今回は、昨日(8月21日)から今日(8月22日)にかけて見られた雲について解説します。今日の昼頃、台風9号が関東地方に上陸しましたが、台風が接近する際には色んな雲が見られます。
雲は「空気の気持ち」つまり、空気の状態を表してくれますが、台風は空気が池だとして、池の中に大きな石を投げ込むようなもの。池に波紋が広がるように、空気にも波紋が広がり、それが空気の波となって色々な雲を作るのです。
さて、まずは台風襲来前日の雲です。
上の写真は、昨日の午後、長野県茅野市郊外で撮影したものです。画面奥の八ヶ岳にかかっているもくもくした雲の上方にある髪の毛をくしですいたような繊維状の雲があります。これは巻雲(けんうん)という雲で、雲の中でもっとも高い所に浮かんでいます。
巻雲には雨巻雲と晴れ巻雲があります。雨巻雲と晴れ巻雲については過去の観天望気講座をご参照ください(下記URL)。
http://blog.goo.ne.jp/yamatenwcn/e/047f57fe1b62d34335c45c35a0661f1f
http://blog.goo.ne.jp/yamatenwcn/e/712288252cf223bda87307278cfcfc84
今回は鉤状ではありませんが、湿った感じのする雨巻雲です。九州の西に低気圧があるとき、南海上に台風があるときにこのような雲が出るときは、翌日以降、天気が崩れることが多くなります。
上の写真は昨日の夕方、長野県茅野市郊外から南東方向を撮影したものです。台風が近づいてくると、上空に水蒸気が多くなり、空が綺麗に焼けることが多くなります。そして紅く染まっている巻雲がカーブしています。雲の上の部分と下の部分で風の強さや向きが違うときに、このような雲の形になります。空気が乱れている証拠です。
上の写真は同じ場所から、今度は北西方向を写したものです。うろこ状の雲は巻積雲です。こちらも空気が乱れている証拠です。台風が接近するとき、空は賑わい、美しい夕焼けや朝焼けが期待できます。
さて、いよいよ台風上陸当日です。
空も何やらただならぬ様子。まず、下の部分に層雲が現れてますが、雲の上端が右側になびいていて、風が下層(地面に近い所)から強いことが分かります。また、上の方には羊雲(高積雲)が見られます。昨日のうろこ雲(巻積雲)より一回り大きく、高度も下がってきています。空気の乱れが下方に伝わってきて、湿った空気も降りてきているのだと思います。
上の写真は本日9時頃のものです。全体に雲が厚みを増して隙間がなくなってきました。全天が高層雲で覆われてきています。つまり、台風本体の雲がかかってきたということですね。小雨が降り出しました。台風の雲は東側にあるので、東の空はどんどん暗くなっていきます。
一方で西の空はご覧の通り。つまり、長野県茅野市付近が雨と晴れの境い目にあるのです。
上の写真も同じ場所から東の空を見たものです。八ヶ岳の反対側(東面)から雲が湧き出ています。東風が山にぶつかって上昇することによってできた雲です。山はガスに覆われてきました。恐らく雨も降りだしたことでしょう。
上の写真は同じ場所から南東方向(甲斐駒方面)を写したものです。雲の底に丸いボツボツのようなものが出来てきていますね。これは上昇流だけだった雲の中に下降流が起き始めたことを表しており、下降流は雨が降ることによって生じるので、そろそろ雨が降り始めるというサインです。
ということで、ここでも雨が降り始めました。台風は雲の博物館。沢山の雲が見られる良い機会です。台風が接近するときは雲に注目してみると面白いですよ。
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写真、文責:猪熊隆之