今日は、関東地方ではぐずついた天気となりましたが、中部山岳では好天に恵まれました関東に悪天をもたらした、高気圧から吹き出す湿った東風に伴う雲が八ヶ岳周辺でも見られましたので、これについて解説していきます。
●天気は東から崩れる!?
通常、天気は西から崩れることが多いのですが、今日は東から雲が広がっていきました。
画面の奥が東から南東方向です。関東地方の方から湿った東風が入り、それに伴って帯状の雲が八ヶ岳の右側に広がる林の奥に見えます。また、ここから吹く南東風が八ヶ岳に沿って上昇し、雲を発生させています。また、八ヶ岳の裏側からも東風が入り、稜線の奥に雲が見えているのが分かります。その雲が山を越えると下降気流となって、手前側の茅野の山麓では晴れているのです。
遠くから見ると、この雲はやる気がある雲(もくもくと上へ上へと成長していく雲)ではなく、やる気のない雲(雲のてっぺんが水平になった薄い雲)であることが分かります。これは上空に乾燥した空気があることと、大気が安定していることが原因です。
上図は輪島上空の大気の状態を表したグラフ(エマグラム)です。八ヶ岳付近に高層気象観測地点がないので、輪島と浜松からのエマグラムを見ていきます。まずは、輪島からです。右側の太い線が気温、左側が露点温度(空気を冷やしていったとき、雲ができる温度)を表しており、この間隔が開いているほど、空気が乾いていることを示しています。つまり、高度1,500m付近から4,500m付近で空気が乾いていることが分かります。
一方、浜松のエマグラムも見ていきましょう。
こちらも、2,000m付近から4,500m付近で空気が乾燥しています。また、温度が高度とともに下がっている割合が小さくて、大気が安定していることが分かります。ちょっと難しいですが、2,000m付近から上空に乾いた、安定した層があることが分かる訳です。
八ヶ岳はこれら2地点の中央より少し東側にありますから、これらの地域よりもっと乾燥した空気が上空に後退している可能性があります。そこで、関東地方の館野(つくば市)のエマグラムを見てみましょう。
こちらは、湿った空気が入り、2,500m付近までは温度と露店温度の差がほとんどなく、非常に湿っています。乾いているのは、3,500m以上です。
ここと浜松や輪島の間だとすると、八ヶ岳付近では2,500m~3,000m、ちょうど八ヶ岳の稜線付近が湿った空気と乾いた空気の境界になると思われます。実際、今日は稜線の高さまで雲が達するときと達しないときがありました。
さて、湿った空気による雲は衛星画像で見ると、さらに良く分かります。
地上天気図で気圧配置を確認してみましょう。北緯40度付近に中心を持つ、東西に連なる大きな高気圧があります。一方で関東地方はこの高気圧の南側に位置し、高気圧からの北東や東風が入りやすい形です。このようなとき、高気圧の南側では東風が吹き、東の海上から雲が侵入してきて、東から天気が崩れていきます。
※地上天気図と衛星画像は気象庁ホームページより。エマグラムはhttp://mikkun.yu-nagi.com/01sci/027-emagram.htmlより。写真は猪熊隆之撮影。
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文責:猪熊隆之