花紅柳緑~院長のブログ

京都府京田辺市、谷村医院の院長です。 日常診療を通じて感じたこと、四季折々の健康情報、趣味の活動を御報告いたします。

人人にあらず、知るをもて人とす

2016-01-20 | アート・文化


「この別紙の口伝、当芸に於いて、家の大事、一代一人の相伝なり。たとえ一子たりといふとも、無器量の者には伝ふべからず。「家、家にあらず、次ぐをもて家とす。人、人にあらず、知るをもて人とす。」といへり。これ、万徳了達の妙花を窮むるところなるべし。」 『風姿花伝』花伝第七 別紙口伝

この別紙の口伝は、能における我が家の秘事であり、一世代一人に限り受け伝えるというものである。たとえ一人子であろうとも、力量のない者に伝えてはならない。古人も「芸の家というものは血統が続くのが家ではない。芸の真髄が続くのが家である。人は人の形をしているから人なのではない。器量があり人の道を悟り得てこそ人である。」と言っている。そうなるのが、あらゆる徳をことごとく修め尽くした、芸の上の妙花を窮めた境地というべきであろう。(拙訳)

参考文献:「現代語訳 花傳書」 川瀬一馬著 わんや書店、1962; 「新潮日本古典集成 世阿弥芸術論集」 田中裕校注、新潮社、1976