憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

陸路   奴奈宣破姫・20

2022-12-05 22:53:41 | 奴奈宣破姫

海流にのった船が糸魚川にたどりつくのは易かった。
が、それが、いっそう、にぎはやひを不安にさせていた。

船の中でなんども、アマテラスの船がおいついてきはしないか
艫に立った。


アマテラスはすぐにでも、奴奈川にせめいってくることだろう。
同じように海流にのれば、にぎはやひがぬながわひめの元に
たどりつくまえに一戦、まじえることになるかもしれない。

敵は統率がとれているばかりでない、
日の神を擁立している。
覇気はいっそう高まる。

日食以降、奴奈川一族しか、アマテラスに反旗をひるがえすものもいないだろう。

誰もがおのが身が大事に決まっている。

孤立無援。
こんな状態で奴奈川までたどりつけるのか。

並ぶ住まいの中人もスサノオやおおなもちの恩義に背を向けるすまなさで、見ぬふりで通してくれてはいたが

アマテラスの軍勢がはいってくれば、忠誠をみせるため、
とたん、にぎはやひの敵になる。

おそらくの疑心暗鬼でしかないのかもしれない。

ふと、にぎはやひはたちどまった。


「鏡をここに」
にぎはやひは、ここでも、敵意はないと鏡をかかげるしかなかった。

覚悟 にぎはやひは、船を下りるときに
兵をふたつにわけた。

アマテラスが海路をえらんだ時を考え
上陸を阻むための兵と

白山をぬけ、山越えで奴奈川にはいった時、
迎え撃つ兵と。

だが、四十人あまりの兵をふたつにわけ、
奴奈川をめざすと、
要所要所に伝令役の兵士を置いてきたのだから
その数も十と六。


奴奈川にはいったら、同時に大和の地にむけて
援軍を要請する馬を走らせる。

山越えでせめいってくるなら
船に残った兵の召集も大和の地から援軍到着も
十分に猶予がある。

だが、船だとすると・・。

あの少数では、わずかに行軍を遅らせるだけ。

先に上陸したものが、地の利をえて
どれだけ、時をかせげるか。

残し置いた兵がアマテラス上陸の伝令をもってくるかもしれぬ。

先を急ぐべきか、戦いに有利な地形にて、とどまるべきか。
せまりくる川岸の斜崖をみあげながら
なんどか、やりすごした。

やがて、奴奈川が本流一本になり
ぬながわひめへの加勢にて、士気を鼓吹するべきだと
にぎはやひの思いも一本になっていた。

突然、
熊笹が生い茂る山の端から、竹槍をかまえた
領民がとびだしてくると
にぎはやひに竹槍をつきつけ取り囲んだ。



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