我家の飼犬まるが初めての戌年を迎えた。生後三ケ月で出会い、本年四月ではや十年になる。「カールのおじさん」の様に口の周りが黒かった子犬はヒゲに白髪が混じる熟年の男になった。カメラを向けると幼少の頃はカメラ目線になってくれたが、年年歳歳写真を撮られるのが嫌になったらしい。大きく開いた口から尖った乳歯を見せた三ケ月の頃は無邪気に正面から撮らせてくれた。ところが九歳になった昨年度の右の写真など、やや斜めの視線のままでまた撮るのかよと言わんばかりである。普段は全く陽気で元気な犬であるが、カメラを向けるたびに笑顔が消える。ともかく早く終わらせろという風情が露骨で、終わればそそくさとその場から立ち去ってゆく。
まさに光陰矢の如し。家に迎えた時から「苦しきことのみ多かりき」という思いだけは決してさせたつもりはないが、こればかりは本犬と会話が出来たならば何と言うだろうか。戌年の本年、愛犬の写真で飾られた年賀状を沢山頂いた。大切になさっておられるということはその犬の表情を見ればわかる。カメラを意識しない時の最近の笑顔をお見せ出来ないのがまことに残念であるが、私も此処に本年の記念として写真を残しておこう。