ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

『靴みがき』を観て

2015年12月21日 | 戦後40年代映画(外国)
前回にヴィットリオ・デ・シーカ監督の『自転車泥棒』(1948年)を記事にし、その関連で久し振りに『靴みがき』(1946年)を観直してみた。

終戦から少し経ったイタリア。
占領軍のいるローマで、仲の良いパスクアーレとジュゼッペは路上で靴みがきをしながら、貸し馬屋から1頭の馬を買い取る夢を抱いている。
値段は5万リラ。後わずかで目標が達成できるところまで来ている。
そんなある日、ジュゼッペの兄の仲間が、女占い師の家に毛布2枚を売るよう依頼した。
依頼された仕事は、実は女占い師を騙すための手口だったが、このことで二人は目標の金を手にした。
念願の馬を買って得意気にその馬を乗りまわしていた翌日、女占い師を同行させた警官に見つかって、二人とも共犯容疑で捕まってしまう。
その結果、少年刑務所に入れられる羽目になり、しかし犯人の名だけは絶対言わないと二人で誓い合った。
だが、取り調べ室の隣室から聞こえる悲鳴に、パスクアーレはジュゼッペが拷問を受けていると思って耐えられなくなり、とうとう供述してしまった。
そして、それを境に二人の友情にひびが入っていった・・・・

孤児のパスクアーレと、それに近い状態のジュゼッペ。そんな二人でも最初は、希望を持って明るい。
それが少年刑務所に入る羽目になり、そうなると二人から明るさが消えていく。
友情もあんなに固かったのに、相手を思いやる気持ちが裏目に出て裂けていく。
裂けるだけならまだ良いが、脱獄したジュゼッペに馬を独り占めされると思ったパスクアーレは、密告までして憎しみを持つ。
そして、最後は悲惨な結果。

誰が二人をこのような状況に陥らせたのか。
少年刑務所に入っている大勢の子供たちだって、大半が浮浪罪だろうと思える。
ということは孤児である。となると、このような社会は誰が作ったのか。
戦争の後遺症とひとくくりにして、簡単な言葉で済ませるわけにはいかない。

孤児で思い出すのは、先日逝った野坂昭如氏の『火垂るの墓』(新潮文庫)。
戦後の焼け跡での兄妹の姿が、印象が強すぎて忘れることができない。
最近の日本の状況を考える時、この『火垂るの墓』やネオレアリズモを記憶の底から消え去らせてはいけないと思う。
というわけで、ここ暫くはネオレアリズモのおさらいをしようと思っている。

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1 コメント

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子供の人権擁護 (rumichan)
2018-03-27 02:30:26
『靴みがき』 ヴィットリオ・デ・シーカ
『ドイツ零年』 ロベルト・ロッセリーニ

そして、
『蜂の巣の子供たち』 清水宏

デ・シーカ、ロッセリーニが観たとしたら、『こんな撮り方もあるのか』と、感心するであろう作品.
映画の一番始めの字幕.
『この映画の子供たちに、お心当たりの方はありませんか』
出てくる子供たち、全員本物の戦災孤児.
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