矢嶋武弘・Takehiroの部屋

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外国語と日本語と私

2024年12月04日 05時10分22秒 | 芸術・文化・教育

<2002年7月に書いた記事を、一部修正して復刻します。>

1) 日本人は外国語に弱いと言われる。それは特に、話し方(スピーキング)と聞き方(ヒアリング)においてと言われる。 私は自分の頭(センス)の悪さを棚に上げてそう述べているので、お許し願いたい。 例えば、英語については、中学1年から大学4年まで10年間も勉強したのに、一向に会話(カンバセーション)が上手にならない。
日本人の中には勿論、英会話の上手な人もいるが、大学の英文科を卒業したというのに、ほとんど英語が話せないという人もけっこういる。そういう人達を見ると、私は自分の頭の悪さを放っておいて、なんとなく安心してしまう。

 われわれ高年齢の日本人は、一般的に英語など外国語の会話がどうして下手なのだろうか。 私も何度も英会話に挑戦したが、少しも上手くならず今日に至っている。情けない限りだ。
35年ほど昔のことだが、私が某テレビ局の報道にいた時、たまたま「外務省記者クラブ」の担当を命じられた。「よしっ、やるぞ!」と本当にやる気になって、当時で30万円以上もする英会話習得器械と教材を買って(実は上司に買わされて)、寸暇を惜しんで勉強した。
そして、数カ月経ったある日、アメリカ大使館でレクチャーがあるというので、記者クラブの他社の仲間と大使館へ行き、アメリカ人のレクを聞いた。 ところが、ある程度分かると思っていたのに、そのアメリカ人のレクが速いこともあってか、内容がほとんど理解できないのだ。私はがっかりした。
仕方がないので、私はTBSの記者をしていた秋山豊寛氏(後日、日本で最初の宇宙飛行士になった人)に、レクの内容を詳しく教えてもらって事無きを得た。 彼は国際基督教大学を出ていて、イギリスのBBC放送でも仕事をした経験があるから、英語の実力は大変なものがあった。その後も、よく彼から教えてもらったのである。

2) 私なりに猛勉強しても、英語のヒアリングやスピーキングが上手くいかないというのは、自信を喪失させるものである。私はだんだん英会話の勉強に嫌気がさし、それから逃避するようになっていった。こうなると勉強の意欲も失われ、いつしか“特訓”は終わってしまったのである。
その後も二、三回は英会話に挑戦したが、結局上手くいかず、せいぜい片言の英語が話せる程度で終わっている。 英語だけでなく、高校・大学を通じて学んだフランス語にしても同じである。フランスへ行っても片言しか話せないのだ。
ここで、大いに負け惜しみのつもりで言うと、日本の語学教育というのは、七面倒臭い文法などから始めるから、余計に上手くいかないのではないのか。 外国語を話そうとすると、頭の中にまず文法のことが浮かんできて、思うように舌が回らなくなることが多い。われわれ古い年代の者には、そういうケースが目立つようだ。
もう一つ、これも負け惜しみになるが、英会話などに対して“気恥ずかしい”と思う側面がある。 上手になりたいくせに、外国語をペラペラと話すことに違和感のようなものがあるのだ。これは“潜在意識”の中にあると言ってよい。こういう意識がある限り、語学は決して上達しないだろう。
古い世代の語学教育などは、もう絶望的だ。 屈折した心理を持たず、伸び伸びした若い世代に期待するしかない。最近、特にそう思うようになった。

3) ところで、外国人から見ると、日本語は“悪魔の言葉”と映ることがあるそうだ。 それもその筈で、英語ではアルファベット26文字(ローマ字)で全てが済むのに対し、日本語は漢字、ひらがな、カタカナの3種類の文字を使う。 更にその中に、最近はローマ字がよく挿入されることもある。外国人から見れば、確かに複雑怪奇な言語だろう。
英語なら、1人称単数主格は「I」一文字で済んでしまうが、日本語では「私」「僕」「俺」「小生」などがあり、しかも「私」は、発音が「わたし」「わたくし」であったり、女性では「あたし」「あたくし」と言うこともある。

 更に、日本語の同音異義語の多さ、複雑さは物凄いものがある。 例えば「きこう」というのは優に20種類以上の言葉がある。「気候」「気孔」「奇行」「機構」「紀行」「帰港」「起工」「寄港」「寄稿」「起稿」「貴公」「気功」「貴校」「機甲」「機巧」「帰校」「奇効」「騎行」「帰降」「寄口」「帰向」「奇巧」「帰耕」「紀綱」などで、この他にも、あまり使っていない言葉がまだあるのだ。

「こう」と発音(音読み)する漢字が幾つあるか調べてみたら、259もあったので嫌になった。(講談社・日本語大辞典を参考)  主なものでも、口、高、好、甲、公、功、巧、光、広、工、弘、交、好、向、行、考、港、孝、航、坑、宏、紘、攻、更、幸、降、鉱、抗、効、校、肯、皇、厚、後、構、鋼、硬、恒、侯、荒、候、降、耕、香、虹、黄、康、腔、稿、冦、衡、綱、項、興、拘、勾、購、閤、浩、巷、講、媾、酵、縞、肛、仰、絞、洪、肱、郊、江、孔・・・などである。
日本語では、これらの漢字がふんだんに使われるのだ。アルファベット26文字で済む英語等に比べると、なんと複雑で厄介なことか! これでは、悪魔の言葉と言われても仕方がないだろう。

4) 私達日本人は1000年以上もの長い間、そういう複雑な日本語を使ってきた。従って言語に対する“感性”が、欧米人とは比較にならないほど、独特のものになってしまったのではないか。そして又、日本語の使い方が極めて“微妙”なものになってしまったのだ。
例えば「又」とか「勿論」という漢字があるが、平仮名で「また」とか「もちろん」と書く場合も多い。 文章を書く時、前後の文脈や句読点のことまで考えて、漢字にするか平仮名にするか迷ってしまうことがある。 私は文章を書くことが多いので、いつも迷っている。これが英語ならば、ほとんど迷わない。「and」と「of course」で済んでしまう。

 更に敬語(謙譲語、丁寧語、尊敬語)を使う場合は、日本語はもっと複雑になってくる。それらを使う場合、余りに多くの使い方があるので、重複したりバカ丁寧になったりすることも多い。 「~させてもらっていいですか」というのも、「~させてもらって宜しいですか」とか、「~させてもらって宜しゅうございますか」などと平気で言ってしまうのだ。その点、英語なら「May I~」で大体済んでしまうから楽だ。
これらのことを見てくると、日本語の感性は、英語など外国語の感性とは余りに大きな隔たりがある。 日本語は難しい。しかし、日本人である私は日本語が大好きである。外国語の習得が下手な私は、今後も日本語を愛し続けていくしかないのだ。(2002年7月9日)


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4 コメント

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Unknown (Unknown)
2018-11-05 16:28:56
(1) そもそも、日本で生まれ日本語が出来れば、死ぬまで外国語を使えなくても問題ない。 (2)日本語で大学教育を受けられ、他のアジア諸国の子供たちのように留学しなくて良いのだから、素晴らしい。 (3)外国語ができたからと言って、すごいわけではない。アメリカだって、イギリスだって、フランスだって、チンピラもその国の言葉を話す。(4)英語は、26文字しかないし熟語的なものはハイフンでつないだ長い単語になる。(省略すればアルファベット2~4文字になりわけ分からなくなる) よって、日本語のほうが同一概念の説明を簡潔に出来るので、英語で聞いていると長ったらしく、飽きてくる。 
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Unknown (Unknown)
2019-03-19 23:25:35
こんばんは。

〉英会話などに対して“気恥ずかしい”と思う側面がある

私は現在58歳ですが、中学生の頃からまさにそう思ってきました。

1950年代後半(昭和30年代前半)頃のことだと思いますが、日本の同時通訳者の草分けの一人、鳥飼玖美子(とりかい・くみこ)さんが小学生のとき、英語に堪能なご母堂から教わった英語nativeの "hat(縁あり帽子)" の発音を学校の授業でしたら、日本人の先生に「子どものくせにキザな発音するんじゃないの!」とものすごく怒られたそうですね。70年代の田舎の中坊は私も同級生たちもその教師と同じ感覚でした。

受験英語は無駄ではなく、英語読解力・文法力を身に付けるには大いに役立ちます。英文Wikipediaも大意が掴め、英文の仕事上の文書も辞書を引きつつ悪戦苦闘しながらもなんとか書けます。

日本語ネイティブとしては、英会話能力は生活していくうえで、それが必須な環境に身を置かないと身に付かないと思います。
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失礼しました。 (スローター)
2019-03-19 23:34:51
申し訳ございません。

キーボードをタッチミス、押し間違えました。

先ほどの2019/03/19 23:25のコメントを投稿しましたのは私「スローター」でございます。 お詫び申し上げます。
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英会話 (矢嶋武弘)
2019-03-20 11:14:53
私は早大のフランス文学科卒ですが、その頃、講師に「上智大学の学生の方が、ずっとフランス語が話せるね」とよく言われました。
また、テレビ局の報道にいたある日、仕事でニューヨークへ行った時に、先輩のニューヨーク特派員がこう言いました。
「子供の方がずっと上手く英語を話せるね。子供はすぐに覚えるのだ。これにはかなわない」と。
これらの話を総合すると、外国語の会話やスピーチは感性が元になっているのではないでしょうか。
文法を主体に学習していれば、ヒアリングなどはまったく関係ありません。英会話が上手い人には、ジャズなど音楽が好きな人が多いですね。
要は『感性』だと思います。子供は感性が活発なので、語感からたやすく会話ができるのでしょう。
ただし、前の先輩の話では、子供は日本に帰国すると数ヶ月で英語を忘れてしまうとか(笑)。感性だけでは完全に習得できないということでしょう。
以上、思いつくままに書きましたが、外国語を話せるには現地に行くことが最も良いのでしょう。
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