憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

小枝・・11

2022-12-11 09:59:04 | 小枝

文治はマタギである。

マタギが獲物を狩るときは、
まず、めどうとする獲物のすまう
地形をつぶさに把握する事から始める。
そののちに獲物の行動をじっくりと
量りこむ。

あわてて、獲物を狩りだそうとはやる気持のままに動けば
獲物を取り逃がし行方をうしなう事もある。

一度、マタギの難を逃れた獣は
嫌に成る程臆病で、敏感になり、
マタギの気配を感で知るようになる。
殺気を気取りだした獲物を
追い込むことほど
危険な事は無い。

逃げ足は速いくせに
ひとたび追い詰められると
捨て身でマタギに向かってくる。

獲物が大きければ大きいほど
この危うさも大きくなる。

ひとたび、マタギにてむかい出した獣は
命ぎりぎりの覚悟をもちながら、いっそう用心深く逃げ惑う。

こうなったら、この土地での猟はいったん
撤収をよぎなくされる。

文治は狙った獲物を逃さないために
周到に地形をはかり
獲物の行動を把握する。
これがマタギに身についた倣いである。

そして、
安全に確実に獲物を手中に収めるためには、
文治のこのたびの
獲物には「親」というやっかいな護りがいた。

文治は「親」が子から目を離し、
子の傍らから離れてしまうのを待った。

そして、獲物に狙いをつけた、数日後のことである。

今日の「親」は朝早くから炭俵を積み込んだ荷車を引き
山を下っていった。

機がめぐってきた事を知った
文治は「親」の護りのなくなった、獲物に
にじりよってゆくだけである。



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