憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

邪宗の双神・40   白蛇抄第6話

2022-12-22 11:13:27 | 邪宗の双神   白蛇抄第6話

かのとが目覚るまで、見届けるという黒龍を捨て置くと
八代神は波陀羅の手を引いて外に歩みだした。
「やれやれ・・・朝から仏様を拝まんですんだ」
庭先に出ると八代神は波陀羅を振り返った。
「八代神。我はこの先どうすればよい?」
「そうじゃの。伽羅にも言われておったろう?
比佐乃に母親の思いを伝うる者はお前しかおるまい?」
「双神が所にいっても、比佐乃の、一樹の、魂はもう、元には戻らんのか?」
「一樹はどの道死ぬる。魂を元に戻したとて因縁は消えぬ」
「比佐乃は・・・・」
「これ以上、双神の贄にされぬように伽羅の言うたように澄明を頼ってみぬか?」
波陀羅は何度か言われる内に不思議な事に気がついていた。
「何故に伽羅の言うた事をしっておる?」
「いうたろう?元親じゃ。御前の反古界なぞ親の前では役に立たん」
「な、ならば?あの、双神に魂をいれたのも貴方だという事に・・・」
「いや、あれらは、元はそうじゃがの。
ある事があって魂がしゃかれて、別区だての者が出来上がってしもうておる。
わしでは救うてやれん。
波陀羅・・・。笑うがいい。わしはあれらが憐れで憐れでならん。
お前らを不幸に付き陥れなければ生き越す事ができん。
こんな憐れな生き様は無い。其れ故に、わしは救うてやりたい」
「我の方がなんぼか幸せじゃと?」
「お前には子が居る。やがて婆になる。
無垢な魂を汚さぬ様に守ってやれる幸があろう?」
「そう・・・じゃな」
「わしはの、澄明を宛てにしておる。
あれなら、双神を救い出せるのではないかとついぞ、思うてしまう。
不思議な女子じゃに。
ほ、要らぬ事をくちばしってしもうた」
頭をくるくると撫でると
「成るに任せるしかない。本来は、我等はそれだけしかない」
呟く声が残ると八代神の姿はもう、波陀羅の前に無かった。
双神の元の正体を知っている八代神とて、救えぬと言う双神を
澄明なら救えるかもしれぬという言葉を波陀羅は頭の中で繰返していた。
其れはあるいは、双神を救えば
一樹と比佐乃の魂をも救えるという事を言おうとしていたのではないかと
波陀羅は考えていた。
政勝の屋敷を抜けると、
波陀羅は今一度双神の元に行く為に森羅山を目指していた。

 



最新の画像もっと見る

コメントを投稿