憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

拘束 ー1ー (犬夜叉 二次小説)

2022-11-27 11:12:14 | 拘束(蛮骨×蛇骨)

「ちっ」
口の中の小さな舌打ちだけが、今見たことを忘却の向こうに流しさることを拒む。
蛮骨は木陰の戯れが静まり一つの影が二つに分かれてゆくのを待った。
樫の木にもたれかかり、いつまでも滑らかな快さの余韻に浸っているのは、蛇骨  と 睡骨   である。
 寄る辺の無い愛は無性に「誰か」をほしがる。
蛮骨とて、判りすぎている寂寞である。
「かといって、何も・・・」
仲間内に「誰か」を求めなくても、良かろうと呟く言葉を飲み込んだ。
同じ結束。この仲間しか信じられない。
だからこそ、いっそう愛は寄る辺をなくす。
潰れそうに歪んだ物狂おしさは、油断を見計い欲望を捌け口にする。
仲間を捌け口にすることをけしてせめることはできない。
なぜなら、
委細。蛮骨はあんな半妖の男が気になってしかたがない。
敵であり、命を狙う相手の筈である。
しつこく付回し、動向を探る内、あの男に、自分に無い、焦がれる物を見出している自分にきがついた。
それは邪気のない明るさという単純な物ではない。
一途に自分を信じてゆける底が抜けるような強かさは蛮骨がどんなに願っても持ち得ない。
結局、『俺は誰もしんじないのかもしれない』
蛮骨は木陰の塊が不意にうらやましく、おもえた。
寂寞の捌け口をぶつける事もぶつけられる事も合意の上で重なる事を許しあえるなら、せめてもそれだけは信じあえているといえる。
誰をも求める事すら出来ない蛮骨こそ寂寞だけでしかないかと、皮肉に自分を笑ったとき、長い抱擁で名残りを惜しんだ影がやっと二つにわかれた。
蛮骨は歩み寄ってくる一つの影を待った。

「蛮骨兄貴・・か」
蛮骨とて蛇骨を待ち受けていたわけではない。
泉で喉を潤すに樫の根方の前をとおるしかない。
しばしの芳醇の時を分かち合う二人の邪魔をする気になれなかっただけに過ぎない。
「ずっと?」
蛇骨は小首を傾げた。
ずっと俺たち二人のいざなぎ事をみていたのか?
問われた蛮骨も、またかすかに首をかしげた。
みていたわけではない。
だが、目の中に二人の虚実を映していたのは事実である。
「たのしそうだったな」
蛮骨の答えは見ていた事を認める事になる。
「ふん?」
心のそこで男同士の結びを馬鹿にしている。
巡り合う異性が無い男は仕方なく同性で己の欲情をまぎらわす。蛮骨の底はあわれみだけでしかない。
「ふうん」
お高くも欲望という希求を認められない男はさぞかしどれだけ潔癖である事だろう。
「あんたのここは、役にたちゃしないんじゃないかい?」
いいざまに蛇骨は蛮骨の股間に手をのばした。
いずれにしろ、思い切りあざけるつもりだった。
恐ろしく子供のように萎えた物なら
高らかに笑い通り過ぎるつもりだった。
着飾った見栄と体裁にたがう膨らむ物なら、もっと嘲り笑える。その為に手を伸ばした蛇骨の手に触れたものに思わぬ嗜好がくすぶった。
「男は嫌いじゃないようだね?」
睡骨に宥められ、沈みかえった筈の欲望に再び火がつけられる自分がおかしく思える。
「身体は考えとべつのところにいるものさ」
蛮骨は膨らむ欲望を心と別区立ての所に居ると答えた。
「勝手にふくらんじまったのかい?」
「ああ・・・」
けだるそうに答えた蛮骨に
「だったら、それを俺がかってに始末するのも自由だな?」
確かめるより先に蛇骨の手は蛮骨の腰を絞る紐をとくと、膨らむ物を外の空気にさらけ出せるのを惜しむように口の中にふくみかくした。
「どうするきだ?」
「あんたの心なんかどうでもいいさ。こいつがこんなに切ないのをどうにかしてやりたいだけさ」
答える事が叶う口の空白が蛮骨の物を包み込ませる物がなくしている事になるのが哀れだとばかりにさっきまで睡骨の物を飲み込んでいた部分が変わりに蛮骨の物を包み込んでいた。
どうにかしてやりたいだけのはずの蛇骨の喉から切ない声が上がってくるのを見詰めながら蛮骨は勝手に吐き出しちまった欲望がくれる虚しさと引き換えに一層結びつく事の無い「あいつ」を思い返していた。




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