憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

ー悪童丸ー   1   白蛇抄第2話

2022-12-04 13:49:05 | ー悪童丸ー   白蛇抄第2話

政勝が城の門を潜ると、白河澄明(とうみょう)が居た。
政勝に気が付くと、澄明はずううっと側に寄って来た。
「妖かしの者なぞに情をかけて・・・
かのと様と百日は交わりをなさらぬように」
と、声を潜めた。
政勝は内心澄明を疎んじている。
陰陽師である事も一つであったが、
かのととの婚礼の席で見せた澄明の目付き。
かのとに寄せる想いが尋常のもので無い事が手に取る様に伝わってきた。
故に、更に気に入らないのである。
澄明に答えようとせず、政勝は引き結んだ口を
更に、堅く閉めると澄明の横を黙って通り過ぎようとした。
「なにとぞ、お忘れなき様に、心に御念じ下さいませ」
政勝はそっぽ向くと、足を早めて通り過ぎた。
『忌ま忌ましい。陰陽師風情とこんな所で顔を合わせるとは』
出達の命が下り出向いた先で、あろうことか、政勝は蟷螂の化身に誑かされた。
それを、澄明が読み見透かしているのは間違いない事だった。
が、政勝は采女と一夜を交わした事をかのとへの裏切りとは考えていなかった。
むしろ「据え膳食わぬは男の恥じ」ではないか?
どこかで、采女が妖かしの者ではあっても、女から男として渇望された事に
おおいなる自慢が湧いて来るのも事実であった。
が、澄明はそうとは考えていないようである。
己がかのとを妻に迎えられなかった事で、政勝に対してやっかむのであろう。
自分なら、かのとを裏切りはしない。が、政勝はその非を悔いる事もなく、
当然の権利の様に、妖かしの身の者を抱いたその身体で同等にかのとを抱く。
澄明はそれを赦せないが為、とうとう口火を切ったのであろう。
『女々しい。小賢しい物言いなぞせず、はっきり言えば良いものを』
男として澄明を量ってみた時、凡そ、澄明は男としての魅力に欠けている。
かのとへの燻った恋慕に加え、かのとを奪い尽くす政勝に男としても勝てないとなると、
余計に女々しいやっかみを燻らせているに違いなかった。
祝言の席で、澄明は食い入るような目でかのとを見ていた。
あまつさえ、その瞳の端に潤んだ物が在った。
横恋慕の末の言葉かと思うとふっと、かのとの顔が浮かんだ。
昨夜は帰宅すると、泥のように眠りこけて言葉ひとつまともに懸けていなかった。
人の勧めで承諾した婚儀だったが、やってきた花嫁に政勝の目も心も奪われた。
夜も初々しい。
恥じる様に、慄くように小さな声を漏らすと、かのとは、政勝のものになった。
それから、三月。まだまだ、政勝のかのとに対する執着は深まって行く一方だった。
そんな、矢先の旅先での出来事だった。
男の本能でしかない、政勝はすんなり割り切っている。
―――が、それより、今宵こそかのとを…。
この三月の間に、かのとは少しずつ女を開花させている。乳を吸うとかのとが、
小さな声をあげて喜ぶ。そして、まさぐるように…
『いやいや』
政勝は自分の中の思いを慌ててかき消すと城の中に入った。

 

ー悪童丸ー   白蛇抄第2話

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