憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

―アマロ― 22  白蛇抄第15話

2022-09-07 07:37:17 | ―アマロ―  白蛇抄第15話

「アマロ・・・」
ジニーは呟く。
事実を話せば・・・
アマロはあるいは、リカルドの手におちることを
承諾するだろう。
だけど・・・。
それは、裏を返せば
アマロの裏切りに成る。
何も知らせずにおけば、
何も知らず脅しと策略に載せられたアマロでしかない。
それとも、
何もかも承知してあえて、ロァを裏切る・・・。
「ううん・・」
そんなアマロにさせたくは無い。
愛する人間を裏切る痛み
愛する心を裏切る痛み
それは、ジニーが一番良くわかっている。
アマロには・・・、
ロァを裏切って欲しくない。
自分の代わりというわけじゃないけれど
アマロには・・・。
考えめぐらした末の想いにジニーは笑いだした。
「ロァをうらぎってほしくない?
あはは・・・、
このあたしが、アマロをリカルドになげおとそうっていうのに?」
問題はアマロの心の介在の仕方だけでしかない。
「アマロは・・・あたしをにくむだろうな・・」
悲しい覚悟を付け直すと
アマロがロァに密告できなくなる、
事実を口の中で唱えなおしていた。
「ロァは自分の女が他の男にだかれたと知ったら、赦さない。
たとえ、どんな理由があろうと・・・
アマロ・・も・・リカルド・・も・・・あたし・・もね・・」
たった一言漏らせば、なにもかも、失墜してゆく。
命という飛空から・・・失速はあっという間の鼓動の停止
全てが無にかえる失墜。
「あるいは・・あたしも、命をかけて・・こんなこと、
やってんだよ」
アマロに憎まれたくない自分の本音に
ジニーはもう一度笑った。
「あたしも・・まだ、かわいいところが、あるじゃない」
笑った顔がひきつり、
喉の奥に湧き上がってくるアマロへの侘び言をこらえるため・・
ジニーは自分に言い聞かせる。
「あんたは・・いいじゃない。
どんなにリカルドによごされようと、
それでも、
それでも、
あんたには、ロァがいるじゃない・・・」
だから・・そのロァを悲しい淵にたたせちゃいけないから、
殺すほど、アマロを憎む悲しみを貫かせちゃいけないから
「いいから・・だまっておいで・・
こんなことは、なんでもないことさ・・。
そうさ・・・なんでもない・・・」
そう念じ続けて、あたしも他の女もいきぬいてきてるんだ。
「あんただって、
できないわけないことだろ?」
膝の中に伏せた顔があがるまで、
ジニーは涙をしぼりつくすんだ。
そして・・顔をあげるのは・・・悪魔のジニー・・・。
「それで・・
あのこが助かるなら・・・それでいい」



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