この企画もすっかりご無沙汰。
でも、要するにこの人について言いたくて始めた企画なんですよね、じつは。
もうすぐ11月だし、数々の草稿をボツにして、改めて語ります。
この人って、世間的には「人間国宝」とか「芸能界最高齢パパ」みたいな話題でしか取り上げられないのですが、多少歌舞伎座に通ったことのある人なら誰でもうなずく、大名優なんですよね。
歌舞伎座のおば様族と幕間でお話しする際(歌舞伎座では隣の席のおば様族とうまく付き合うのが、歌舞伎ビギナーの観劇のポイントの一つ!)、「誰が贔屓なの?」と聞かれて、「富十郎さんです。」と答えると、皆深くうなずくし、この人の悪口を言ってる人って会った事がない!
何が良いといって、まず声がいい。若い頃狂言を習っていたことがあるというところに、その秘密がありそうですが、はっきりしてよく通る台詞回し。多少元気が良すぎるときもなくはないが、実演を見るとスカッとする声です。
(海老蔵が新之助時代に、あの大きな目を見開いて、「おじさんはどうして朝からあんなに大きな声が出せるんですか?」と訊いたという話も面白い。)
次に踊り。この人はいまや最高の踊りの名手なんじゃないだろうか?いつもながらに素晴らしい身のこなしです。私は未見なんですが、「雪だるま」という舞踊が素晴らしかったと話してくれた、歌舞伎座の隣の席にいたおば様のきらきらした目が忘れられません。
そして、芝居。声が良いので時代物がいいのは言うまでもありませんが(吉右衛門、竹本清太夫と揃った時代物は毎回絶品です。)、世話物も滑稽味があっていい。来年の勘三郎襲名の髪結新三の大家はこの人でやってほしいな。
(因みに池波正太郎がなぜか生前、このひとの大ファンで「池波正太郎の春夏秋冬」(文春文庫)に対談がのっています。時代小説ってそんなに読みませんが、池波正太郎はなんとなく信用できるような気がするのは、この点から。)
とにかく、富十郎さんと雀右衛門さんの舞台はなるべく目に焼き付けておこうと個人的には思っています。それぐらい、歴史に残る名優だと私は思っているので。(でもたいへん高齢ですから…。)
同時代の名演と観客の関係って案外難しい。その時代あまり騒がれなかったのに、後になって名演だったといわれることって、芝居に限らずクラシックなど実演モノには少なくないんじゃないでしょうか?そして、夏目漱石の「三代目小さんと同時代に生きてよかった」という発言とか、銀座の人妻ホステスと心中未遂をした頃の太宰治が歌舞伎座の幕見で六代目菊五郎の「鈴が森」を見ていたなんて話を珍重したりする。
私も辛うじて、古今亭志ん朝の高座には何度か接することができましたが、ベストの状態の談志の高座は見れていないし(私が見たのはダメな日ばかり。)、最大の痛恨事は、宗十郎の最後の舞台「蘭蝶」を体調不良で見逃したこと。
話を富十郎さんに戻して、11月は久々の出演ですね。昼は「関の扉」の宗貞!、夜は「菊畑」の鬼一法眼ですから、是非お見逃しなく!(ホントはもっと見たいですよね…。)
でも、要するにこの人について言いたくて始めた企画なんですよね、じつは。
もうすぐ11月だし、数々の草稿をボツにして、改めて語ります。
この人って、世間的には「人間国宝」とか「芸能界最高齢パパ」みたいな話題でしか取り上げられないのですが、多少歌舞伎座に通ったことのある人なら誰でもうなずく、大名優なんですよね。
歌舞伎座のおば様族と幕間でお話しする際(歌舞伎座では隣の席のおば様族とうまく付き合うのが、歌舞伎ビギナーの観劇のポイントの一つ!)、「誰が贔屓なの?」と聞かれて、「富十郎さんです。」と答えると、皆深くうなずくし、この人の悪口を言ってる人って会った事がない!
何が良いといって、まず声がいい。若い頃狂言を習っていたことがあるというところに、その秘密がありそうですが、はっきりしてよく通る台詞回し。多少元気が良すぎるときもなくはないが、実演を見るとスカッとする声です。
(海老蔵が新之助時代に、あの大きな目を見開いて、「おじさんはどうして朝からあんなに大きな声が出せるんですか?」と訊いたという話も面白い。)
次に踊り。この人はいまや最高の踊りの名手なんじゃないだろうか?いつもながらに素晴らしい身のこなしです。私は未見なんですが、「雪だるま」という舞踊が素晴らしかったと話してくれた、歌舞伎座の隣の席にいたおば様のきらきらした目が忘れられません。
そして、芝居。声が良いので時代物がいいのは言うまでもありませんが(吉右衛門、竹本清太夫と揃った時代物は毎回絶品です。)、世話物も滑稽味があっていい。来年の勘三郎襲名の髪結新三の大家はこの人でやってほしいな。
(因みに池波正太郎がなぜか生前、このひとの大ファンで「池波正太郎の春夏秋冬」(文春文庫)に対談がのっています。時代小説ってそんなに読みませんが、池波正太郎はなんとなく信用できるような気がするのは、この点から。)
とにかく、富十郎さんと雀右衛門さんの舞台はなるべく目に焼き付けておこうと個人的には思っています。それぐらい、歴史に残る名優だと私は思っているので。(でもたいへん高齢ですから…。)
同時代の名演と観客の関係って案外難しい。その時代あまり騒がれなかったのに、後になって名演だったといわれることって、芝居に限らずクラシックなど実演モノには少なくないんじゃないでしょうか?そして、夏目漱石の「三代目小さんと同時代に生きてよかった」という発言とか、銀座の人妻ホステスと心中未遂をした頃の太宰治が歌舞伎座の幕見で六代目菊五郎の「鈴が森」を見ていたなんて話を珍重したりする。
私も辛うじて、古今亭志ん朝の高座には何度か接することができましたが、ベストの状態の談志の高座は見れていないし(私が見たのはダメな日ばかり。)、最大の痛恨事は、宗十郎の最後の舞台「蘭蝶」を体調不良で見逃したこと。
話を富十郎さんに戻して、11月は久々の出演ですね。昼は「関の扉」の宗貞!、夜は「菊畑」の鬼一法眼ですから、是非お見逃しなく!(ホントはもっと見たいですよね…。)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます