ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

ジュリアン・デュヴィヴィエ・10〜『グレート・ワルツ』

2018年05月28日 | 戦前・戦中映画(外国)
『グレート・ワルツ』 (ジュリアン・デュヴィヴィエ監督、1938年)を観た。

勤めながらワルツの作曲に没頭するヨハン・シュトラウスは、とうとう銀行をクビになってしまう。
解雇されてせいせいしたシュトラウスは、近所の音楽愛好者たちを集めて楽団を編成し、レストランで、作曲したワルツの演奏会を催した。
しかし客入りは思わしくなく、と、そこへ帝国オペラ劇場の歌姫カーラ・ドーナとテナー歌手シラーがやって来る。

演奏を耳にしたカーラは、その帰り際、宮殿で行われる夜会にシュトラウスも来てくれるよう言づけていく。
その後、レストランの窓をオープンにした演奏会は、盛り上がりと共に街中の人々を呼び寄せ、大成功のうちに終わった。

紳士淑女が集まる宮殿。
ウィーンの上流社会では野卑として軽蔑されているワルツ。
だがカーラは、敢えてシュトラウスのワルツを歌い、喝采を浴びる。
そして、シュトラウスとカーラの間に自然と恋が芽生えてくるが、
そこに現われたのは、何と、カーラと睦まじい間柄にあるパトロンのホーエンフリート伯爵であった・・・

カーラに愛人がいるショックを受けたシュトラウスは、元々お互い好きな仲のパン屋の娘ボルディと結婚する。
身内と友人だけの結婚式の、その最中に訪ねてきた著名な音楽出版者のホフバウアーは、早速シュトラウスと契約をする。

これでシュトラウスの方も将来的な安定を得ていくが、時は革命の真っ只中、と話は進んでいく。

19世紀オーストリアの、「ワルツ王」ヨハン・シュトラウス2世の音楽ドラマ。

でも、そこに描かれている内容は、思いを寄せあうシュトラウスとカーラ、それに対する妻ボルディの悲しみと孤独な心情。
特に、ボルディ役のルイーズ・ライナーの、内に秘めた優しさで夫を愛し続けるひたむきな姿が心を打つ。
それと共に、カーラ役のオペレッタ歌手、ミリツァ・コージャスが美貌と歌唱力を併せ持ってピカイチである。
このような俳優をデュヴィヴィエは使いながら、それでも深刻過ぎることもなく、観る者を引き付ける演出力にとても興味が尽きない。
そればかりか、「ウィーンの森の物語」や「美しく青きドナウ」の誕生秘話も、事実を思い切り脚色したそれが、映画的な魅力いっぱいになっている。
観ている最中も観終わった後でも、映画っていいなと感じさせる素敵な作品であった。
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