話のタネに行ってみたら、意外にも興味深かったので御報告します。
菊池寛が高松出身だったとは不覚にも去年知ったのですが、菊池寛記念館の場所が歩いていくには遠かったのと、あまり好きな作家ではなかったという理由で去年は行きませんでしたが、前述したように、レンタサイクルを借りたついでで、行ってみました。
市立図書館の入っている建物の3階にあるのですが、私が行った時には見学者は私一人だけ。入場料200円を払ってじっくりと見学したのですが…。
まず、感想を述べる前に、菊池寛という作家についての私の雑感を述べます。
近年、ドラマ『真珠夫人』のヒットで再評価の機運のある菊池寛。私も御多分に漏れず、小学生時代に「恩讐の彼方に」とか「父帰る」といった初期作品を文学全集で読んだくらいだったし、後年になって、芝居に関する関心から「藤十郎の恋」「俊寛」なんかを読み返した程度。非常にわかりやすく骨格のハッキリした作品だと思う反面、とても図式的で、とりわけ「俊寛」に関しては、芥川龍之介の「俊寛」の換骨奪胎した大胆な俊寛像に比べるといかにも凡庸な解釈だなあと思ったもの。(因みに、歌舞伎の「俊寛」をご覧になったことのある方は、是非、菊池寛と芥川の「俊寛」をお読みになることを奨めます。特に芥川のものを読むと仰天しますよ。それと、今の松本幸四郎の「俊寛」は菊池寛の解釈に近いのでは、というのが私の印象。)
しかし、そんなイメージが多少変わったのが、以下の人たちによる菊池寛論を読んだのがきっかけ。
・江藤淳 「菊池寛」 「江藤淳全集」 (作家論)収録
・福田和也 「菊池寛」 「ろくでなしの歌」
・川端康成 「菊池寛」 「真珠夫人」(文春文庫)の解説
なかでも出色の内容は江藤淳のもので、時代背景、当時の政治状況を含めた中で、菊池寛の大衆小説を再評価しており、時代批評としても優れた内容になっていておすすめ。
今回この記念館で、菊池寛が英語を得意としていたこと、英文学ではオスカー・ワイルドに傾倒していたことを知ったのだけど、彼の初期の小説からすると意外な印象を受ける。谷崎潤一郎あたりに代表されるワイルドの耽美主義的な影響は、菊池寛の場合、むしろ後年の大衆小説の方に現れたのではというのが私の印象。(因みに、いわゆる白樺派の作家(武者小路実篤など)が読んだトルストイは英訳だったそうで、今のように翻訳が溢れている時代と違い、昔の読書は必然的に洋書だったということなんですよね。ちょっとため息が出ますが…。)
しかし、ここまで散々菊池寛について述べておきながらなんですが、何よりこの記念館で面白かったというか、圧巻という印象を持ったのが、歴代の全芥川賞・直木賞受賞者の写真と受賞作の展示コーナー。特にここ10年ほどの受賞者には受賞作にサインをお願いしているようで、いかにもオタク娘っぽい字の綿矢りさ、ひとりだけ横書きの金原ひとみ、最新の受賞者・阿部和重まで、なかなか本読みには興味深い必見のコーナーで、菊池寛には興味のない人にも十分楽しめます。お時間のある方はどうぞ!!
菊池寛記念館
【参考】猪瀬直樹の描いた菊池寛像。三島由紀夫を描いた『ペルソナ』や太宰治を描いた『ピカレスク』に較べると軽い読み物ではありますが…。
菊池寛が高松出身だったとは不覚にも去年知ったのですが、菊池寛記念館の場所が歩いていくには遠かったのと、あまり好きな作家ではなかったという理由で去年は行きませんでしたが、前述したように、レンタサイクルを借りたついでで、行ってみました。
市立図書館の入っている建物の3階にあるのですが、私が行った時には見学者は私一人だけ。入場料200円を払ってじっくりと見学したのですが…。
まず、感想を述べる前に、菊池寛という作家についての私の雑感を述べます。
近年、ドラマ『真珠夫人』のヒットで再評価の機運のある菊池寛。私も御多分に漏れず、小学生時代に「恩讐の彼方に」とか「父帰る」といった初期作品を文学全集で読んだくらいだったし、後年になって、芝居に関する関心から「藤十郎の恋」「俊寛」なんかを読み返した程度。非常にわかりやすく骨格のハッキリした作品だと思う反面、とても図式的で、とりわけ「俊寛」に関しては、芥川龍之介の「俊寛」の換骨奪胎した大胆な俊寛像に比べるといかにも凡庸な解釈だなあと思ったもの。(因みに、歌舞伎の「俊寛」をご覧になったことのある方は、是非、菊池寛と芥川の「俊寛」をお読みになることを奨めます。特に芥川のものを読むと仰天しますよ。それと、今の松本幸四郎の「俊寛」は菊池寛の解釈に近いのでは、というのが私の印象。)
しかし、そんなイメージが多少変わったのが、以下の人たちによる菊池寛論を読んだのがきっかけ。
・江藤淳 「菊池寛」 「江藤淳全集」 (作家論)収録
・福田和也 「菊池寛」 「ろくでなしの歌」
・川端康成 「菊池寛」 「真珠夫人」(文春文庫)の解説
なかでも出色の内容は江藤淳のもので、時代背景、当時の政治状況を含めた中で、菊池寛の大衆小説を再評価しており、時代批評としても優れた内容になっていておすすめ。
今回この記念館で、菊池寛が英語を得意としていたこと、英文学ではオスカー・ワイルドに傾倒していたことを知ったのだけど、彼の初期の小説からすると意外な印象を受ける。谷崎潤一郎あたりに代表されるワイルドの耽美主義的な影響は、菊池寛の場合、むしろ後年の大衆小説の方に現れたのではというのが私の印象。(因みに、いわゆる白樺派の作家(武者小路実篤など)が読んだトルストイは英訳だったそうで、今のように翻訳が溢れている時代と違い、昔の読書は必然的に洋書だったということなんですよね。ちょっとため息が出ますが…。)
しかし、ここまで散々菊池寛について述べておきながらなんですが、何よりこの記念館で面白かったというか、圧巻という印象を持ったのが、歴代の全芥川賞・直木賞受賞者の写真と受賞作の展示コーナー。特にここ10年ほどの受賞者には受賞作にサインをお願いしているようで、いかにもオタク娘っぽい字の綿矢りさ、ひとりだけ横書きの金原ひとみ、最新の受賞者・阿部和重まで、なかなか本読みには興味深い必見のコーナーで、菊池寛には興味のない人にも十分楽しめます。お時間のある方はどうぞ!!
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