雲から山の天気を学ぼう(第5回)
今回は、普段は低いところにありながら、成長すると、上層雲と同じくらい高いところまでぐんぐん背が伸びていく雲、対流雲(たいりゅううん)について学びます。
Ⅰ.対流雲
対流雲は積雲(せきうん)と積乱雲(せきらんうん)の2種類ですが、積雲が成長したものを雄大積雲(ゆうだいせきうん)として分けることもあります。雄大積雲と積乱雲の区別は難しいので、あまり厳密に考えなくて良いでしょう。
a)積雲(わた雲)
下の写真で見られるすじ状の雲は、既に学んだ巻雲です。塊状の雲が積雲です。青空によく浮かんでいる、綿のような雲のことを積雲と言います。空気は暖まると軽くなるので、南斜面や盆地など周囲より暖まった場所では、軽くなった空気が上昇していきます。そこで発生する雲が積雲です。この雲の下では局所的に上昇気流が起きているので、パラグライダーで高度を上げるときは、この雲の下に入ります。
b)雄大積雲(入道雲)
積雲が発達したものが雄大積雲です。大気が安定しているときは、積雲は成長できませんが、不安定な状態のときは、上へ上へと成長していき、ソフトクリームのような雲になります。また、雲の底が灰色になっていきます。このような雲が雄大積雲です。
c)積乱雲(発達した入道雲)
雄大積雲が発達すると、積乱雲になります。大雨(雪)や落雷、突風を引き起こす、登山者にとって最も怖い雲です。雄大積雲との見分け方は難しいですが、雲の上部が氷点下の高さに達して水滴ではなく、氷晶(氷の粒)で形成されるようになると、積乱雲と呼ばれます。縦長の雲で雲底(雲の底)は数百㍍程度ですが、発達すると雲頂(雲のてっぺん)は10km以上に達します。
文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)
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