切られお富!

歌舞伎から時事ネタまで、世知辛い世の中に毒を撒き散らす!

『人間失格』 荒戸源次郎 監督

2010-04-30 23:59:59 | アメリカの夜(映画日記)
見逃していたんで、観ました。あっさり、感想っ。

いわずと知れた太宰治の原作だし、内容はもうよいでしょう。

率直にいちゃうと、脚本が悪い!

荒井晴彦の脚本は主人公・大庭葉蔵を巧く描けていなくて、なんでこの男がこんなにモテるのかがさっぱりわからない。

もちろん、演出にも問題あるんだろうけれど、ルックスだけでモテてるんだったら、この小説がなぜ長くベストセラーになっているのかよくわからないですよね~。

この映画で秀逸なのは、なんといっても美術で、そんなに大作でもないのに随分手間がかかっています。京都の東映で撮影したようですが、美術さん大泣きなんじゃないのかな?

たとえば、主人公が一人暮らしを始めたときの下宿の二階のごちゃごちゃ感のある飾り。

下宿の二階や石原さとみ演じる若妻との新婚生活の二階屋、その窓外の半立体の美術など・・・。このあたりは、成瀬巳喜男監督、高峰秀子主演『放浪記』の中古智の美術を思い出しましたよ。(あと、石原さとみの煙草屋もよい!)

ちなみに、この映画の美術監督今村力氏は、わたしの大好きな映画、森田芳光監督、夏目漱石原作の『それから』も担当したひとで、久々の大当たりなんじゃないのかな?

ただ、一点だけいうなら、主人公が少年時代を過ごす青森の豪邸。

わたしは太宰の生家「斜陽館」に行ったことがあるので、映画のなかの白い豪邸には違和感が残りました。「斜陽館」とはだいぶ感じが違いますからね~。

役者では、主人公が一緒に心中する女給の寺島しのぶ、酒場のマダムの大楠道代がさすがの存在感あり。伊勢谷友介は変に真面目に頑張りすぎで、太宰作品に出てくるいい加減な男とはちょっとタイプが違うな~。三田佳子は退廃的な役が私生活を思わせて痛々しい~。

というわけで、美術に限らずスタッフワークの素晴らしさで見せているプロの映画ながら、脚本、監督に問題ありだなあ~というのが、偽らざる感想なのでした。

でも、生田斗真のファンには関係ないやね?!

PS:因みに、ひさびさに原作も読み返したんですが、集英社版の文庫の太田治子さんの解説が面白かった!角川さんには悪いけど、わたしはこっちをオススメ。

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