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戦争映画としてみる、『真実のマレーネ・ディートリッヒ 』

2007-08-06 02:51:49 | アメリカの夜(映画日記)
マレーネ・ディートリッヒが第二次大戦中米軍の慰問を積極的に行ったことはよく知られているけれど、これほど献身的な行動をとっていたとは…。そんな思いに駆られるドキュメンタリー映画です。

この作品は、彼女の孫が監督しているので、良く描かれすぎというきらいもなくはないんだけど、ドイツ、ベルリンをこよなく愛しながらドイツを捨てなければならなかったひとりの女優を描き出しているという意味で興味深い作品です。

秘蔵の八ミリ映像も多くあり興味は尽きないんだけど、多くの時間を慰問での彼女の行動に当てているという意味では一種の戦争ドキュメンタリーとも言えなくはありません。

彼女は後年、戦場の最前線での経験が忘れられないと語っている訳だけど、ジョージ・オーウェルや開高健の戦争ルポに近い体験をしたといってもいいのではないかと想像してしまいます。

戦場でも気取らず、最前線に行くことを望み、兵士達に母親のように接したディートリッヒは、晩年歌手として活動するようになったのちも、当時の元兵士達から熱狂的な支持を得たといいます。

じつを言うと、わたしは、ディートリッヒという女優からはそれほど色気を感じないし、彼女自身が有名になった頃すでに子供の母親だったという事実が象徴しているように、映画『ブロンド・ヴィーナス』のなかの母親役なんかの方が魅力的で忘れがたいと思っています。

だから、彼女の戦場での逸話を聞いていると、ジョン・フォードの映画の母親みたいなイメージが真実に近かったのではという気もしてしまうのですが、如何なものでしょうか?

ところで、広島や長崎には連合国の捕虜がいて、そのことを知りつつアメリカは原爆を落としたといわれていますが、最前線に近いところにいる人間とは誰なのか(政治家?)ということは、ちょっと考えてしまいます。

なお、わたしが感動したのは、この映画のなかの、アメリカが占領したドイツの町でディートリッヒがドイツ人女性たちから暖かく迎えられたというくだり。

彼女がパリで亡くなったとき、ベルリンでの埋葬に反対運動が起こったということも考え合わせて、右翼って何なのかを考えてみる必要はありますね。

意外とおすすめ。

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<参考>

カタロニア讃歌 (岩波文庫)
ジョージ オーウェル,George Orwell,都築 忠七
岩波書店

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ベトナム戦記
開高 健
朝日新聞社

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