ポケットの中で映画を温めて

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『落下の解剖学』を観て

2024年03月01日 | 2020年代映画(外国)
『落下の解剖学』(ジュスティーヌ・トリエ監督、2023年)を観てきた。

人里離れた雪山の山荘で、男が転落死した。
はじめは事故と思われたが、次第にベストセラー作家である妻サンドラに殺人容疑が向けられる。
現場に居合わせたのは、視覚障がいのある11歳の息子だけ。
証人や検事により、夫婦の秘密や嘘が暴露され、登場人物の数だけ<真実>が現れるが──。
(公式サイトより)

死亡した男性は、事故か、自殺か、他殺か、その不審死の真相を求めての法廷劇。
そこで暴かれるのは、仲睦まじそうにみえた夫婦の間柄。
考えてみれば、多少似たような夫婦間は世間では有りそうなことである。
それが裁判にかかるとプライベートな事実を容赦なく剥き出しにされる。
 
この作品を観て思うのは、物証のない裁判はいかに陪審員を説得させるかに係ってくるかということ。
ここで言う陪審員とは観客である。
その人たちを前にして、弁護士、検事それぞれは弁論の力量によって裁判の行方を左右しようとする。
この弁論が双方とも素晴らしく、そこに証人も加わるから、観ている方は、実際の裁判に参加していると錯覚するほどのめり込んでしまう。
それ程、作品内の人物が生きている。
中でも容疑者サンドラを演じるザンドラ・ヒュラーが素晴らしく、今後忘れられない存在になるのではないかと思う。
それと特筆はスヌープ役の犬。詳しく書けないが、生身の犬を使ってどうやって撮影したのか不思議でならない。

それにしても、価値ある作品を一気に観させられたと感心するばかりだった。

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