ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

『ディーパンの闘い』を観て

2016年02月17日 | 2010年代映画(外国)
名古屋へ行って、カンヌ・パルムドール受賞作の『ディーパンの闘い』(ジャック・オディアール監督、2015年)を観てきた。

内戦下のスリランカを逃れ、フランスに入国するため、赤の他人の女と少女とともに“家族”を装う元兵士ディーパン。
辛うじて難民審査を通り抜けた3人は、パリ郊外の集合団地の一室に腰を落ち着け、ディーパンは団地の管理人、女ヤリニは家政婦の職を手にする。
日の差すうちは外で家族を装い、ひとつ屋根の下では他人に戻る日々。
それでも、少しずつ環境に慣れるに従い、ぎすぎすした彼らの関係にも変化が表れ・・・・
(パンフレットより一部抜粋)

この偽装難民の“家族”はスリランカの少数民族、タミル系住民。
そして、ディーパンは「タミル・イーラム開放の虎」の元兵士という設定になっている。
だから、フランス映画であってもタミル語を中心に話が進んでいく。

戦下からフランスに渡って来ても、そこは、生活を支えるのがギリギリの底辺層の団地。
団地周辺には、ギャングまがいの不良青年たちがたむろしていて不穏な環境。
ヤリニが行く家政婦先の老人宅の甥ブラヒムは、麻薬密売組織のリーダーをやっている。
それでも、この“家族”は仕事にありつけて、少女イラヤルは小学校の外国人クラスに行けるだけマシ。
(フランスの場合、教育費は無料のはずだとしても)。

パリといえば、華やかな面ばかり思い浮かべるけど、近郊に行けばこのような感じの所があるだろうという現実。
それを、オーディアール監督は物語の背景、スリランカのことや麻薬売買のことを意図的に説明せずに映し出していく。

その省略で、説明不足だなと思った点は、偽装のこと。
私は、ディーパンも含めて三人とも偽装人と思って、ずぅっと観ていた。
そしたら、ディーパン自身は本人らしい。
このことは、観方の印象に問題が残り、途中場面、ディーパンが「タミル・イーラム開放の虎」の上官の命令を拒否する理由づけが違ってきてしまう。
最初に、基本的な設定はちゃんとわかるように丁寧に教えてくれればいいのにと思う。

それと、麻薬売買人のブラヒムがヤリニに銃を突き付けて、ディーパンに電話を掛けさせるところ。
ここのところの電話をさせる理由がよくわからない。ブラヒムのそうしなければいけない心情がどうしても理解できない。
これが理解できないと、その後、急展開していく場面の、ディーパンの行動の意味合いが納得できない。
と思って、パンフレットを買って読んでみたけれど、どこにもそこのシーンについて具体的なことが書いてない。
せめて、パンフレットにはシナリオぐらい載せてもらわないとお金を払う意味がない。
このぐらいの内容なら、今では公式サイトをネットで読めばいいなと、恨めしく思う。

そんなんで、カンヌの最高賞をもらった理由も、現在のヨーロッパにおける移民、難民問題を反映して、多少影響しているかなと勘ぐってしまった。
と言っても、出来はしっかりしているし、ヤリニ役のカレアスワリ・スリニバサンだけは舞台役者としても、3人とも映画初の作品。
そういうことを全体的に考えてみれば、難民問題も含め、やっぱりいい映画だったなと思う。
本当は、ラストの場面の印象についても書きたいけど、まだ上映中の映画なので割愛してこれまで。

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2 コメント

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読者登録ありがとうございます! (エーコ)
2016-02-18 22:17:21
はじめましてyasutu_1949さん!

映画大好きなエーコです!

好みは濃い人間関係物でリアルでないと全く見る気がしません。

そうかと思えば、SF・ファンタジーも大好きだったりします。

私が宇宙人だからですかね?

こんな私ですが今後ともよろしくお付き合いください!
返信する
>エーコさんへ (初老ytおじ)
2016-02-18 23:26:20
コメントそして登録を、こちらこそありがとうございます。
私もどちらかと言うと、人間関係がしっかり描かれていないとダメな方です。
変な言い方ですが、ブログを立ち上げてから、以前にも増して、最近よく映画を観るようになりました。
今後とも、よろしくお願いします。
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