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General の解体が始まった

2009-02-28 | GMと米自動車危機
第4四半期の販売は35%近く減少し、欧州はもとより、中国やブラジルといったこれまで北米の不振をカバーしてきた地域も一様に赤字に転落している。 監査法人は、GMの企業としての存続性(a going concern)の保障を留保しており、破綻の懸念が一段と強まったといわれている。

この決算発表とほぼ同時に、80年に渡ってGMの子会社だったオペルが、ドイツ政府に4000億円の政府支援を要請し、GMから分離して欧州の企業体として再生を図る旨を表明した。一週間前に、同じく100%子会社であるサーブが、スウェーデンで破産処理に入った。 GMは、これらの海外のオペレーションを切り離して、バランスシートの圧縮を図るとともに、北米でもハマー、サターンの両ブランドを解消、ポンティアックは縮小してブランドを4つに絞り、4万人以上の人員削減や工場の閉鎖などリストラを進めるという。 しかし、コスト低減が売り上げの減少に追いつかず、もはや経営的手段での自力再生は不可能であり、GMの生死は、政府に委ねられたと、NYタイムスは述べている。

決算と同じ日、GMのワゴナー会長は、ワシントンでオバマ政権の自動車救済チームと会談した。12~2月までの総額1.34兆円の融資に加え、2月17日に提出した改訂版再生プランで、4月以降1.6兆円の追加融資を要請しているが、これが簡単に認められることはなさそうだ。GMの債務超過は8兆円に上り、市場の回復の兆しが当分見えそうになく、年換算で1000万台程度という1月の販売水準がもう半年以上続くとすれば、毎月2000億円以上の現金の流失が続き、追加融資しても、年末まで持たない可能性がある。 

またGMのみならず、さらに存続の危ういクライスラーも4000億円の追加融資を要請しており、非上場企業への1兆円近い融資を含めて、巨額の税金を自動車産業につぎ込むことには、議会や国民の批判は必至であろう。 政府は、シティグループには4兆円以上をつぎ込み、36%まで株式を保有して国の管理下におくことを決めたが、競争力の衰えた自動車メーカーにそこまですることを、世論がどこまで容認するだろうか。

しかしながら、24日の議会でのオバマ大統領初の所信表明演説を聞くかぎり、再生可能エネルギー産業への投資と並んで、自動車産業を再生させることへの強力なコミットメントを与えている。「自動車を発明した国が、この産業を見放す(walk away)ことはありえない」(発明したのは、周知のとおりドイツで、この誤りについてコメント求めた米メディアに対して、ドイツ自工会は、「もちろんドイツは自動車産業からwalk away するなんて考えてみたこともない」と答えたそうだ。

オバマ大統領は53分の演説中で、まず金融を再生させ、Home とCarを国民が再び買えるようにする、と何度も繰り返している。 アメリカの自動車産業を復興することは、国の戦略的なプライオリティであるとしている。それほどの意気込みは確かに心強いことだ。 しかし、政府自らが優れた技術や燃費のいいクルマを発明することはできない。GMは、自ら小型車の再生を試みたサターンを19年の後に見放し、今や小型車のプラットフォームをほとんど担っていたオペルを失う。一体GMにどれだけの技術が残されているだろうか。シボレーボルトなどのプラグインハイブリッドやEVに起死回生をかけているのは、1月のデトロイトショーでもわかったが、フォルクスワーゲンなどによれば、電気自動車の本格的な普及はまだ相当先になりそうであり、この先10年ほどは、化石燃料を効率的に使用する内燃機関のクルマが主流だという。優れた小型エンジンや効率のいいトランスミッション、そしてコスト競争力において、日本勢やドイツ勢の後塵を拝していることは否めない。救済されたとしても、オバマ大統領が望むような再び世界をリードするような革新と再生が果たして可能かどうか、大きな疑問符が付く。

しかし、政治的には、このまま見放すことはなさそうだ。どうした形で救済をするのか。 融資となるのか、優先株の買取などのより踏み込んだ形をとるのか。 いずれにせよ、これまでのアメリカ社会の常識ではあり得なかったところまで政府が踏み込んでも、職を維持し、経済を早期に回復軌道に乗せることが、オバマ政権の最大のアジェンダであることは演説から十分伝わってきた。









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