憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

拘束 ー終ー (犬夜叉 二次小説)

2022-11-27 11:05:07 | 拘束(蛮骨×蛇骨)

「兄貴・・・」
負けると判っていても、それでも、犬に立ち向かおうとする。あんたは充分自分を信じようとしているじゃないか?
何で、そういって自分を許してやらない。
なんで、そういって自分を庇ってやらない。
「いつか、お前、いってたな?」
蛇骨を抱いた手をきつくすると蛮骨はその耳元で囁いた。
「抱いてやる」
蛇骨はうなづいた。
頷いた顎に伝う雫を拭い取りながら蛮骨はいつかと同じように訊ねた。
「何で・・泣く?」
「俺は・・兄貴の・・・」
兄貴の「護る者」になりえないのか?
成りえれば「勝てる」蛮骨を作りえるだろうに、何の役にも立てず・・・。
「来いよ」
相変わらず扇情的な蛮骨の物が惜しみなく外気に晒されると、蛇骨のその場所をその物で弄る。
蛇骨に緩やかな滴りが滲み出すのは、蛮骨を迎え入れたい一心がさせる。
「ここ・・・」
そう、ここ。
この場所でこの部分で蛮骨と蛇骨は「二人」になる。
「俺を宥めてくれ」
死ぬことなぞ何も怖くない。
ただ、ただ、負ける。それだけが怖い。
負ける事を信じるしかない自分が怖い。
「蛮・・骨・・兄・・貴」
情恋の炎が蛇骨を狂わせる。
「兄貴・・あにき・・」
炎に煽られた猛りをなんども呼び返す。
いっそこのまま。
いっそ、このまま、恋虐につながれたまま。
いっそ、しんでしまいたい。
蛇骨の心の叫び声が蛮骨にとどいたとしかおもえない。
「生きろ・・・いいな。おまえは、いきろ」
快さにおぼれながら、蛇骨ははじめて、蛮骨をしる。
―俺にとって、この人は俺の「護る者」になっちまってるー
生きてゆく事をこの蛇骨に望む、あんたなら、あんたのいうとおりにする。
だけど、その前にこの一時を、あんたを、蛇骨に刻み込ませておくれ。

「ほしかったんだろうが?」
存分におぼれりゃいいんだと蛮骨はいう。
瞳の底の奥。覗き込まれりゃ、愛しさがあふれだしてくる。
そうさ。
まってたんだ。
ずっと、ずっと、あんたをまってたんだ。
洞を穿つ動きは蛇骨を陶酔の高みに運び入れる。
「ああ、もう、いつしんでもいい・・・」
漏らした言葉は快さの極地のせい。
「俺がか?おまえがか?」
いじわるくいった蛮骨にのぞきこまれた瞳に
「もう悔いはない」
と、蛇骨は答えた。
そう、思い残す事は何もない。
いつ、しんだっていい。いっそ、いま。このまま。
「二人」が死んだ朝。
どっちが一人で死のうと、
「あんたと俺」が生きた時が終る今
どっちがさきに死んだってかまわしない。
だけど、この胸に刻みつけられたあんたへの愛しさだけは誰もこわすことができない。
愛しさは一人ぼっちでもずっといきてゆく。
だから、この身体に忘れられないあんたの欲情をしみつけておくれ。
もう、ほんのすこしだけ、あんたを抱きしめていきてゆく。
そして。
あんたが先に行って待ってる場所に、
『すぐいくさ』

濃すぎる時の中に身をうずめつくし、ただ、ただ、蛇骨だけの蛮骨をうけとめたかった。
明日。蛮骨をうしなうとも、今は確かに二人。
「兄貴・・しってたかい?」
なんだ?と蛮骨が笑った。
「俺はずっと前から・・兄貴にほの字だったんだぜ」
小さなてれをみせた、蛇骨だった。
「しっていた」
そして、
「お前だから・・許せる」
欲情のままの振る舞いを許す事が出来る蛇骨への思いにもう少し早く気がついていれば、蛮骨は自分を信じれたのかもしれない。
だけど、いまさら。
終焉の扉を開いた今。
引き返す事はできない。
せめて。
蛇骨に与えられる生きている証しを蛇骨とわかちあう。
それだけが、蛇骨に答えてやれるすべてだった。
だから、蛮骨はあたえる。
その扇情を穿つ蠢きをするどくして、
蛇骨の中に己を刻み付ける。
蛇骨を捕らえ、蛮骨を捕らえた二人の時が飛空し、
今、二人は確かに、一つの頂点を迎えた。
                       ―終―



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