人間の儀式、いづれの事か去り難からぬ。世俗の黙し難きに随ひ、これを必ずとせば、願ひも多く、身も苦しく、心の暇もなく、一生は、雑事の小節にさへられて、空しく暮れなん。日暮れ、塗遠し。吾が生既に蹉蛇たり。諸縁を放下すべき時なり。信をも守らじ。礼儀をも思はじ。この心をも得ざらん人は、物狂ひとも言へ、うつつなし、情なしとも思へ。毀るとも苦しまじ。誉むとも聞き入れじ。
(第百十二段│西尾実, 安良岡康校注:岩波文庫「徒然草」, p190-192, 岩波書店, 2012)
浮世のしきたりはやめるにやめられず。これは絶対に外せんと考えたら最後はドツボ。せないかんことは増えるばかり、身も心もぼろぼろ、もろもろの雑事に追われてジ・エンド。日暮れて道は遠く、人生双六は進退窮まる。そういや今日はしがらみの取集日。信義は先週処分した。礼儀も来週始末する。この気持ちわからん人から、あんたまともやないで、気は確かかと言われようが知るか。人の心がないと思うなら勝手に思え。謗られようが、奇特にも褒められようが馬耳東風。(拙訳)