ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

『悪い男』を観て

2017年04月03日 | 2000年代映画(外国)
今回もキム・ギドク。『悪い男』(2001年)を観た。

雑踏の街なかにあるベンチ。
ヤクザのハンギは、ボーイフレンドと待ち合わせをしている女子大生ソナを一目で気に入る。
ハンギを無視するソナは、やって来た彼の元に駆けよる。
それを見たハンギは、突然ソナにキスし強引にそれをし続ける。
公衆の前で、軍の部隊員から殴られたハンギは屈辱の怒りも手伝って策略を考える。

書店で、出来心から財布の中身を抜いたソナは、手下を使ったハンギの罠にマンマと引っかかってしまう。
多額の借金を背負ってしまうことになったソナは、ハンギの仕切る売春宿に売り飛ばされることになり・・・

どう見ても、清純そのもののソナ。
男性経験もないそんな彼女が、裏の社会で稼がされる。
残酷な話である。

ソナを気にいっているハンギは、自部屋にいるソナの様子をマジックミラー越しに伺う。
ただし、ソナと顔を合わせても好きだとひと言もいわない。
そもそもハンギは、物語が始まってから、その後もずぅっと喋らない。
ただ、ハンギが後半に発する言葉で、喋らないその理由がわかるが。

諦めからか、徐々に娼婦へと変わっていくソナ。
一度は脱走するが、またハンギに連れ戻され、売春宿の日常に染まっていくソナが、観ていて悲しい。
ハンギの子分ミョンスがソナと肉体関係を持って惚れてしまう。
それでもハンス自身はソナに手を出さない。
“ヤクザに愛なんて”と、自分にはソナを愛する資格はないと思っているハンス。
そんなハンスを、いつしか終いにはソナも愛してしまう。

ソナが、破れてた写真を貼り合わせる象徴的な場面。
男と女が写っているはずだが、そこには顔の部分が欠落している。
それが、最後には埋め合わせできる。
ただ、これは夢か現実か、どのようにも解釈できて定かではない。

好きな相手を社会の片隅で、売春婦として働かせる。
これが、ハンスのソナへの愛し方か。
いびつとも思える愛情表現だとしても、これは純粋なプラトニックな愛を、それこそ究極的に描いている。
その鮮明な印象が、キム・ギドクに中毒となる原因なんだなと、満足感とともに思った。

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