切られお富!

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幸四郎の髪結新三!?

2006-08-13 07:44:49 | かぶき讃(トピックス)
十月の歌舞伎座の演目を見て驚いた!幸四郎が髪結新三?しかし、最近ニンにない役ばっかりやるなあ(笑)。幸四郎って黙阿弥物合ってないと思うんだけど・・・。

家主長兵衛が弥十郎というのも、「ウ~ん」って感じなんだけど、ここのところの幸四郎って、自分を見失ってるんじゃないかな?

河内山にしても盲長屋や魚屋宗五郎にしても、幸四郎の黙阿弥物って、台詞が全然気持ちよくない。黙阿弥物の悪漢たちって凛としてスキッしてるものなんだけど、幸四郎がやると、下卑た悪党って感じになってしまって、どうにも私の好みではなくなる。

原因は、幸四郎の過剰に心理主義的な芝居にあると思うんだけど、彼の巧妙な芝居で心理を表現すればするほど、主人公たちがじつに小賢しく見えてくるんですよね。これはあくまで私見だけど、黙阿弥の世話物って、リアリズムというよりイタリア・オペラ的な音楽性や鷹揚さが特徴なんだと思う。

幸四郎的心理主義リアリズムが反作用的に効果があるのは、むしろ鶴屋南北のほうで、南北的なエロ・グロのセンスが、幸四郎のミニマリズム的芝居で、かえってグロさを増すところがあって、近年だと「盟三五大切」なんかは、よかったんですけどね。

本来、義太夫物なんかがこの人向けだったんだろうけど、正直このひとの熊谷陣屋は、心理がうるさくて、どうも苦手。吉右衛門、仁左衛門の気持ちよさ、センチメンタルさや團十郎の異形の仮面のような舞台に比べると、わたしには小利口にまとまり過ぎているという感じがしてしょうがない。(父・白鸚の場合は、地声が大きい、豪傑、英傑という感じだったけど。)

では、幸四郎で観たい芝居は何のなのか?わたし的にははなはだ難問ですが(笑)、じつは近松物なんかがいいんだと思う。息子の染五郎が結構やっているんだけど、二代目鴈治郎のリアリズムを継ぐくらいの勢いで、関東の近松物をやったらどうなんですかね?

あとは、時蔵、梅玉といっしょに、江戸版和事芝居に挑戦してみるか?でも、粋な芝居にならずに喜劇にしちゃうんだろうな~。

というわけで、ある意味十月楽しみになってきちゃったな。感想の書き甲斐ある感じで!!

歌舞伎座十月の配役

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