話題の芥川賞受賞作、読みました。簡単に感想っ。若干ネタバレあり。
月並みな要約をすれば、「若手漫才師と先輩の心の交流」って内容ですが、結論だけ先にいえば、話の3/4くらいまでは感心して読みました。
ただ、破天荒な先輩とか友人の話というのは、小説のパターンとしては割とありがち。これが、ロックミュージシャンとか作家志望者とかだったら、芥川賞選考委員も✖にしてたんじゃないでしょうか。漫才師の世界という、「作家先生」には無縁な世界を描いていたんで新鮮だったということだと思います。
で、読書家の又吉だけに、細かい描写や語り手の心理など、なかなか丹念に描かれていて、純文学っぽいんですが、さすがに最後の方は息切れだったんじゃないですか。最後が荒いんですよ。破天荒な登場人物を出した場合の落としどころって難しいと思うし、なにしろ設定が漫才師だから、よほどの「え!」を出さないといけないと又吉も考えたんでしょうが、これはないでしょって、終わり方。純文学への照れがそうさせたのか、他に思いつかなかったのか、漫才の落ちならいいけど、小説としてはどうなのか・・・。
最後がなければ、北野武監督『キッズ・リターン』に通じる青春ものだったんですがね~。
なお、和田アキ子がこの小説にピンとこなかったと発言したのは、素直な感想だと思う。というのも、「芸能界にはこれくらいの変人なんかいくらもいるわ」と、このクラスのベテランタレントなら思ったんじゃないですかね。(ま、本人も本人だし)
古舘伊知郎も「芥川賞と本屋大賞が変わらなくなった」という趣旨の嫌みを言ったようだけど、これもちょっと頷けなくはない。ただ、本屋大賞なら、もうちょっと結末がしっかりしたエンタメじゃないと選ばれないでしょう。芥川賞だから、芥川賞選考委員だから、これを選んだんだと、わたしはむしろ思いました。
で、この二人は普段の言動からそれなりの読書家だろうと想像できるんだけど、教養なさげなネット住人たちがこの二人を批判したのには呆れました。
一冊の小説についてどんな感想があったって良いし、芥川賞受賞作なんてろくに読んだことのなさそうな連中が、「芥川賞」という権威を盲信し、勝手に芸人又吉にシンパシーを感じて、騒ぎだし、「いいね!」と思わない人間を排斥しようとするって、ただのバカです。
こういう「いいね!」社会をぶち壊したいなと切に思いますね。でも、『火花』のなかの漫才論って、じつは芸術論、ロック論に置き換え可能なものなんで、作中の人物・神谷を面白いと思うなら、ああいう批判はできるわけなくて、和田&古舘を批判している段階で、この小説が読めてないんじゃないかと思いました。
なお、この小説で一番良いキャラは、神谷の元カノですね。太宰の小説では、飲み屋とかタバコ屋のお姉さんが天使のように描かれますが、あの元カノのキャラは太宰っぽいと思いました。それに、彼女を後で見かけるくだりは、太宰の「満願」を思い出しましたしね。
というわけで、『苦役列車』よりは面白いです。もっとも、西村賢太の場合は、この作品以後の連作が面白いんで、芥川賞受賞作が詰まらなかったというパターン。又吉の場合は、漫才という素材から離れたところで、どんな作品が書けるのか、そこが勝負だと思います。たいへんなプレッシャーでしょうね。期待しています。
月並みな要約をすれば、「若手漫才師と先輩の心の交流」って内容ですが、結論だけ先にいえば、話の3/4くらいまでは感心して読みました。
ただ、破天荒な先輩とか友人の話というのは、小説のパターンとしては割とありがち。これが、ロックミュージシャンとか作家志望者とかだったら、芥川賞選考委員も✖にしてたんじゃないでしょうか。漫才師の世界という、「作家先生」には無縁な世界を描いていたんで新鮮だったということだと思います。
で、読書家の又吉だけに、細かい描写や語り手の心理など、なかなか丹念に描かれていて、純文学っぽいんですが、さすがに最後の方は息切れだったんじゃないですか。最後が荒いんですよ。破天荒な登場人物を出した場合の落としどころって難しいと思うし、なにしろ設定が漫才師だから、よほどの「え!」を出さないといけないと又吉も考えたんでしょうが、これはないでしょって、終わり方。純文学への照れがそうさせたのか、他に思いつかなかったのか、漫才の落ちならいいけど、小説としてはどうなのか・・・。
最後がなければ、北野武監督『キッズ・リターン』に通じる青春ものだったんですがね~。
なお、和田アキ子がこの小説にピンとこなかったと発言したのは、素直な感想だと思う。というのも、「芸能界にはこれくらいの変人なんかいくらもいるわ」と、このクラスのベテランタレントなら思ったんじゃないですかね。(ま、本人も本人だし)
古舘伊知郎も「芥川賞と本屋大賞が変わらなくなった」という趣旨の嫌みを言ったようだけど、これもちょっと頷けなくはない。ただ、本屋大賞なら、もうちょっと結末がしっかりしたエンタメじゃないと選ばれないでしょう。芥川賞だから、芥川賞選考委員だから、これを選んだんだと、わたしはむしろ思いました。
で、この二人は普段の言動からそれなりの読書家だろうと想像できるんだけど、教養なさげなネット住人たちがこの二人を批判したのには呆れました。
一冊の小説についてどんな感想があったって良いし、芥川賞受賞作なんてろくに読んだことのなさそうな連中が、「芥川賞」という権威を盲信し、勝手に芸人又吉にシンパシーを感じて、騒ぎだし、「いいね!」と思わない人間を排斥しようとするって、ただのバカです。
こういう「いいね!」社会をぶち壊したいなと切に思いますね。でも、『火花』のなかの漫才論って、じつは芸術論、ロック論に置き換え可能なものなんで、作中の人物・神谷を面白いと思うなら、ああいう批判はできるわけなくて、和田&古舘を批判している段階で、この小説が読めてないんじゃないかと思いました。
なお、この小説で一番良いキャラは、神谷の元カノですね。太宰の小説では、飲み屋とかタバコ屋のお姉さんが天使のように描かれますが、あの元カノのキャラは太宰っぽいと思いました。それに、彼女を後で見かけるくだりは、太宰の「満願」を思い出しましたしね。
というわけで、『苦役列車』よりは面白いです。もっとも、西村賢太の場合は、この作品以後の連作が面白いんで、芥川賞受賞作が詰まらなかったというパターン。又吉の場合は、漫才という素材から離れたところで、どんな作品が書けるのか、そこが勝負だと思います。たいへんなプレッシャーでしょうね。期待しています。
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