切られお富!

歌舞伎から時事ネタまで、世知辛い世の中に毒を撒き散らす!

なんか微妙な「大江健三郎賞」。

2005-10-08 04:34:59 | 超読書日記
生きている作家の名前のついた賞ってこと自体、いかがなものかと思うんだけど、大江健三郎が自ら一人で選考し、賞金ナシで英語への翻訳と世界刊行を約束するという、ちょっとビックリというか随分高飛車な「大江健三郎賞」。この賞を欲しい作家っているのかな?

>選評の代わりに、大江氏と受賞作家の公開対談を行い、「群像」誌に掲載する。

というのは面白いのだけど、受賞者が辞退したらどうするんだ?っていう気もするけどね…。

筋金入りの大江ファンっていうおじさんおばさんもいるだろうから、偉そうなこともいえないけれど、わたしも初期の短編なんかは凶暴な感じがして好きだし、中期の長編「万延元年のフットボール」は凄い作品だと思うけど、個人的には江藤淳にけちょんけちょんにけなされた長編「叫び声」と評論集「厳粛な綱渡り」が割りと好き。(特に、「厳粛な綱渡り」はジャズの話なんか出てくるしね!)

しかし、かつては時代の寵児だったこのノーベル賞作家も今はすっかり存在感いまいちな作家になってしまったなあって感じではある。わたし自身、「人生の親戚」は読んだけど、歯の浮くようなこと(例えば"善意"?)をあえて引き受けようという作家の責任感ばかりが伝わってきてまったく身につまされる感じがなく、とてもそれ以降の作品を手にとる気がしない。

これというのも、以前も書いた「政治少年死す」の件が引っかかっているからかもしれない。わたしのブログのカテゴリィ(政治少女死なず)の由来にもなった「政治少年死す」は、右翼の脅しにあって作家本人が未刊行にしてしまった作品で、同じく右翼の攻撃にあって今は読むことのできない深沢七郎の「風流夢譚」と並ぶ幻の作品。
(もっともこの二作が載っている本が売られているそうで、著作権どうなっているんだ?って疑問もあるんだけど、どうなんですか…。)

<参考>風流夢譚事件

結局、勇ましい発言や態度とは裏腹のボロが至るところに現れてしまうあたりに、この人の限界があるような気がしてならないのだけど、今や右傾化が叫ばれる時代。問題提起も含めて、「政治少年死す」を刊行するのなら、ちょっと見直すんですけどね…。

まあ、話を戻すと、大江健三郎がはりきっているこの「大江賞」が、単なる出版社の大江接待的なもので終わらなければいいなあと思いますが…。

講談社が「大江健三郎賞」創設 選考は大江氏1人 (朝日新聞) - goo ニュース

叫び声

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