ポケットの中で映画を温めて

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『COLD WAR あの歌、2つの心』を観て

2019年07月14日 | 2010年代映画(外国)
久し振りに映画館に行き、『COLD WAR』(パヴェウ・パヴリコフスキ監督、2018年)を観てきた。

1949年、ポーランド。
プロデューサーである音楽家のヴィクトルは、郷土音楽を広めるために合唱舞踊団の養成オーディションを行う。
その中にズーラもいて、晴れて民族合唱舞踊団マズルカへの入団が実現する。

ダンス、歌と練習を重ねて、合唱舞踊団マズルカは1951年、ワルシャワでの公演を成功させる。
ヴィクトルとズーラは、その頃には愛する関係になっていた。
片や政府は、スターリンや農業改革を称賛する歌を歌うように圧力をかけてくる。

1952年、ベルリンでの公演。
祖国での息苦しさを感じているヴィクトルは自由を求めて、二人でパリへ亡命しようとズーラを誘う。
ズーラもその気だったが、ヴィクトルが待つ約束場所にはいつまで経っても現れなかった・・・

2年後。
パリのクラブでジャズ・ピアニストになり、作曲活動をしながら生活しているヴィクトル。
そのパリに公演に来ていたズーラ。
二人は再会し、互いに愛人がいると言いながらも、会ってしまえば以前からの愛が燃え上がる。

その後も時はズレながら、ユーゴスラビアやまたパリと、二人は離れたりくっついたりを繰り返す。
ヴィクトルとズーラの屈折した愛情表現を見ていると、冷戦時代のポーランドの実情はほどんど出て来なくても、二人に強く影響していることが見て取れる。
そして、その雰囲気を醸し出すためにパヴリコフスキは、敢えてモノクロの画面を採用している。
そのメリハリの効いた映像が、実に素晴らしい。
特に舞踏合唱団が歌う場面や、ジャズを奏でるクラブの雰囲気は何とも言えない程いい。

一般的には、二人の愛の表現に違和感があるかもしれない。
と言うのは、時が経った後のズーラには子どもがいるが、見向きもせずにヴィクトルのもとに駆け寄り、抱擁したりする。
だから一瞬、倫理的にはアレレとなるが、私にとっては一向にかまやしない。
それより、恋愛ものと言えば何かとロマンティックな内容になりがちなのを、それとかけ離れた目的としているのがいい。
ラストの、風景の中の二人が画面から消えるシーン。
その余韻の深さにズシリとした重さを感じられずにはおれず、これは重要な作品であると認識させられた。

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