2月5日のスーパーチューズデー以降、直近のWisconsin州の予備選までこの2週間、オバマが10連勝し代議員の数もついに1199人対1040人とH.クリントンを逆転した。 おそらく最終決戦になるであろう3月4日の大票田のテキサス(代議員193人)とオハイオ(141人)の予備選に向けて、現在両候補とも精力的にキャンペーン中だが、21日にテキサス大学で行われ全米で放映された2人の討論会の最後でのH.クリントン議員の発言が、「敗北宣言か」と話題を呼んでいる。CNNでこの90分にわたる討論はほとんどビデオクリップで見れるが、“whatever happens, I am honored to be here with Barack Obama”と言って手を差し出したヒラリーに、オバマが固い握手で応えた場面で会場はこの日一番の拍手に包まれていた。
テキサスとオハイオでオバマを逆転しない限りもう後がないという背水の陣に追い込まれているヒラリーだが、この日はオバマのスピーチが借り物(plagearism-剽窃)であると少し攻撃はしたが、概して穏やかで悟ったような表情であったように思う。 話題になった場面は、かつてない高い関心をこの大統領選にもたらして一年間戦ってきたヒラリーが、お互いに切磋琢磨してきた時間を振り返りながら、ここに来てオバマという相手を心から称え、「この候補には負けても本望だ」という境地に達したと感じさせるモーメントであったと私は思った。ヒラリーも自身の真正な感情を素直に見せるほど、ここまで全力を尽くしてきたのであり、たとえ敗北しても、今後のH.クリントンの評価や活動にとってプラスになるはずだ。
今やヒラリーとオバマの勢いの違いは、両者のオフィシャルHPを見ても一目瞭然だ。 オバマのサイトには、「バラクTV」とういう非常に充実した動画のコンテンツがあり、オバマ自身のスピーチやサポーターの声など、いずれも高解像度のビデオで見切れないほどの量がある。 例えば、「Wemen for Obama」という20分近いビデオでは、妻のミッシェルのオバマ評を始め、作家のAlice Walkerやキャンペーンディレクターの女性を始め、オバマを支持しているさまざまな女性が登場して語る。「彼は信頼できる」「彼の母や女の兄弟など、すばらしい女性がバラクを『強い女性にも怖気づかない男』に育てた(妻ミッシェル)」といった声を通して、バラクの正直さ、思いやり(empathy)の能力などに、女性達が魅了されているのがわかる。 そして彼がそうした広い心を持ちながら、同時に高い知的な能力を併せ持つことに多くの男性も惹かれている。
ちなみにwww.barakobama.comに登録すれば、週に2-3回オバマキャンペーンの最新情報が、オバマ自身の声としてメールで送られてくる。 オバマキャンペーンは、大口献金家を廃し、個人のそれで成り立っている。 3月4日までに100万人に到達するのが目標ということだが(23日午前9時現在で、961,856人)、3時間で1000件近く増えているところからすると、あと8日間くらいで4万になるので、ちょうど3月4日直前に100万件に到達するのではないだろうか (残念ながら、ネットからの献金はUS市民に限られていて、日本からはできなかった。) 一方のクリントン陣営のサイトは、デザインやコンテンツの量を見ても、オバマ陣営には遠く及ばない。 トップページでは、オバマがオハイオ、テキサスで投入する200万ドルの宣伝費の4分の一しか集まっていないというグラフが出ていて、help close the gapの文字が躍り、献金集めに必死になっている様子が伝わって淋しいものがある。 まだ世論調査では互角のようだが、勝敗はすでに決しているという感を強くした。
「オバマは言葉だけで、政治のリアリズムからは乖離している」というクリントン陣営の必死の攻撃にも、オバマは「そうすると私をサポートしてくれている多くの人たちは、皆んな妄想家―delusionaryなのだろうか。政治と切り離されている国民を鼓舞し、彼らの元に政治を取り戻さなければならないと感じているからこそ私を支持しているのではないか」と応える。 これに対してヒラリーは、返す有効な言葉を持たない。 格差の拡大や分断化されるアメリカは、グローバル資本主義や適者生存の論理の帰結として致し方ないものだと諦め、むしろそれを加速してきたブッシュ政治に対し、オバマはFDR(フランクリン・ルーズベルト)の言葉を引きながら、“In the strength of great hope, we must all shoulder our common load. It is an faith in American ideal that carries us through”と呼びかける。 「911以降のこの7年間、国民は『恐怖』を押し付けられてきた。これからは『希望』を語るべきときだ」という妻のミッシェルの言葉がこれに呼応する。
オバマとクリントンの政策の差は、確かにそんなにない。 彼の政策には、まず格差の是正と弱者の救済があり、つまりミドルクラスの減税、高くなりすぎた医療保険と年金制度の再構築、教育の機会均等、雇用の創出などが軸である。 経済については、グローバル資本主義の現実は理解しながら、その中での機会均等、国内の産業の振興を唱えている(NAFTAや議論中のCAFTAに反対しているのはどうかと思うし、国際競争の中で、アメリカの従来の製造業の雇用を維持するのは現実的に難しいと思われるので、新しい産業や公共インフラの刷新によって国内雇用を増やすことになると思う。) 彼の昨年9月のニューヨークNASDAQでの演説を読むと、例えばサブプライムローン問題では、借り手の現実を無視した無謀な貸し手の行き過ぎを是正する措置について突っ込んで述べているし、アメリカの経済をfence off the world することはできない、「世界がフラットになったことが問題なのではなく、競争の機会が均等でなくなっているのが問題なのだ」としていることから、かつての管理貿易的な発想に固まっているのでなく、現代資本主義社会のリアリティーはよく理解しているようだ。
オバマが大統領になる日が近づいているのだろうか。 アメリカは、かつてベトナムで失敗しながらも、今世紀再び軍事力でイラクやアフガニスタンを変えようとして失敗した。 またユーロの台頭でドル支配は崩れつつあるし、BRICSなどの新興市場の発展で、冷戦の終結から10数年間続いた世界におけるその圧倒的な影響力は相対化していくだろう。 人口の非白人の比率が益々増える中で、新しいアメリカを創造できるかどうかの転換点に差し掛かっているように思う。 既得権益や影響力や悲観主義に支配されやすい人間社会において、このような再生への作業が本当に可能かどうかは未知数だ。 しかし、その壮大な事業にこの46歳の若いmulti racialなリーダーはとりかかろうとしているようだ。 もし、成し遂げることができれば、アメリカは再び世界の人々の尊敬の対象となり、人間の未来にとって、新しい道を指し示すことができるかもしれないのである。
テキサスとオハイオでオバマを逆転しない限りもう後がないという背水の陣に追い込まれているヒラリーだが、この日はオバマのスピーチが借り物(plagearism-剽窃)であると少し攻撃はしたが、概して穏やかで悟ったような表情であったように思う。 話題になった場面は、かつてない高い関心をこの大統領選にもたらして一年間戦ってきたヒラリーが、お互いに切磋琢磨してきた時間を振り返りながら、ここに来てオバマという相手を心から称え、「この候補には負けても本望だ」という境地に達したと感じさせるモーメントであったと私は思った。ヒラリーも自身の真正な感情を素直に見せるほど、ここまで全力を尽くしてきたのであり、たとえ敗北しても、今後のH.クリントンの評価や活動にとってプラスになるはずだ。
今やヒラリーとオバマの勢いの違いは、両者のオフィシャルHPを見ても一目瞭然だ。 オバマのサイトには、「バラクTV」とういう非常に充実した動画のコンテンツがあり、オバマ自身のスピーチやサポーターの声など、いずれも高解像度のビデオで見切れないほどの量がある。 例えば、「Wemen for Obama」という20分近いビデオでは、妻のミッシェルのオバマ評を始め、作家のAlice Walkerやキャンペーンディレクターの女性を始め、オバマを支持しているさまざまな女性が登場して語る。「彼は信頼できる」「彼の母や女の兄弟など、すばらしい女性がバラクを『強い女性にも怖気づかない男』に育てた(妻ミッシェル)」といった声を通して、バラクの正直さ、思いやり(empathy)の能力などに、女性達が魅了されているのがわかる。 そして彼がそうした広い心を持ちながら、同時に高い知的な能力を併せ持つことに多くの男性も惹かれている。
ちなみにwww.barakobama.comに登録すれば、週に2-3回オバマキャンペーンの最新情報が、オバマ自身の声としてメールで送られてくる。 オバマキャンペーンは、大口献金家を廃し、個人のそれで成り立っている。 3月4日までに100万人に到達するのが目標ということだが(23日午前9時現在で、961,856人)、3時間で1000件近く増えているところからすると、あと8日間くらいで4万になるので、ちょうど3月4日直前に100万件に到達するのではないだろうか (残念ながら、ネットからの献金はUS市民に限られていて、日本からはできなかった。) 一方のクリントン陣営のサイトは、デザインやコンテンツの量を見ても、オバマ陣営には遠く及ばない。 トップページでは、オバマがオハイオ、テキサスで投入する200万ドルの宣伝費の4分の一しか集まっていないというグラフが出ていて、help close the gapの文字が躍り、献金集めに必死になっている様子が伝わって淋しいものがある。 まだ世論調査では互角のようだが、勝敗はすでに決しているという感を強くした。
「オバマは言葉だけで、政治のリアリズムからは乖離している」というクリントン陣営の必死の攻撃にも、オバマは「そうすると私をサポートしてくれている多くの人たちは、皆んな妄想家―delusionaryなのだろうか。政治と切り離されている国民を鼓舞し、彼らの元に政治を取り戻さなければならないと感じているからこそ私を支持しているのではないか」と応える。 これに対してヒラリーは、返す有効な言葉を持たない。 格差の拡大や分断化されるアメリカは、グローバル資本主義や適者生存の論理の帰結として致し方ないものだと諦め、むしろそれを加速してきたブッシュ政治に対し、オバマはFDR(フランクリン・ルーズベルト)の言葉を引きながら、“In the strength of great hope, we must all shoulder our common load. It is an faith in American ideal that carries us through”と呼びかける。 「911以降のこの7年間、国民は『恐怖』を押し付けられてきた。これからは『希望』を語るべきときだ」という妻のミッシェルの言葉がこれに呼応する。
オバマとクリントンの政策の差は、確かにそんなにない。 彼の政策には、まず格差の是正と弱者の救済があり、つまりミドルクラスの減税、高くなりすぎた医療保険と年金制度の再構築、教育の機会均等、雇用の創出などが軸である。 経済については、グローバル資本主義の現実は理解しながら、その中での機会均等、国内の産業の振興を唱えている(NAFTAや議論中のCAFTAに反対しているのはどうかと思うし、国際競争の中で、アメリカの従来の製造業の雇用を維持するのは現実的に難しいと思われるので、新しい産業や公共インフラの刷新によって国内雇用を増やすことになると思う。) 彼の昨年9月のニューヨークNASDAQでの演説を読むと、例えばサブプライムローン問題では、借り手の現実を無視した無謀な貸し手の行き過ぎを是正する措置について突っ込んで述べているし、アメリカの経済をfence off the world することはできない、「世界がフラットになったことが問題なのではなく、競争の機会が均等でなくなっているのが問題なのだ」としていることから、かつての管理貿易的な発想に固まっているのでなく、現代資本主義社会のリアリティーはよく理解しているようだ。
オバマが大統領になる日が近づいているのだろうか。 アメリカは、かつてベトナムで失敗しながらも、今世紀再び軍事力でイラクやアフガニスタンを変えようとして失敗した。 またユーロの台頭でドル支配は崩れつつあるし、BRICSなどの新興市場の発展で、冷戦の終結から10数年間続いた世界におけるその圧倒的な影響力は相対化していくだろう。 人口の非白人の比率が益々増える中で、新しいアメリカを創造できるかどうかの転換点に差し掛かっているように思う。 既得権益や影響力や悲観主義に支配されやすい人間社会において、このような再生への作業が本当に可能かどうかは未知数だ。 しかし、その壮大な事業にこの46歳の若いmulti racialなリーダーはとりかかろうとしているようだ。 もし、成し遂げることができれば、アメリカは再び世界の人々の尊敬の対象となり、人間の未来にとって、新しい道を指し示すことができるかもしれないのである。