切られお富!

歌舞伎から時事ネタまで、世知辛い世の中に毒を撒き散らす!

『この世の全部を敵に回して』 白石一文 著

2012-04-19 21:52:41 | 超読書日記
「買ったっきり読んでなかった」シリーズ。文庫版の帯が川上弘美だったんで、読んでみる事にしました。わたしが持っているのはモチロン最初の単行本の方。しかし、ネ…。というわけで、簡単な感想っ。

久々に読み終えるのが心底辛かった本。

53歳で死んだおっさんの手記で、現代版「人間失格」というふれこみだったんですが、まあ、つまらなかった!

要するに、タイトルに偽りありで、全然邪悪でもなんでもないところが物足りない。本音といっても、あんまり賢くない保守系オヤジの俗論って感じで、いやはやどうも…。

特に気になったのが、裁判制度や精神鑑定に関するくだりで、刑法の心神耗弱に関する規定とその実際とか、裁判における精神鑑定の実態をわからずに書いているんだと思います。つまり、「俗情との結託」そのものだから、全然本音を突かれた印象にはならない。

白石一文って、愚直なまでのストレートさが売りの作家で、たぶん島田雅彦みたいな皮肉屋の作家はこの人みたいな芸風が大嫌いだと思うんだけど、ロッキング・オン関係者にはやけに評価が高いですよね~。

以前、このブログでも感想を書いた大江健三郎本人のパロディみたいな小説(『草にすわる』って本に入ってる「砂の城」ってやつネ!)は、思い切りの良さで少し評価できたけど、これはちょっとなあ~。

邪悪っぽい売りで全然邪悪っぽくない小説のパターンだと、ドストエフスキーの『悪霊』みたいな作品が頂点(?)にあるけど、小説で世界に対する悪意って、なかなか書けそうで書けないんじゃないですかね。だって、だいたい肩透かしで終わるもの。マンガの方が悪意を描けてる気がしますけどね~。たとえば、『ワールド・イズ・マイン』(新井英樹)とか『ヘルター・スケルター』(岡崎京子)あたり。

というわけで、個人的には大バツの作品でした。

ついでに言っておくと、最後の日和った感じもさらによくない!

この世の全部を敵に回して
クリエーター情報なし
小学館


ドキュメント 精神鑑定 (新書y)
クリエーター情報なし
洋泉社


真説 ザ・ワールド・イズ・マイン (1)巻 (ビームコミックス)
クリエーター情報なし
エンターブレイン


ヘルタースケルター (Feelコミックス)
クリエーター情報なし
祥伝社


悪霊 (下巻) (新潮文庫)
クリエーター情報なし
新潮社
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