無知の知

ほたるぶくろの日記

COVID-19について - 最近の知見4

2020-05-11 07:20:14 | 生命科学
3)COVID-19の病態
先日、下記のようにざっくりと書きました。

************
肺炎、髄膜炎、心筋炎、
サイトカインストーム(ごく稀)、免疫系への影響について

抗体のでき方に何か不審な点があります。
抗体(特にIgG)が沢山できている=感染に強い(免疫ができた)とはならない可能性があるのです。
これがなぜ、どのように起こるのか、は全く不明。

その鍵になるかもしれない論文が最近提出されました。
(詳細は明日に)

ワクチンはどうなるのか?いつできるのか?
************

今回はCOVID-19に関して最も気になるワクチン関連のことについて書いていきます。


昨年の連休中の根津美術館のお庭。 今年は見られなくて残念です。

SARSが発生したのは2003年、もう17年前です。今回COVID-19が発生した際、コロナウイルス の一種ということが早くから報道されました。

当初、私は「それなら大丈夫かも」と思ったのでした。SARS、MERSの経験がありますから、おそらくはもうワクチンも開発されているだろうし、などと考えたからです。

ところが調べてみますと、なんとまだワクチンも治療薬もないということが分かったのです。

正直言って本当に驚きました。あれだけ致死性の高いウイルスに対して、我々は未だにほとんど無防備だということなのです。

そこで、今回、SARSのワクチン研究についても多少踏み込んで、色々な論文をあたりました。

分かってきたのは、どうやらコロナウイルス には厄介な性質があるらしい、ということです。感染して抗体ができることは、通常良いことなのですが、このウイルスの場合そうでない場合があるらしいのです。

SARSウイルスに対する「ある種の抗体」は、ウイルスを不活化するどころか、ウイルスが通常用いるレセプター分子ではなく別のレセプターを用いて、特にマクロファージなど、免疫系細胞に容易に侵入できるようにしてしますようなのです。

抗体依存性感染増強(Antibody Dependent Enhancement:ADE) という現象です。実験的にウイルスで免疫された血清からADEを起こす抗体を除き(どの抗体と特定はできないので、機能的に取り除く実験操作をします)、残ったその他の抗体を調べますと、確かにウイルスを不活化する中和抗体も産生されてはいるらしい。

普通、侵入微生物に対し、天文学的な数の種類、抗体分子が作られます。その中で有益な抗体分子を作るB細胞が選択され、抗体を増やすなど個体は侵入微生物に対応します。

SARS-CoV-2は、それに対する様々な抗体分子の中にどうも困った種類の抗体ができやすい、ウイルス抗原を持つということです。

例えばワクチンを接種したとして、本来はウイルスを防ぐ働きをするはずの生成された抗体が、逆にウイルスを引き入れ、感染を拡大してしまうというのですから、全くもって本末転倒な現象です。
(これって、最近報道されている三菱電機を襲った中国系ハッカーが仕掛けたウイルスの手口のようで、不謹慎ですが、個人的には凄く受けました。)

今のところ『どういう抗体がADEを起こすのか』はよくわかっていないようです。

SARSのほか、デング熱、エボラ出血熱、ジカ熱などの原因ウイルスでも同様の現象が見られ、ワクチン作成の足かせになっているそうです。

私は不勉強にも今回このことを初めて知りました。

恐ろしい現象です。それでSARS、MERSのワクチンもまだできていないのでした。


ウイルス感染によって色々な抗体ができ、確かに中和抗体もできるようですが、ADEを起こすものもできる。今のところそれを見分ける術がない。

これは厄介です。うっかりワクチンを打って抗体を作っておくと、次に感染した際、感染が増強されてしまうということになります。

これは自然に治癒した場合でもそうなのでしょうか?ジカ熱ではそういうことが起こっているようです。

非常に困ったウイルスです。このADEを克服しませんと、ワクチンに辿り着けないのです。

ワクチンを含む免疫問題の解決にはまだまだ時間がかかりそうな気配がします。


4)COVID-19に効果する食品?
この項目についてはこれ以上付け加えることはありません。これまで通り、偏りのない食生活をすることがまずは重要でしょう。
あえて、旧来の日本食はとても良さそうだ、とのみ、書かせていただきます。


5)治療薬について
レムデシビルが早々に認可されました。そのうちにはファビピラビル(アビガン)も認可されるでしょう。どちらも核酸アナログでウイルス増殖を抑える効果を持ちます。したがって、感染の初期に投与されることが重要。

肺炎が重症化する前に投与されることで人工呼吸器を必要とする患者さんを減らせる可能性があります。

問題は副作用。かなり強い副作用があるようです。
もちろん、この2薬に満足することなく、さらに副作用の少ない薬剤が探索されているようです。

イベルメクチンも抗ウイルス剤として効果する可能性がある、とのことで治験が始まるようです。これが有意であれば、大変な朗報です。


また急激な悪化を起こす、サイトカインストームに対しては、IL6阻害剤の可能性があるようです。リウマチの薬としてすでに使われている薬剤ですので、イベルメクチンと同様の対象症例を広げる治験が始まるようです。


上記したようにワクチンの作成に期待が持てない現状、良い治療薬が開発されるのを切に願っております。

治療も感染を早期に発見し、抗ウイルス剤を投与する、という方向へ舵を切ることになるのではないでしょうか。インフルエンザと同様の方針です。

「熱が4日続いたら・・・」の基準は撤廃されましたが、今後は「熱が出たらまず検査」になりそうです。そのためにもインフルエンザ検査キットのような良い検査キットの開発が急務です。

これもROCHEあたりはもう良い抗原を持っているようですから、期待できるのではないでしょうか。


さて、COVID-19の最近の知見の大筋は以上です。書いていて、皆さんが明るい気持ちになって頂けるのかどうか、懸念しています。
ただ、今回のパンデミックにより、さらに多くの生命科学系研究者が改めてこの重大な感染症免疫問題に取り組むはずです。

研究の進展を祈ります。

COVID-19について - 最近の知見3

2020-05-10 16:00:04 | 生命科学
2)感染者検査の問題

今回は話題の検査についてです。

「検体採取問題 今は鼻粘膜で決着。最近のデータでは唾液も候補。」

と先日書きましたが、唾液が有力な検体候補というものは、紹介したNatureのまとめ記事の中にありました。

これが本当であれば、検体採取が非常に楽で安全になります。被験者も採取者も双方が楽になるのは素晴らしいことです。


その一方で「PCR検査数が少ない問題」がまた改めて取り沙汰されています。

SARS-CoV-2の検出は単なるPCRではなく、RNA抽出→逆転写反応→PCRで、検体を扱う手数が多い。そのため、扱う方の技術的レベルの差異、ミスが起きやすい点が問題となっています。

試薬、人、機器、この3つの質量が揃いませんと結果が出ません。先日の政府の話では人がボトルネックになっている、とのことでした。しかし、日本にこの検査をできる能力のある人が少ないため、ではないのです。

臨床試験、行政試験は国の認証を受けた機関が検査をしなくてはいけない、ことが原因なのです。そして、通常はそんなに多くの検査があるわけではありませんから、キャパシティは限られています。そしてすぐに人を増やしたり減らしたりはできない。

3つの条件が揃っている、民間の検査機関や大学、研究所は沢山あるのですが、厚労省のお墨付きがないと検査が許可されないのです。
勝手にやってもその結果は採用されないということになって、完全な無駄となります。

この辺りをどう解決するのか。

例えば疫学的調査に限っては行政組織以外でも検査が行えるようにする、などの臨時措置が必要かと思います。それに限らず、一部の臨床試験もやってもらうのが現実的かもしれません。

実際3月初め頃には、この縛りを緩和する通知も厚労省から出ているようです。地方自治体が決意すれば臨時のPCRセンターが設置できるのです。そしてすでにそのような措置をとっているところもあります。

全自動PCR機器も出てきているので、あとは行政がどううまく使っていくか、でしょう。(利権が、、、という噂もありますが、裏が取れないので、やめておきます)


慈恵医大では自分たちの病院の医療体制を守るために、大学を挙げたPCR検査チームを立ち上げ、慈恵医大独自のPCR検査センターを作っています。患者さんに対し、PCR検査を徹底し、あらかじめ感染の有無を確めて診療を行う、というものです。心理的にも現場はとても安定し、よりスムーズな医療が提供できるようになると思います。

全ての方を検査するので、陰性の方の検査費用は保険診療請求はできません。病院の持ち出しということです。ただ、それでも十分の見返りが期待できると判断したようですし、実際その通りとなっているようです。

当該施設でのPCR検査の原価は700~800円とのこと。もちろん人件費は別です。慈恵医大は基礎研究部門も充実していますので、それこそ人的資源は豊富と言えます。ただ、今時RT-PCRは生命科学系実験では不可欠の基礎的実験技術です。生命科学系研究を行っている大学であれば同様の対応は可能かと思います。


インフルエンザのテストのような簡易キットはまだか?と思われる向きもあるでしょう。ウイルスの免疫学的検出が、インフルエンザのテストのように検出できるようになるためには、良い抗体(感度、特異度どちらも100%に近いもの)の作成が重要。
もう少し、時間がかかると思います。今すぐどうにかできる状況ではない。

やはり確実で手っ取り早いのはPCR体制の充実でしょう。


今年の八重桜ももう終わりです。

ところで、PCR以外の検査として今話題になっているのは、「人々が感染した経験があるかどうか」を、抗体の有無で検出する、抗体検査でしょう。

この検査ではROCHEの抗体検査キットが広く使われるようになるのだと思います。血液による検査を精度高く(感度、特異度)行うことができるようです。ほぼどちらも100%近い数値のようですから、さすがのROCHEです。先週米国で認可が降りました。日本も5月中には発売できるよう、動いているそうです。

米国は、経済活動を含めた全ての人間の活動を再開するにあたり、この抗体検査のデータを参考にするようです。
しかし、先日も書きましたが、実はここが難しいところなのです。

通常、ある病原体に対して抗体が観察されれば、その方はその病原体に対して免疫である。つまりその病原体により、感染症を発症することはない、というのが抗体の常識です。

ところが、このSARS-CoV-2をはじめ、SARS、MERSの原因コロナウイルスなどある種のウイルスに対しては、抗体と言っても厄介な性質の抗体を作る場合があるらしいのです。

詳細は次の項で書きますが、抗体を持っていればもう感染しない。感染しても軽く済む。とは言えないようなのです。

したがって、この抗体検査の結果では、少なくともウイルスに感染した経歴があるかどうかが分かり、人口のどのくらいに感染が広がったのか、を明らかにすることはできます。
しかし、残念なことに必ずしも人々が以前と同様の社会活動をしても大丈夫と、判断する材料にはならないのです。
(続く)

COVID-19について - 最近の知見2

2020-05-10 10:28:06 | 生命科学
先日、まとめの続きを、とお約束したまま日が過ぎてしまいました。

いろいろ裏をとる作業が思いがけず大掛かりなことになってしまい、時間がかかっておりました。



COVID-19について先日整理した順に、現状理解されていること、わかっていないこと、を明確にし、書いて行こうと思っています。

ただし、まず最初に先日、当ブログに陰謀論信奉者(ご自身で書いておられることの内容がいかに荒唐無稽であり、信頼性のないものであるかを理解されていないため、単にある論説を「信奉」しているとしか言いようがありません)と思しきかたから寄せられた「COVID-19生物兵器説」について、少々説明します。

(当該コメントは皆様のお目汚しのため、現在保留処理としています。ただ、そのような論説はちょっと探せばいくらでも転がっていますのでご興味のある方はどうぞそちらをご覧ください)

COVID-19による社会的混乱をおかしな方向に進ませかねない、政治的とも言える言説に対し、何らの対処もせず無視しているだけでは仕方ありません。

まず初めに少々、このことについて書いておきます。

これまでもこの手のことを説明する際、説明に不備があって、かえって誤った理解を招いてしまったこともあります。
少しでも不審や疑問などありましたら、コメントに書いていただけますと助かります。

1)SARS-CoV-2ウイルスそのものの問題
現在、某国某研究所がウイルスの起源である、という主張が主に米国からなされています。

しかし、少なくとも「人工的に作られたものではない」ということは明確とされています。

この人工的に作られたものではない「証拠」は遺伝子工学を専門として取り組んだ方なら簡単にわかることです。つまりこの方面の専門知識があるかどうかがわかる、いわば「踏み絵」となる知識ではあります。
ただし、今後のCOVID-19の理解に必要なものではないので、ここではあえて説明しません。

それでもご興味がある、とおっしゃる方は、まず基礎知識を固めた上で、論文にトライしてください。その気がない方はこれ以上の詮索は不要と思います。根拠のないデマを撒き散らすことは世の中のためになりません。厳に慎むべきでしょう。

未だに生物兵器として製作されたもの、との言説を述べている方を認めますが、その方達が、証拠としてあげている研究者の論文群の内容を見る限り、どう見てもその研究者は真面目に組み換えウイルスを作って、ウイルスの様々な部位のタンパク質の性質を調べる研究をされていたとしか思えません。

研究のために、ウイルス蛋白の一部を変異させたものを組み込んだ、組み換えウイルスを作るのは常套手段です。元のウイルスの変異体であることもあれば、効果の測定の方法が確立しているウイルスで変異体を作ることもあります。

武漢の研究所もコロナウイルスの「ある部分」のタンパク質の性質を詳細に研究するために、いろいろな組み合わせのコントロールウイルスを作成し、それらの間の相違を比較していました。

その研究者の論文をざっと見ましたが、SARS-CoV-2はSARS-CoVとも表面蛋白がだいぶん異なっており、SARSとは異なる機序で、異なる細胞に感染していくようでした。このような細かい知見を積み重ね、ウイルス感染の足がかりを特定し、そこをブロックする薬剤を探すのです。

少なくともこの研究者の論文からは、この方が怪しい研究活動をやっていたとは全く思えません。

先の著者は、この研究者が怪しい活動をしていた証拠品として論文を挙げているのにもかかわらず、「しかし私には専門用語が多く、その内容がよくわからない」と書いていました。

噴飯物です。書いている本人が内容がわからないと言っている、その「内容のわからない文書」を持って「証拠」だと主張する。あまりにいい加減な態度には本当に呆れます。これは冤罪の始まりです。名誉毀損で訴えられても仕方のない言論かとおもいます。ご本人はそのことに気づいておられるでしょうか?

この方は英語がかなりお得意な方らしいのですが、科学論文を理解できないことを、「専門用語を知らないから」と誤解しています。学問を冒涜していると言っても良いかもしれません。
英文を読める英米の方が、その論文をきちんと理解できる、と主張されているに等しい。

背景の基礎知識に対し、もっと真摯な態度が必要だと思います。
言語道断としか言いようがありません。

つまり、この方達の主張する「証拠」論文は全く証拠にはなっていませんので、生物兵器、と主張する根拠はないことになります。
また、現在のコロナ禍を乗り越える努力に対して、「生物兵器である」とする主張が一体誰のどういう役に立つというのでしょうか?単に世の中へ、政治的な不穏な空気を送り込もうとしているに過ぎないのではないでしょうか?

真摯にこの感染症の対処に取り組んでいる人々に対する大きな障害を作り出しているのです。ここまできますと敵対している、と言っても良いかもしれません。
先日も書きました、感染者や感染に対し危険な現場で日々COVID-19と格闘されている医療従事者、高齢者施設等の方たちにあり得ない暴挙を行う方達と共に、本当に情けない行動の方達と思います。


さて、それはともかく、万が一、研究所内のミスなどにより研究対象ウイルス(採取されたもののストックなど)が漏洩してしまったのであれば、それはそれとして公表し、現代のP4施設で起きた大きなインシデンスとして国際的検証チームによる徹底した検証が行われる必要があります。

なぜ、どのようにして漏れ出してしまったのか、どうすれば良かったのか。原因究明と対策の構築が急務です。

ただ、この辺りは中国の軍関係者も乗り出しているようで、公開での検証が難しいのかもしれません。米国が騒ぎ出しているのはその辺りにも何か引っかかる点があるからかもしれません。

非常に厄介です。今後もまだ、ここの点での議論は続くでしょうし、なかなか明らかにならない可能性があります。
しかし、はっきりしているのは、このCOVID-19は世界的な協調と共同的努力によってしか克服はできないということです。

その際に、その国際的協調をなんとか乱そうと企む方達がいるとすれば、それは文字通り世界を敵に回して何かを為そうとすることに他なりません。

私も含め、全ての人々は自分が何を為そうとしているのか、自分の行動の先にあるものは何か、を見極めて行動しなくてはならないでしょう。
(続く)

COVID-19そのものについて書きたいのですが、まずはその周辺に蠢く暗雲が目障りでしたので、今回はまずは露払いでした。

COVID-19について - 最近の知見1

2020-05-05 22:13:24 | 生命科学
やっと土曜日から連休に突入しています。
のんびりしよう、と手ぐすね引いていたのですが、なんだかいろいろやることがあって、PCに張り付く毎日です。

以前から気になっていたファイルの整理とか、あれやらこれやら。テレワークで自宅のPCを使う機会が増えたため、いろいろ気になり始めてしまって。。。
そのうちに、そのうちに、、、と言っては先延ばしにしてきたことを次から次へとやっています。

今日の午前中にそれも一区切りついたので、やっとCOVID-19についての情報のまとめに取り掛かりました。


氏神さまの白い皐月が咲き始めました。もう5月ですからね。

このところNature、その他科学雑誌にのCOVID-19関連の興味深い論文がいろいろ出されています。こちらは臨床研究ではなく、基礎研究なので、治療に直結するものではないのですが、敵を知る上で重要なデータです。

ざっくりとまとめた記事が出ないものか、と思っていましたら、さすがはNatureさん。まとめ記事が出ました。
この内容は以下、「SARS-CoV2についての最近の情報と問題点」に織り交ぜて紹介したいと思います。
が、もしかすると、今日は力尽きて明日になるかもしれません。悪しからずご了承いただきたい。


さて、この今回の新型コロナウイルスは非常に厄介なウイルスです。
コロナウイルスはとてもありふれたウイルスで、普通にかかる風邪の原因ウイルスとしてつとに有名。
それがいきなりSARSやMERSといった重症な肺炎を起こす致死性の高いウイルスになったことはかなりショックなことでした。

2度あることは3度ある、と皆思っていたのです。ただ、当初武漢で流行り始めた際、上記2つのウイルスほど致死性は高くないようでしたので、油断していました。

SARS、MERSほど致死性は高くない。
それは確か。
しかし強い伝染性と相まって、社会に大混乱を巻き起こしました。もしももっと致死性が高ければ、伝染する前に感染者は死亡し、ウイルスはこれほど拡がらなかったでしょう。

弱い致死性がウイルスの伝播を助けた。
不謹慎な言い方ですが、そうとしか言いようがありません。

そして感染者の症状についても、理解に苦しむような転帰が報告され、未知の感染症の恐ろしさを現代の我々は感じるようになりました。

思えばこの約数十年、自然は我々に優しかった。新たな病原性微生物に出会うことがなかったため、我々は全ての感染症を制覇した、と勝手に思いこみぬくぬくとしてきました。いや、それなりに新たな微生物は出てきていたのですが、これまでの概念をやりくりして、なんとか理解が可能であった、というのが正しいところかもしれません。

SARS-CoV-2はそんな我々に鉄槌を下すべくやってきたようです。

さて、現状、かのウイルス、並びにその感染症について明らかになっていること、不明なことをざっと書き出してみたいと思います。

1)SARS-CoV2ウイルスそのものの問題
武漢ウイルス研究所から漏れ出したなどの仮説。米国で未だに検証など進行中。
人工ウイルス説は否定された。
ウイルスゲノムの変異は激しく、感染研にもウイルスの系統図が示されています。

今日本で広がっているのは欧州型、と言っても良いようです。
変異によって病態が異なるのかどうかはまだなんとも言えません。拙速な議論は禁物です。

2)感染者検査の問題
検体採取問題 今は鼻粘膜で決着。最近のデータでは唾液も候補。
PCR検査の問題 単なるPCRではない。RNA抽出→逆転写反応→PCR
血液による、抗体検査 精度(感度、特異度)に大いに問題あり。現状良いものはない、との結果がScience誌に掲載。ごく最近ROCHEが発売開始したものはかなり良い、との話がある。米国で採用され、5月中には日本でも許可を取得する、とのこと。

これをどう使うか。これが問題。(議論の詳細は明日にでも改めて)

3)COVID-19の病態
肺炎、髄膜炎、心筋炎、
サイトカインストーム(ごく稀)、免疫系への影響について

抗体のでき方に何か不審な点があります。
抗体(特にIgG)が沢山できている=感染に強い(免疫ができた)とはならない可能性があるのです。
これがなぜ、どのように起こるのか、は全く不明。

その鍵になるかもしれない論文が最近提出されました。
(詳細は明日に)

ワクチンはどうなるのか?いつできるのか?
(これが大問題。これも詳細は明日に)

4)COVID-19に効果する食品?
一般的に健康によろしい食品が取り上げられていますが、、、
こちらのサイトで確かめていただきますと、良いかもしれません。

食品であれば特に害のないものですが、バランスを欠きますとやはり健康的とは言えなくなります。
十分にお気をつけください。

5)治療薬について
まだ、治験が完全に終わった製剤はひとつもありません。
臨床家は注意しつつ、自身の経験とも照らし合わせ、使用することもできるでしょう。
しかし、素人の方は手を出すべきではない。何が起きても保証の限りではありません。

実際、報道で名前のあがっているいくつかの製剤もかなりの副作用が見出されているようです。対応可能な状況で使いませんと危険です。
(続く)

ちょっとブルーな話し

2020-05-03 21:10:20 | 日記
もうゴールデンウィーク!それにふさわしいお天気で、青葉の美しいときになりました。


そんなときなのですが、どうも嫌な話しが報道されています。

-----------------------(引用ここから)----------------------

「感染者は誰だ」 四国の農村でパニック、役場へ怒声も
2020年5月2日 19時00分

 新型コロナウイルスによるパニックは、デマによるものだけではない。
 ビニールハウスが広がる四国の小さな農村で、3月上旬、村立小学校に通う男児が新型コロナウイルスに感染した。国内感染者がまだ300人程度の時期だ。
 親類が感染し、男児は濃厚接触者として検査を受けていた。保健所から連絡があり、教育長は驚いた。「まさかうちの村で」
 県はこの日夕、学校名の公表について村と協議した。情報が公開されないことで生まれる地域の混乱を避けたい、という思いがあった。男児の保護者は「子どもを守ってください」と念押しした上で、公表に同意したという。
 県知事は同日夜の記者会見で、「10歳未満の男児」と匿名で発表。「補足」として自治体名と学校名に言及した。そこから、情報を求めるうねりが起きた。
 「何年生か言ってもらわんと、怖くてたまらん」。学校には多くの保護者から求めがあった。
 管轄の保健所や村役場にも電話が相次いだ。不安を訴える人もいれば、「感染者はどこの誰か」と、名前や住所の公表を強く要求する声もあった。「個人情報は明かせない」と応じる職員に「やめてしまえ!」と怒鳴る人もいた。
 「互いに顔を知らない人がいないような小さな村ですから」と役場の職員は言う。村を歩くと、農家の男性は「うわさで聞いた」として、「あそこの息子らしいよ」と集落の一角を指さした。知人からも「あの地区から出たみたいだけど、誰ね?」と電話があったという。
 男児の家族も無縁ではいられなかった。「家族にも電話があって、今も傷ついている」と行政関係者は明かした。
特産の野菜の出荷額は、全国でも屈指の村だ。「地元の農産品を食べても大丈夫か」という声も保健所に寄せられた。農家は緊急に会議を開き、出荷の際にマスクと手袋を身につけることを申し合わせた。
 男児の感染が発表されてから1週間。村長は県に要請して「風評被害対策会議」を開き、「不安が不安を呼び、感染者や関係者が風評被害に遭われていることは大変残念」とのメッセージを出した。村長は「騒動の中で人から出てくる言葉が、これほど普段と違うとは」と振り返る。
------------------(引用ここまで)------------------------

大変心冷える話しではあります。
巡礼者を大切にする、心優しい人々の住むところ、という、これまでのアピールが台無しになりました。

四国のどの辺りかは分かりませんが、恐ろしい。

このような一皮むけば、という「社会」のあり方はあちこちの小説、映画、ドラマなどにさんざん描かれてきました。

私の両親もまた、そのような山深い地方から東京へ出てきた人々でありました。都会に住まう方達のほとんどはこういう方だと思います。

母親はその「故郷」を忌み嫌っていました。まだ元気な時から、「歳を取ったら田舎に帰りたい、なんて言う人がいるけど、全然そんなこと思わない。二度とあそこには住みたくない。」と言っていました。
いろいろあったようです。

小さな社会であり、人々の社会的距離が近く、プライバシーの概念はほとんどない。自分の何代か前の人のこと、家族のことも村の人々は皆承知している。ことによると自分の知らない隠された「何か」まで知っていたりする。


私自身、年に一回くらいその土地に行くか行かないか、だったのですが、それでもその土地の人々の閉鎖性、陰湿さ、などを感じる出来事がありました。おそらく私もよんどころない事情がない限り、二度と彼の地に赴くことはないでしょう。

「みんな顔見知りで、家族みたいなもんだから」
というフレーズは実に微妙です。

今回のコロナ禍はとても興味深い人間社会の問題点を暴いています。
医学的には社会的距離(ソーシャルディスタンス)より身体的距離(フィジカルディスタンス)の問題だと思うのですが、図らずも、社会的距離についても考え直すよう、人間に迫っているような気がします。

本当は皆様のお役に立つようなコロナウイルス関連の話題を、と思っていたのですが、つい目についたこの報道で心が一杯になってしまって。。。
本当にこのウイルスは教育的であることよ。

一体誰が、どういう目的でこの世に放ったのでしょうか。