憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

竈の神・・・9

2022-11-12 19:17:35 | 竈の神  白蛇抄第18話

「この前の銀狼、いえ、いづなの件は解決したのですが

どうやら、新しい銀狼が、でてきたらしいのです」

首領格がいなくなれば、

次の者が台頭してくるのは、自明のことよ、と、善嬉が頷く。

「その銀狼の出現に気づけずにいたところに

法祥と竈の神が、銀狼が出てきたと伝えに来たのです」

法祥は、心中の片割れだった伊予と木乃伊の関藤兵馬に八十姫と重臣孝輔をさらえて、成仏させている。

あの水枯れの騒ぎのあと、八十姫らの塚には、なんの存念もなくなり

善嬉は、おおかたの察しと少しの読みで、法祥の存在は把握していた。

ーだが、竈の神とは・・・ー

それで、浮かぶことはひとまず、置いておき

もう少し、澄明の話を黙って聞くことにした。

「法祥は、都で犬神に憑かれた男をみた、と、伝えに来ました」

それも、法祥自体が、憑かれた通り越しがあるゆえに関わるのだろう、と

善嬉も考え付く。

ーが、やはり 竈の神とは・・・ー

仔細が判らぬでは、考えもつけぬと、善嬉は、まだ、黙っている。

「法祥には、因がある。それは、考え付くのですが

なぜ、竈の神が・・・

天帝・・八代神ですが、そこに、人々の行状を伝える役を担っている

と、巷では言われているのです。

それで、私の銀狼に対する行状を閻魔帳に書き記すということかと思ったのですが、

腑に落ちない。と、思っていたら

竈の神の言い分からは、

銀狼から、一族を救い出せという、八代神の差配があると思えるのです。」

善嬉の顔つきが少し変わった。

と、見えたとき、やっと、口を開いた。

「残念ながら、八代神までは、よめぬぞ」

「判っております。あのようなものを読んだら

善嬉があぶない」

「いや、それは覚悟の上としても、読める相手ではない、と、いうことだ」

八代神の時空の幅も、差配する世界も広すぎる。

「はい。そういうことでなく、

法祥に因があるのに

八代神と竈の神に、なんの因が、あるのだろうかと」

情けでは、なかなか動けぬ惟神の「掟」がある。

それを、情けで変えてしまっては

条理と自然の摂理が狂ってしまう。

ーいったい、なぜ?  なんの因があるというのか?ー

惑いながらやってきたのは、善嬉なら何か知っているかもしれないと思ったからだ・・

が・・・・・

「善嬉?」

呆けた顔の善嬉が澄明の目に留まった。

「あ、いや、おまえ、知らなんだか・・」

なにを知らぬか、これから聞くしかないが

やはり、善嬉は、なにおか、知っている。

澄明は再び、膝をただした。



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