクロとさえ思うし、かなり低予算でがんばって作った後が見られ(例えば、望遠レンズの多用。)、いわゆる戦争ネタ大作映画とは対極にある製作手法だったに違いないと思う。

とまあ、小難しいことを書きましたが、まったく明快な映画だし、久石譲の音楽が作品にとてもあっていて、<世界の久石>だなあという感じもします。

宮崎駿なんかが好きな人など、興味のある方はどうぞ。

公式HP

PS①:ところで、日本人がこの手の映画を作ったら詠嘆調で終わるところを、そうでないところがある意味<真の郷土愛>的ですらあるわけで、この作品にいちゃもんつけてるプチ右翼がいるっていうのが信じられないですね。思考停止的な「嫌韓流」ってことなんですか?(要するに、本土決戦やらなかった国の右翼ってことでなのかな?こういうプチ右翼は、放射能や妨害電波を垂れ流している米海軍を批判したりはできないんでしょうね。)

PS②:わたしは観る前、川島雄三の風刺映画『グラマ島の誘惑』を連想してたんだけど、全然こっちの方が批判の矛先が鋭いと思いました。『グラマ島~』は川島自身も失敗作だといっています。因みに主演は森繁と八千草薫。

PS③:この映画のトンマッコルの村人たちを見ていて、ギリシアの人たちを思い出しました。ギリシア人はヨーロッパでも例外的なくらいに旅人に優しい人たちです。因みに、ギリシアは列強やトルコに蹂躙された厳しい歴史をたどってきた国でもあります。

オリエンタリズム〈上〉

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