男の気配が嘘のように消えた。
立ち尽くしていた小枝の足は
力を放出し、
身体を貫いた感覚が小枝を
地面に立たせていることをゆるさなかった。
赤子のように這い蹲り小枝は家の中に入った。
かまちに腰をかけ、板の間にあがろうとするのもようようであるが、
小枝の思いは
時を止め
先の甘い余韻を追う。
ぬめる男の舌は
ねばりこく、小枝の口中をさまよい
胸の先をつまみあげられた。
その心地は、小枝がいままで味わった事の無い幻惑をともない、
そして・・・。
小枝の女の部分は男にあっさりふれられていた。
その先・・・どうなるのだろう?
あの時考えもしなかった思いが湧いてくる。
おそらく、
男のくれる陶酔におぼれていたままであれば、小枝は
こんなことも考えず
男によって、その先をみちびかれていたことであろう。
だけど・・・その先どうなるのだろう?
初めて会った『男』という生き物に
小枝の中の「女」がはじきだされてゆく。
その先・・・。
それはこわくもある。
だが、男の厚い胸板にもう一度
いだかれてみたいと思う小枝が居る。
おとっつあんは
マタギをきらっているけれど・・。
小枝は
・・・・。
きらいになれそうもない。
文治がふれた、小さな突起にてをのばして、
小枝は
そっと文治がくれたものをしのんでみた。
「あっ・・」
自分のその場所がかくも鋭敏であったことを
小枝は改めて知る事になる。
そして、
小枝の中で湧き上がる思いも・・。
「文治さん・・・?
本当にまた、きてくれるんかね?
小枝は・・・」
初めて会った男であるのに、
文治が恋しいと
小枝は思った。
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