白銅と法祥は、京にむかう。
おそらく、舟で大津ちかくまでいくだろう。
旅支度も手慣れたもので、ささと、整えると
銭をくれと、白銅が手を差し出す。
戸袋にあるといいおくと
澄明もまた、家を出た。
行き先はすでに決まっている。
九十九善嬉 白虎を祀る善嬉を尋ねる。
銀狼を手繰る事は出来ないと考えてはいたが
法祥に答えているうちに
見えてきたことがある。
それを、まず、善嬉に尋ね合わせる。
長浜の中心に家を構えたが、良かったと思う。
四神を尋ぬるに、便利である。
端から端まで、歩かなくてよかった。
頭の中で、善嬉に尋ね合わせることをさらえなおしながら
半刻もあるくと、
善嬉の屋敷が見えた。
さっするものがあったとみえ
善嬉が、表でつったって、待っていた。
「女子の足は、亀のようじゃ」
待ちくたびれていたと、ひとくさり、文句をいわれ
家にはいれと促された。
まずは、白虎に礼をする。
祭壇の向こうに白虎の掛け軸がある。
見事な白虎である。
当然、善嬉が描いたものである。
父、白河正眼も、同じく 鳳凰を描いたが
いまひとつ、生気に欠けていた。
「善嬉は・・・・」
言葉が出てこない。画才がありますねは
逆に善嬉をこけにする言葉になる。
「見事です。そこに居るかのようです」
「居るよ」
と、善嬉は答え
「おまえも、そろそろ、鳳凰を描かねばなるまい」
と、謎をかける。
長浜城城主 主膳においては
四方の守りは、
澄明・白銅・善嬉・不知火
と、なっているが
守家では
澄明の父 正眼 鳳凰
白銅の父 雅 青龍
善嬉 白虎
不知火 玄武
と、なっている。
澄明(ひのえ)と 白銅 の婚により
守家の在者と長浜城主の認めとが、変わってしまっている。
こののち、澄明が守家の在者になるだろう。
白銅もまた、同じ。
後を継ぐ者がうまれ、各々の守をまかせるとしても
澄明が鳳凰の儀を、伝えおく必要が有る。
「正眼ももう五十になるかの?
後を継ぐ者に守家をまかせるにしても
その子が二十。正眼は七十。
まさか、そこから、正眼に、鳳凰の儀を教えさす
は、なかろう。
守家に差し出すには差し出せるようにしておくのが筋であろう」
確かにその通りでは有る。
「善嬉こそ、白虎の、守家。後をどうするつもりです」
澄明の問に、なにおか答えると思った善嬉が
ひどく狼狽えた。
「そ・・そのことは、良い。
それよりも、澄明、なにか、仔細があるのだろう」
澄明が善嬉を尋ね来たことを言う。
これ以上、善嬉を、問い詰めると
善嬉も答えに窮する心情があるのだろうと
澄明も、「何か、仔細」を、話すことにした。
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