昨晩はETV特集「 『斜陽』への旅 ~太宰治と太田静子の真実~」を観ました。なかなか興味深かったですね。しかし…。太宰って酷いオトコだな~。
ご多分に漏れず、わたしが太宰治にはまっていたのは、すっごく若い頃まで。
とにかく、文章が巧くて、書き出しで引き込まれるでしょ?
でも、年をとるにしたがい、その思想、哲学のなさが物足りなくなり、いつのまにやら<わたしの好きな作家ランキング>の圏外へと消えていった…。
もちろん、いまになって思えば、すべての作家が思想・哲学を語らなくてもよいわけで、坂口安吾が太宰を評していった「人間通」の文学だってあっていい。
でも、難しいことを考えたい年頃だと魅力が失せてしまう作家だって印象は、いまだに拭いがたくありますね~。(皆さま、いかがですか?)
さて、番組の方。よく知られているように作品『斜陽』には元になった個人の日記というのがあって、その筆者が太宰の愛人だった太田静子さんという女性。そして、ふたりの間の娘・治子さんが太宰と母との関係を語るという内容の番組でした。(鼻筋がとてもお父さん似でいらしゃる。)
で、素直な感想としては、「太宰って悪いオトコだな~」って感じですか…。
要するに、作品『斜陽』のために静子さんを犠牲にしたとしか取れない感じがあるんですよね~。特に、彼女の日記ほしさに…。
このあたり、わたしは菊池寛の『藤十郎の恋』という小説を思い出してしまいました。
この小説では、初代坂田藤十郎は芸のために人妻を口説いてみせるわけですけど、庶民とは相容れない芸術至上主義者のなかの魔性みたいなものが、『斜陽』創作秘話にもあったんだあ~、というあたりが、とっても痛い感じ…。
もちろん、太宰にとっても小説『斜陽』の構想には期するものがあったはずですが、それにしたって、静子さんと太宰との最後の対面なんて、二人きりでは会おうとしないわけですから、「オトコとしてどうなの?」って、わたしは思ってしまいましたね~。
(もっとも、そのときには心中することになる山崎富栄と付き合ってたわけでしょ?)
ただ、やっぱり、太宰が彼女に送った手紙なんて、なかなか思わせぶりなプレイボーイぶりだし、最初に二人だけであったときの太宰のお洒落ぶりなんて、<石田純一的>にも思えたりしますよね~。
というようなわけで、久々に『斜陽』を読み返してみようかな?
因みに、わたし、『斜陽』って小説はどうもむかしから苦手で、ヒロインの自意識がちょっとダメだったんですけれど、印象変わるかな…。(なにしろ、今となっては、わたし、静子さんの方の味方ですからね~、心情的に。)
なお、わたしの好きな太宰作品は、『ダス・ゲマイネ』、『雌について』、『猿面冠者』など、初期の作品に限られます。まあ、『フォスフォレッセンス』というのもちょっと好きだけど…。
PS:番組では出てこなかったけど、太宰の死後の太田親子にたいする扱いって酷かったみたいですね。井伏鱒二のやったこととか…。
それと、作家の津島祐子(太宰の次女で、本名は里子。)と太田治子さんが同い年だということにも後で気づきました。やっぱ、太宰、悪い奴だよ!
なお、太宰が次女に「里子」という名前を付けたのは、「義経千本桜」の鮨屋の段、「お里」にちなんだもの。長女の園子さん(先ごろ引退した政治家津島雄二氏夫人)の名前も、ひょっとしたら「艶容女舞衣」酒屋の段の「お園」からきてるんじゃないのかな?
太宰は学生時代に娘義太夫の師匠に習っていて、文楽、歌舞伎にも詳しかったらしいですからね。(こういうコネタはこのブログっぽいでしょ?!)
たしか、『晩年』のなかの作品に、「歌舞伎座の幕見で六代目菊五郎の白井権八を見た」というくだりがでてきます。興味のある方は探してみてはいかが!
・「『斜陽』への旅 ~太宰治と太田静子の真実~」(公式HP)
ご多分に漏れず、わたしが太宰治にはまっていたのは、すっごく若い頃まで。
とにかく、文章が巧くて、書き出しで引き込まれるでしょ?
でも、年をとるにしたがい、その思想、哲学のなさが物足りなくなり、いつのまにやら<わたしの好きな作家ランキング>の圏外へと消えていった…。
もちろん、いまになって思えば、すべての作家が思想・哲学を語らなくてもよいわけで、坂口安吾が太宰を評していった「人間通」の文学だってあっていい。
でも、難しいことを考えたい年頃だと魅力が失せてしまう作家だって印象は、いまだに拭いがたくありますね~。(皆さま、いかがですか?)
さて、番組の方。よく知られているように作品『斜陽』には元になった個人の日記というのがあって、その筆者が太宰の愛人だった太田静子さんという女性。そして、ふたりの間の娘・治子さんが太宰と母との関係を語るという内容の番組でした。(鼻筋がとてもお父さん似でいらしゃる。)
で、素直な感想としては、「太宰って悪いオトコだな~」って感じですか…。
要するに、作品『斜陽』のために静子さんを犠牲にしたとしか取れない感じがあるんですよね~。特に、彼女の日記ほしさに…。
このあたり、わたしは菊池寛の『藤十郎の恋』という小説を思い出してしまいました。
この小説では、初代坂田藤十郎は芸のために人妻を口説いてみせるわけですけど、庶民とは相容れない芸術至上主義者のなかの魔性みたいなものが、『斜陽』創作秘話にもあったんだあ~、というあたりが、とっても痛い感じ…。
もちろん、太宰にとっても小説『斜陽』の構想には期するものがあったはずですが、それにしたって、静子さんと太宰との最後の対面なんて、二人きりでは会おうとしないわけですから、「オトコとしてどうなの?」って、わたしは思ってしまいましたね~。
(もっとも、そのときには心中することになる山崎富栄と付き合ってたわけでしょ?)
ただ、やっぱり、太宰が彼女に送った手紙なんて、なかなか思わせぶりなプレイボーイぶりだし、最初に二人だけであったときの太宰のお洒落ぶりなんて、<石田純一的>にも思えたりしますよね~。
というようなわけで、久々に『斜陽』を読み返してみようかな?
因みに、わたし、『斜陽』って小説はどうもむかしから苦手で、ヒロインの自意識がちょっとダメだったんですけれど、印象変わるかな…。(なにしろ、今となっては、わたし、静子さんの方の味方ですからね~、心情的に。)
なお、わたしの好きな太宰作品は、『ダス・ゲマイネ』、『雌について』、『猿面冠者』など、初期の作品に限られます。まあ、『フォスフォレッセンス』というのもちょっと好きだけど…。
PS:番組では出てこなかったけど、太宰の死後の太田親子にたいする扱いって酷かったみたいですね。井伏鱒二のやったこととか…。
それと、作家の津島祐子(太宰の次女で、本名は里子。)と太田治子さんが同い年だということにも後で気づきました。やっぱ、太宰、悪い奴だよ!
なお、太宰が次女に「里子」という名前を付けたのは、「義経千本桜」の鮨屋の段、「お里」にちなんだもの。長女の園子さん(先ごろ引退した政治家津島雄二氏夫人)の名前も、ひょっとしたら「艶容女舞衣」酒屋の段の「お園」からきてるんじゃないのかな?
太宰は学生時代に娘義太夫の師匠に習っていて、文楽、歌舞伎にも詳しかったらしいですからね。(こういうコネタはこのブログっぽいでしょ?!)
たしか、『晩年』のなかの作品に、「歌舞伎座の幕見で六代目菊五郎の白井権八を見た」というくだりがでてきます。興味のある方は探してみてはいかが!
・「『斜陽』への旅 ~太宰治と太田静子の真実~」(公式HP)
斜陽 (新潮文庫)太宰 治新潮社このアイテムの詳細を見る |
斜陽日記 (小学館文庫)太田 静子小学館このアイテムの詳細を見る |
太宰=「卓越したユーモア作家」って、まったく同感なんですが、学生時代、太宰の話になると、みんな新潮文庫の奥野健男の解説そのまんまの「滅亡の民」みたいなパターンで語るんですよね~。
結局、文庫の解説を読んで分かった気になるのなら、本を読むのは有害なんじゃないかとさえ思いましたね。自分の尺度で読めなければ、読書なんて意味ないですものね。
それと、太田光が「太宰では『右大臣実朝』がよい」といってるらしいので、そのうち読み直してみようかと。でも、中期以降の太宰が書くと、みんな偽キリストみたいになっちゃうんですよね。そのあたりが、わたしはちょっと苦手…