民主党は、マニフェストに沖縄の負担軽減と基地の県外移設を書いており、その沖縄県民の期待に応えるとともに、新しい日米安保の形を模索したい、という腹だが、辺野古の代替案もなく、新しい日米安全保障体制の青写真もないままに、この件を再燃させ、今や大きな政治的問題に発展してしまった。
アフガンに軍隊を増派し、内政では経済の低迷で支持率が50%を割ったというオバマ政権には、日本の政権が変ったからといって、折角成し遂げた合意を振り出し戻して、最初から議論をする余裕など全くない、というのが実情だろう。 普天間返還および辺野古への移転は、96年のSACO(Special Action Committee on Okinawa)という日米合意に遡り、その後、沖縄県や名護市の賛否がゆれる中で、10年以上をかけてようやく辺野古でのV字滑走路という案で、2006年に合意が出来たという政治的経緯もある。
しかし、ここまで政治問題化した今、やはり辺野古を飲んでくれ、と再度沖縄県や名護市を説き伏せるのは容易ではないだろう。 検討しなおすとした以上、ある程度の時間をかけた検証、アメリカとの交渉を経ないかぎり、反対派が少なからずいる地元は納得しまい。 もし、何とか首長を説得できたとしても、今や反対派が多数となった沖縄県議会や、現場で座り込みや櫓を立てて、防衛施設庁の海洋調査を妨害している市民団体との軋轢は長引き、成田空港拡張工事のように、強行しても建設が予定どおりいかない可能性もある。
経済危機とアフガン問題、中国の台頭などで弱体化しているアメリカにとって、日本が極東と東南アジア、中東での戦略的パートナーとなって支えてくれれば、大いに感謝されるだろう。 小泉政権が、イラク復興支援に際し、インド洋での給油やサモアでの給水活動と大きく踏み込んで対米協力したのに比較し、来年からは給油は中止、在日米軍の再編の実施も見直しとなれば、鳩山政権に対して、大きな失望と不満が広がることは必定だろう。
当面、アメリカが東太平洋からインド洋の地域における軍事抑止力を減らす気がない以上、沖縄に海兵隊がすぐに展開できる飛行基地の確保をギブアップする可能性は極めて少ない。
自衛隊を強化して、米軍撤退の穴を埋めるというのが、鳩山を含む自主独立防衛論者の本音かもしれないが、その点に関する政府内や国民の間のコンセンサスは形成されていない。 在日米軍が4万人近く国内に駐留し、年間6000億円以上の経費(兵士一人当たり1千万円を越す)を日本が負担するという、世界で突出した「思いやり予算」を継続していることへの疑問も、戦後60余年経った今、当然議論されていい問題であろう。 しかし、そうしたオープンな議論をこれまで封印してきた付けが今回ってきている。
アメリカ軍は、8000人以上の海兵隊を沖縄からグアムに移すことを決め、沖縄の負担軽減には、理解を示してもきた。 新たに基地を県内に誘致することをOKする首長が全国どこにもいない状況で、県外移設は絶望的だ。 とすれば、辺野古に移転するしか選択肢はないのではないかと思われる。
アメリカとの同盟関係がしばらく冷却関係に陥っても、安保体制と基地問題を最初から議論する覚悟が現政権にあるのかというと、それは多分に疑わしいし、政府内の統一はとれていない。 果たしてどういう方向に舵を切るのか。 鳩山政権は、やはり「パンドラの箱」を開けてしまったということか。
参考図書: 米軍再編―日米「秘密交渉」で何があったか (講談社現代新書) 久江 雅彦 著
アフガンに軍隊を増派し、内政では経済の低迷で支持率が50%を割ったというオバマ政権には、日本の政権が変ったからといって、折角成し遂げた合意を振り出し戻して、最初から議論をする余裕など全くない、というのが実情だろう。 普天間返還および辺野古への移転は、96年のSACO(Special Action Committee on Okinawa)という日米合意に遡り、その後、沖縄県や名護市の賛否がゆれる中で、10年以上をかけてようやく辺野古でのV字滑走路という案で、2006年に合意が出来たという政治的経緯もある。
しかし、ここまで政治問題化した今、やはり辺野古を飲んでくれ、と再度沖縄県や名護市を説き伏せるのは容易ではないだろう。 検討しなおすとした以上、ある程度の時間をかけた検証、アメリカとの交渉を経ないかぎり、反対派が少なからずいる地元は納得しまい。 もし、何とか首長を説得できたとしても、今や反対派が多数となった沖縄県議会や、現場で座り込みや櫓を立てて、防衛施設庁の海洋調査を妨害している市民団体との軋轢は長引き、成田空港拡張工事のように、強行しても建設が予定どおりいかない可能性もある。
経済危機とアフガン問題、中国の台頭などで弱体化しているアメリカにとって、日本が極東と東南アジア、中東での戦略的パートナーとなって支えてくれれば、大いに感謝されるだろう。 小泉政権が、イラク復興支援に際し、インド洋での給油やサモアでの給水活動と大きく踏み込んで対米協力したのに比較し、来年からは給油は中止、在日米軍の再編の実施も見直しとなれば、鳩山政権に対して、大きな失望と不満が広がることは必定だろう。
当面、アメリカが東太平洋からインド洋の地域における軍事抑止力を減らす気がない以上、沖縄に海兵隊がすぐに展開できる飛行基地の確保をギブアップする可能性は極めて少ない。
自衛隊を強化して、米軍撤退の穴を埋めるというのが、鳩山を含む自主独立防衛論者の本音かもしれないが、その点に関する政府内や国民の間のコンセンサスは形成されていない。 在日米軍が4万人近く国内に駐留し、年間6000億円以上の経費(兵士一人当たり1千万円を越す)を日本が負担するという、世界で突出した「思いやり予算」を継続していることへの疑問も、戦後60余年経った今、当然議論されていい問題であろう。 しかし、そうしたオープンな議論をこれまで封印してきた付けが今回ってきている。
アメリカ軍は、8000人以上の海兵隊を沖縄からグアムに移すことを決め、沖縄の負担軽減には、理解を示してもきた。 新たに基地を県内に誘致することをOKする首長が全国どこにもいない状況で、県外移設は絶望的だ。 とすれば、辺野古に移転するしか選択肢はないのではないかと思われる。
アメリカとの同盟関係がしばらく冷却関係に陥っても、安保体制と基地問題を最初から議論する覚悟が現政権にあるのかというと、それは多分に疑わしいし、政府内の統一はとれていない。 果たしてどういう方向に舵を切るのか。 鳩山政権は、やはり「パンドラの箱」を開けてしまったということか。
参考図書: 米軍再編―日米「秘密交渉」で何があったか (講談社現代新書) 久江 雅彦 著