ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

『ブラインド・マッサージ』を観て

2017年03月08日 | 2010年代映画(外国)
『ブラインド・マッサージ』(ロウ・イエ監督、2014年)を観た。

場所は南京。
幼い頃、交通事故で失ったシャオマーの視力は、医師の診断では“いつか回復する”と言われていたが、その気配は全くない。
やがて成長したシャオマーは、マッサージ院で働きだす。
そこでは、院長のシャーとチャンも含め、様々な盲人が働いている。
そのマッサージ院に、シャーの同級生だったワンとその恋人のコンが、シャーを頼ってやってくる・・・

院長のシャーは、結婚を夢見て見合いを繰り返す。
新人ドゥ・ホンは、“美人すぎる”と客から評判であっても、見えない自分には意味をなさない。
シャオマーは、ワンと駆け落ち同然で転がり込んできたコンに、今までにない色香を感じ欲望を覚え始める。
そして、働いている他の人たちのそれぞれのエピソード。

それは、決して健常者と何ら変わりのない、彼らの日常。
そのような日常の仕事の中で、何らかの事情や思いを抱えている人たち。
怒って、笑って、喧嘩もし、傷つき、悩み苦しむ。
そんな青春の痛みがひとつずつほぐれるようにして、その向こう側に夢や希望が滲む。
そこにあるのは、健常者とか障がい者とかのカテゴリーではなく、人としての情感。

物語は、シャオマーを主にして進むが、そのシャオマーと風俗店で働くマンとの出会い、
また、ワンの弟の借金問題によって次第に緊迫感が張りつめてくる。
ことはマッサージ院内だけの事ばかりでなく、外の世界へと繋がりが拡大していく。

監督のロウ・イエは、それぞれの人間の内面を浮き彫りにしながら、的確な映像表現で物事を捉える。
特に、シャオマーの目から見た外界のあり様には、ハッとさせられる。
視力障がい者からの物の見方が、違和感もなく、かつ、なじみ易く、そして今まで意識していなかったことを気付かせてくれる、
これは、そんなことを感じさせる優れた作品であった。

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2 コメント

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珍しい作品 (ろこ)
2017-03-08 21:54:10
こんにちは。
 中国映画もご覧になるのですね。
 私が初めて見た中国映画は「初恋の来た道」原題:我的父親母親)です。
 1999年公開の中国映画です。
 アジアの映画はほかにベトナムの「夏至」
 とっても情調があってよかったです。
 アジアの映画は、しっくりと心に寄り添ってくれますね。
 ご紹介の映画は、ちょっとユーモラスなタッチのヒューマンドラマのようですね。
 ありがとうございました。
 
 
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>ろこさんへ (ツカヤス)
2017-03-09 00:19:22
「初恋の来た道」はとっても良かったですね。
監督のチャン・イーモウ(張芸謀)の作品は、デビュー作「紅いコーリャン」でビックリして以来、意識するようにしています。
「初恋の・・・」の主演チャン・ツィイーもあれ以後有名になりましたし。思い出深い作品です。
中国は映画の宝庫で、すごく好きです。
もっとも、中国だけでなく、東南アジアには良い作品がいっぱいあったりしますね。
「夏至」は未見ですが、同監督の「青いパパイヤの香り」を観ていますので、題名は知っていました。
紹介くださってありがとうございます、機会があったら是非観ようと思います。
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