山の天気予報

ヤマテンからのお知らせや写真投稿などを行います。

猪熊隆之の観天望気講座86

2016-08-05 21:13:46 | 観天望気

今回は、先日の涸沢フェスティバルで見られた雲について紹介します。

2日目の朝は快晴でした。こんな朝を迎えると、山に来て良かったなぁ、と思いますよね。

ところが、陽が昇ると、屏風の頭と北尾根の鞍部から雲が流れ出してきました。滝雲になりかかりましたが、残念ながら完成系までには至らず。湿った空気の入りこみが弱かったからですね。

画面の右側が南の方角ですので、南からの湿った空気が入り込んでいることを示しています。この方角、つまり涸沢から見て北尾根の方角からどんどん雲が湧いてくるときは要注意。天気が崩れることが多くなります。

この日も次第にガスに覆われ、何とか田中陽希さんのトークショーまで雨は持ってくれましたが、夜中は土砂降りの大雨に。

なんと雨男がいるのか、北アルプス南部にだけ強い雨雲がかかっているではないか!これは飛騨側からの温かく湿った空気と、安曇野盆地からの湿った空気が北アルプスでぶつかり合い、上昇気流が強められたことが原因。このような地形性の雨の場合は状況が変わらなければ、雨は止みません。

翌朝も雨が残り、残念ながら朝の観天望気講座は中止になりました。さて、閉会式もまさかの中止!?と思っていたところ

風向きが飛騨側からの風に変わりました。東の空が明るくなり、常念山脈の上空には青空もも。つまり、雨雲を維持していた場が変わったのです。風下側から天気が回復してくるという山の天気で良く見られる光景がここでも見られました。

案の定、雨はどんどん止んでいき、何とか閉会式を終えることができました。

めでたし、めでたし。

※雨雲レーダー:気象庁提供

※図、文章、写真の無断転載、転用、複写は禁じる。

写真、文責:猪熊隆之

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猪熊隆之の観天望気講座85

2016-08-04 21:38:08 | 観天望気

ご無沙汰してます。久しぶりの観天望気講座です。今日は7月3日に行われた「山の天気ハイキング in 会津朝日岳」の際に見られた雲と、気象判断についてお伝えします。

この日は、梅雨前線上をキンク(前線が折れ曲がったところ)が能登半島の北から新潟付近へと東進していき、会津朝日岳はその南側に入りました。たびたびお伝えしていますが、キンクの周辺や南側では積乱雲が発達しやすく、局地豪雨や大雨に警戒が必要ですし、前線の南側では西風が強まることが多くなります。したがって、キンクが通過する予想の昼前後を中心に荒れた天気となることが予想されました。

そこで迷うのが登山を催行するかどうかの判断。今回のルートで予想されるリスクは、前半の沢の渡渉と、山頂直下の急峻な岩場、そして頂上稜線の風です。沢が増水してしまうと、帰りに渡れなくなる可能性がありますが、もっとも発達した積乱雲はもう少し北側の飯豊連峰付近にかかり、会津朝日ではそこまでの大雨にはならないこと、ブナを始めとする自然林の保水力の高さ、流域の沢の形状などから決行することにしました。あとは、稜線に出てからの強風ですが、これは避難小屋でそのときの風雨の状況などから判断することにしました。

つまり、引き返しポイントはひとつは沢の渡渉地点、それから避難小屋、そして稜線の直下ということになります。

さて、出発した後は携帯が通じないので雨雲レーダーの確認はできません。雨雲レーダーを出発前に確認したところ、登山開始前後に、にわか雨が降った後は一旦、小康状態となる感じであった。また、その後の梅雨前線の動きや暖湿流の入り具合から、キンクが通過する10時頃から本降りの雨となり、13時頃まで続きそうだと想定しました。

あとは、観天望気です。

出発時、予想通り、にわか雨となり、雨具を着るが、やがて止み、すぐに脱ぐ。沢は今年は雪解けが異常に早かったため、渇水状態で流れはほとんどない。ただし、このような沢が短時間の豪雨で姿を全く変えてしまうことを過去に何度も見ているから油断はできません。

 

その後は小康状態で薄日が差す時間も。このとき、お客様から「猪熊さん、本当にこの後、降るの?意外と持つんじゃない。」という声もありました。しかしながら尾根上に上がると、北側に梅雨前線本体の活発な積乱雲群が見てとれます(上の写真)。

しかも、その後、積乱雲群はゆっくりと接近(南下)してきました。さらに雲海の上部が盛り上がってきて、雲が上方に毛羽立ったようになってきました。これは上昇気流が強まってきている証拠で、天気が崩れる前兆です。

案の上、9時頃から雨が降り始め、10時頃には本降りに。土砂降りの中、避難小屋へ。ここが最大の引き返しポイントとなります。調子の悪いお客様にはここで待っていただくことにしました。さらに山頂直下の岩壁の下へ。脇を増水した沢がゴウゴウと流れており、雨の勢いは弱まりません。ここであまり歩き慣れていないお客様にはガイド1名をつけて引き返していただくことに。やむを得ない判断です。残りのメンバーはガイドとお客様の比率が1:2とガイドがお客様が滑落したときに備えて登ります。全員、無事難所を通過。さて、最後の引き返しポイントは稜線。稜線では風が音を立てて唸っているものの、幸いルートが稜線の風下側で、大きな灌木も所々あるので思ったよりも弱かったので、特にバランスを崩す方もいらっしゃいませんでした。引き返したメンバー以外は全員無事登頂し、下山。

私自身も引き返しポイントなど、お天気の勉強になったツアーでした。

※図:気象庁提供

※図、文章、写真の無断転載、転用、複写は禁じる。

写真、文責:猪熊隆之

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