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妙義の岩峰

2006-05-03 | 山歩き

久しぶりに山行に行った。 山の師匠であるB氏から、「妙義」と聞いて、なんか岩が多い山だったかな、くらいで臨んだ一年ぶりの登山だったか、緊張感あふれる岩場、鎖場の連続であった。

この日は、5時にB氏に自宅近くまで迎えに来てもらった。 B氏と会うのもちょうど1年ぶり。 去年同じくGWに雲取山に行って以来である。 東名青葉から環八を北上し、関越に入るのに40分少々だからさすがに早朝は流れが速い。 上信越道に入って、妙義インターで降りるが、食料を確保すべきコンビ二を探すのに下仁田方面に逆戻りしたため、妙義神社麓の駐車場に着いたのは7時過ぎとなった。 連休中とはいえ平日なのでクルマは少ない。

7時15分に歩き出し、まず妙義神社の本殿に到る杉の大木が両側に生えた参道の石段を上る。 えらく綺麗に整備されていると思ったら、昨年NHK大河ドラマ「義経」の鞍馬山の場面は、ここで撮影されたと後で知った。 

重要文化財の本殿に御参りし、拍手を打って登山道に入ろうとすると、地元の人らしきカメラを抱えた中年の男性が、縦走は約8時間と教えたくれた。 標高はたかだか1100mほどだからそんなにかかるまいと思ったが、そうは問屋が卸さなかった。

麓から山腹の7合目あたりに見えた「大」の字あたりまでいきなり急登が続く。一休みしてそれから上を目指すといきなり30mの鎖場が出現。 しかし、一昨年北穂から涸沢岳、奥穂、前穂と縦走し岩場を経験しているから、このくらいはさして怖くはない。 程なくして、表妙義の一番東のピークに立った。 ややモヤってはいるが眺望は360度開け素晴らしい。  ここまでが2時間少々というところ。 その後は縦走に入り、天狗山、相馬山とピークを重ねるが、溶岩の斜面の登坂や風化が進みつつある足場の悪い下りの繰り返しで、かなり注意と体力を使う。




しかし、岩場の多いこの縦走路のハイライトは、バラ尾根(お花の薔薇ではなくて、茨の尾根の意)を過ぎて、西側の岩峰の最初のピーク「東岳」に取り付く斜面にある「鷹戻し」と言われるスポットであった。 

鷹もその絶壁を怖れて後戻りするから「鷹戻し」と名付けられたという、この岩壁は、垂直に近い長い鎖場が約50m連続する。 登坂面には足場になる凹凸が少なく、2本の鎖を使って慎重に一歩一歩足場を探し丁寧に登って行かなくてはならない。 無茶をして腕力だけで登るのは禁物だ。足場がない中で、腕だけで体重を支えられる時間は限られている。 上に更に困難な鎖があるかもしれず、余力を残しておかないと危ない。 斜面の途中で立ち往生してしまったら、四肢の筋力が尽きたときに墜落するしかない、そう思うとここに来てしまったことが一瞬後悔される。 これまでと同様に克服できるだろうと思う気持ちと、しかし、今度の斜面は半端ではない、もし途中で上にも下にも行けず立ち往生してしまったらという不安が交錯する。

上方の斜面は長く、休息できる窪みははるか10m以上先まで見えない。B氏が慎重に登って行き、最初の窪地で一息付いた。 その後を慎重に両手で鎖を手繰りながら、数センチせり出しているに過ぎないわずかな岩の凹凸を探し、引っ掛かりになる足場を探りながら一歩一歩登る。 一箇所、どうしても足場がないところに来た。 少なくとも普通の一歩(70cm四方)には足をかけられるところはなく、一挙に1m以上左足を持ち上げるしかない、ぐっと効き足の右足を踏ん張った瞬間ふくらはぎが突っ張った。 まずい、と思いながら何とか座り込めるほどの最初の岩のリセスにたどり着く。 しかし、疲労しているところに過大に引っ張られた右脹脛の筋肉はピクついている。 この足で残りを登りきれるか、一瞬不安がよぎる。 マッサージをして筋肉を縮めたりして痛みは少し薄らぐ。あとは、突っ張らないように騙しだまし、残りの斜面に取り付いた。 そして、とうとう青色吐息で上まで辿り着いた。 緊張が解かれ、思わずへたり込む。



相馬山の頂上で一緒になったパーティのうち、昨日は裏妙義を歩いたという30代前半くらいの若者二人連れと、足取りの確かな40代の一人の男性は、同様に鷹戻しに挑戦したが、相馬山で話した50代の夫婦連れは、どうやら鷹戻しの手前で下山する道を選んだようだ。 B氏の持参した詳細の登山マップを見ると、50mある「鷹戻し」に一旦取り付いたら上りきるしかないし、その後も30m級の鎖の下りがあったりして、後戻りはきかない。 

鷹戻しからの下りにも、垂直に10m近く降りる箇所が2箇所ほどあり、気を使う。 なんとかそこらをクリアしするともう体力は限界に近い。

東岳からもう一息中の岳まで行くB氏とわかれ、一人下りの道に入る。ここも相当急で、ロープが張ってある箇所が多い。 第四の石門まで降りてきて、ひっくり返って急速する。 15分ほどで中の岳を回ってきたB氏も降りてきた。 ここからは、関東ふれあい道という山腹の道を4キロ少々、妙義神社まで歩く。 ところどころアップダウンのある道だから1.5時間はかかった。

駐車場まで辿り着き、すぐ近くにある温泉で今縦走してきた妙義山を眺めながら汗を流すと最高に気持ちがいい。 鷹戻しは、西穂と奥穂の間の縦走よりも厳しい斜面と、B氏いう。 しかし、多分2度と挑戦したいとは思わない、それほど緊張するモーメントであった。

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