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yasuの「今日もブログー」

日々に感じ、考えたことを記していきます。読書、メディア、時事などイロイロです。

佐藤優という罠(今週のAERAから)

2007-04-16 | 時事、社会
今週号の「AERA」はカバーストーリーに「佐藤優という罠」という記事を持ってきていた。書いたのは、ライブドア事件のレポートで名を馳せた大鹿靖明だ。 佐藤優は、今やメディアの寵児だそうだ。 「正論」から「論座」まで、文春からアサ芸まで、右も左も彼を起用し、月間の原稿は40本に上るという。 キリスト教神学の専門知識とマルクスなど豊富な読書量に支えられたを知識と、何よりもソ連崩壊後のロシア外交に奔走(暗躍?)し、外務省のラスプーチンといわれて「国策捜査」で逮捕起訴されたという際立った経歴を持つ。 知性と泥臭い行動力がごた混ぜになった「怪物」というイメージは、彼の著書で増幅され、その風貌とあいまって、今や「言論界がひれ伏す存在」とまで持ち上げられている。 

佐藤の母は、沖縄久米島の出身。 記者の大鹿はそこに佐藤のアウトサイダーのルーツを見る。 佐藤自身は関東で育ち、名門埼玉高校を卒業し東大を受けたが失敗し、浪人して同志社の神学部に入る。 1年のときから教師にキルケゴールについて質問を浴びせるような、早熟さだったという。 外交官試験は、一部も二部も受けたようだが、一部は失敗し、ノンキャリアの二部で採用されたという、これまで知られてなかった経歴も披露されている。 2002年に鈴木宗男をともに、背任罪で逮捕されてから500日を越す拘留を経て有罪控訴中の今日までに9冊以上の著書を出している。既にこのブログでもレポートしたとおり、ソ連崩壊の舞台裏をドキュメントした「自壊する帝国」や、14万部のベストセラーになり「国策捜査」という言葉を世に膾炙させた「国家の罠」、手嶋龍一との「インテリジェンス」を論じた対談など、言論に興味を持つ読者にとっては、ホリエモンや村上義彰ばりの注目度であることは間違いない。

首相官邸の直接の指示の下で行われたといわれ宗男事件。 外務省では、キャリアは「人間」、ノンキャリアは「猿」と呼ぶ隠語があるという。 大鹿は、佐藤優は自分を追放した外務省に対する壮大なる「復讐」を実行しており、その筋書きは既に「拘置所」で入念に書かれたものだと推測する。 鈴木宗雄自身が「佐藤さんのシナリオどおり演じた」と認め、外務省高官も小泉の飯島秘書官もマトモニは論評を加えたがらないほど、枠をはみ出した独自の知性と行動力を持った怪物であることは疑いないのだろう。 外務省の高官や「国策捜査」を担当した西村検事は、佐藤は「都合のいいことしか書いていない」というが、そんなことはお構いなくこの怪物は「復讐」と言論界へのプロレスを仕掛けている。 手嶋と佐藤という二人のインテリジェンスオフィサーの対談を好意的に読めば、佐藤を駆り立てているのは、日本の外交力を高め、国益を追求するために欠けている要素を暴き出し、日本を目覚めさせるという純粋な動機に基づいているかもしれない、ともいえる。 

大鹿靖明は、ホリエモンに続いて、佐藤優という読者の頭の中に仕掛けられつつある「罠」を顕在化して見せた。 正にジャーナリスティックな仕事だといえよう。


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