ポケットの中で映画を温めて

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『ビヨンド・ユートピア 脱北』を観て

2024年02月04日 | 2020年代映画(外国)
『ビヨンド・ユートピア 脱北』(マドレーヌ・ギャヴィン監督、2023年)を観てきた。

韓国で脱北者を支援するキム・ソンウン牧師の携帯電話には、日々何件もの連絡が入る。
これまでに1000人以上の脱北者を手助けしてきた彼が直面する緊急のミッションは、北朝鮮から中国へ渡り、山間部で路頭に迷うロ一家の脱北だ。
幼い子ども2人と80代の老婆を含めた5人もの人たちを一度に脱北させることはとてつもない危険と困難を伴う。
キム牧師の指揮の下、各地に身を潜める50人ものブローカーが連携し、中国、ベトナム、ラオス、タイを経由して亡命先の韓国を目指す決死の脱出作戦が行われる・・・
(公式サイトより)

凄い作品を、時間を忘れ一気に観させられたと言うのが率直な感想である。
ドキュメンタリーとして映し出される緊迫した同時間的な流れ。
観ている方も必然的に、それを同体験させられ画面から一時も目を離せられない。

この作品の優れていると思うのは、ロ一家の5人の脱北だけを映し出すだけでなく、並行して、今は韓国にいる脱北者リ・ソヨンの息子チョンの脱北の試みも同時に組み入れていること。
その対比によって一層の緊迫感が醸し出されている。
そのチョンは、折角中国まで脱北したが、ブローカーが裏切って当局に通報したために北朝鮮へ強制送還されたという。
と言うことは、チョンにはこの先どんな運命が待っているのか。
離ればなれとなって、ずっとチョンと会っていないその母親リ・ソヨンの心情を思うと胸が締め付けられる。

その二つの脱北をメインに捉えながら作品は、脱北者で脱北の体験の著作もある活動家イ・ヒョンや他の支援者のこと、
そして日本による戦前の朝鮮統治から戦後の金日成による朝鮮民主主義人民共和国の建国、その後の金正日、金正恩による3代世襲の独裁体制、
そこからくる最高指導者への個人崇拝と絶対服従が分かりやすく組み込まれ、それによって内容がより立体的となっている。

それにしてもこの作品の中心人物である支援者キム・ソンウン牧師の精力的な活動には本当に頭が下がる思いがする。
そしてその裏返しとして、現在の金正恩の独裁体制はどうにかならないのかと憤りを感じる。
そのような感想と感銘を受けながら、この作品を日本国中と言わず世界中の人々にも観てもらいたいと強く思った。

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